勘違い側近は王の愛に気づかない

彩月野生

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罪人ルシード

 王を殺しかけた罪人ルシードは、王都周辺を彷徨い続けていた。
 ルシードはもともと王の側近であり、齢は既に四十を超えていたが、歳が十も下の王に焦がれてついに媚薬を盛り、ある夜にそれが混じった酒を飲ませた。

 王はすぐに異変に気づいて、ルシードに怒鳴りつけたが、椅子からくずおれて立っていられず、すかさず寝室に背負って寝台に押し倒し、衣服を脱がせた。
 ルシードも衣服を脱ぐと、下半身だけを晒して、自らの尻穴を指で解す。
 あらかじめ綺麗にして準備をしていたので、なんなく柔らかくなり、王にまたがり、男根をゆっくりと尻穴の肉壁でしめつけ、堪能しながら腹奥までずぶりと埋めた。
 己の口から感極まった吐息がもれだし、心臓は爆ぜそうな程に脈打つ。
 王の逞しい胸板に両手を押し付けて腰を淫らにふれば、尻穴にくわえこんだ肉槍が、腹奥の感じる場所を擦り上げ、じんわりと快感が熱いあそこから全身に広がった。

 肉穴を穿つ王の男根の卑猥な水音と、肌がぶつかりあう乾いた音が寝室に響き、己の甘い吐息が溶け合う。
 涙でにじむ視界には、王の怒りと憎しみに満ちた顔が見えた。

「陛下ああああっ」

 絶頂した瞬間、ルシードは叫び、甲高い声音で喘いで射精して、脱力した。

 追憶から現実に意識を戻し、寂れた宿屋の裏口の戸を叩く。
 中から暗号を投げかけられ、囁きかえせば、そっと開かれる。
 招き入れられたルシードは、店主に無言で金貨を与えた。
 店主は中年太りがひどい酒飲みの男だが、何かと世話になっていた。
 この宿屋で、ルシードは様々な男と一夜を過ごしてきたのだ。
 叶わぬ王への想いを慰めるために。

 酒と煙のニオイに咽て、手のひらで顔を覆いつつ、いつもの隠し部屋に向かう。
 扉を開けた先に、誰かが佇んでいるのが見えて心臓が止まりかけた。
 長い銀髪に切れ長の翡翠の瞳。
 するどい目つきで睨みつけられ、金縛りのように身動きが取れず、冷や汗をかいて呼吸が乱れる。
 この美しく気高い王の上に跨がり、腰を振り乱して痴態を晒したのだ。

 羞恥と罪悪感に目眩がしてふらついた。
 王は無言のまま部屋の隅から進み出てきて、胸ぐらを掴まれる。
 勢いよく寝台に叩きつけられて、一瞬頭が真っ白になり、全身の痛みに呻く。
 王は乱暴な足取りで近づき、両手を掴まれ、寝台に押し付けられた。
 顔を見る勇気などなく、俯いていると、顎をくだかんばかりに掴まれ、無理矢理見つめさせられる。

 王の翡翠の目は、怒りとも落胆とも言えぬ複雑な感情をあらわにしていた。
 ルシードは息を呑み、口にするべき言葉に悩んだ。

 ――私は罪人だ、できるならば王の手にかけられたい。

 計画を実行する時に、その願いを胸に秘めていのだが、こうして逃げてきたのは何故だろうか。
 まだ生きていたいと思っていたからだろうか……理由は、王の姿をまだ見たいと願っていたからだ。

 明白だ。なんて浅ましく単純な己よ。

 こうして、王が己を見つけ出して傍に来てくれたら……と、どこかで祈っていた。
 ルシードは軋む顎の痛みに耐えながら、声を絞り出し、王に訴える。

「陛下、申し訳ありませんでした……どうか、首を跳ねてください……!」

 震える声音は子供のような涙声であり、王は呆れた様子で顎から手を放し、憤慨した。
 腕を組み、憎悪に満ちた目で低い声を吐き出す。

「いいか! 貴様は王の命を狙った罪人だ! 今日からは貴様は俺の奴隷として見せしめとして仕えろ!」

 その異様な言葉に、衝撃を受ける。

 ――奴隷、見せしめ……なんの話であろう。

 ぼんやりと王の翡翠の目を見つめていると、口元を歪ませて覆いかぶさってくる。

「今から突っ込んでかき回してやろう……俺を怒らせたらどうなるか思い知るがいい!」
「……陛下」

 耳元で熱く囁かれて、唾を呑む。
 罪人な故に、止めてくれと懇願などできるはずもなく、意識を手放す程に、王の男根を尻穴に突き入れられ、腹奥を突き上げられた。
 寝台が壊れそうな程に軋む音と、己が泣き叫ぶ声が、幻聴のように鼓膜をはげしく震わせた。

 事が済み、全身が白濁まみれとなったが、どれがお互いに放った精液なのかはもはや判断はできない。
 雄のニオイが部屋中に充満し、寝台の上で荒い呼吸を繰り返し、むせて指先さえ動かせなった。
 王が振り返ると、冷たく言い放つ。

「外に兵士を待たせている。貴様は素っ裸で鎖で引かれるがいい」

 ルシードは、王と入れ替わりに入ってきた兵士に拘束されても、声一つ上げられなった。
 ただ、内心で“当然の報いである”と納得していた。

 罪人ルシードは、寒空の下、裸で王都中を鎖に繋がれて引きずり回された。
 途中で転ぼうがお構いなしに兵士達や馬に引きずられるので、城に着く頃には、全身擦りむけて血まみれだった。
 やがて地下部屋に放り込まれると、王が再び姿をあらわし、ルシードの首を掴み上げて嗤う。
 その笑みはまるで魔王のように思えた。

 唇が震えて全身の感覚が麻痺している。
 ルシードは、王が今度こそ己を殺すのだと期待をしたが、残酷にも、部屋の奥に備えつけられていた癒やしの水風呂に沈められ、見事に治癒されたのだった。

 水から引きずりだされたルシードは、王に力なく頭を垂れて問うた。

「……なぜ、殺して下さらないのです」

 見せしめならば、もう充分ではないか。

 ルシードの気持ちを知ってか知らずか、王は息を吐き出して、声を張り上げた。

「俺はお前を楽にさせてやる気はない! 残りの生涯、存分に可愛がってやろう」

 王の低い声に、ぞくぞくと背中が震える。
 まるで天からの宣告のようにも思え、泣き笑う。

「陛下の傍にいられるなら、どんな形でも本望です」

 心の底からの言葉である。
 王は鼻を鳴らすと、ルシードのむき出しの胸を一蹴りし、怒鳴りつけた。

「貴様はこの先、死ぬまで国中の者から笑い者にされ、俺の道具として生きていくのだ!! 生き地獄を味わうがいい!!」
「……は、はい」

 蹴られた勢いで背中から床に倒れていたルシードは、どうにか起き上がると丁寧に頭を垂れて見せた。
 それは、かつて王の側近であった時に見せた、誇り高い仕草である。
 裸の今は、さぞかし滑稽な姿をしているであろう。

「奴隷の証として印をつけてやろう」

 腕を掴まれ、引っ張られると、王が突き出した手の先が首筋に触れて、肌を焼かれた。

「――っ!」

 ルシードは絶叫して、印を受け入れたのだった。


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