世界一の彼女として、愛してくれますか?──俺は求めてないのだが、ラブコメ展開になるのはどうしてだろうか?

R.K.

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一章

週末は、妹とラブラブ遊園地のはずだった……

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 次の日の朝、妹はいつもの倍以上に機嫌が悪かった。
 いや、そうなることはなんとなくわかっていた。
 なんとなく、わかってた。
 わかってて、想像もしてた。

 けどな。
 俺が思ってた以上に、妹の機嫌は悪かったんだ。

 というか、昨日の夜中、お父さんが一瞬帰ってきた話を妹にすると、途端に機嫌が悪くなっていった。
 なんか、理由でもあるんだろう。
 というか、理由がなかったことを想像したくもない。
 ただ、とてもじゃないが今は訊けるような状況じゃなかった。

 もし、ここで訊いたら、勇者の称号を手に入れるかわりに、妹という名の火の中にニトロをぶっこむようなもんだ。

 まあ、触らぬ妹様に......なんとやらだ。

 いや、まあ、全てがお父さんのせいというわけではない。
 もとからそれなりには機嫌が悪かったからな。

 そんなわけで、朝から地獄のような光景が生まれていた。
 俺は、そんな地獄のような状況から一刻も早く抜け出すために、家をはやめに出ることにした。

 俺は、黙々と準備を済ませていき、いつものように玄関に行った。
 時間もいつも通りで、問題ない。

 そして、俺はいつものように『行ってきます』と言った。

 そのとき、俺はすぐに後悔する。
 あんだけ機嫌が悪い状態なのに、質素な朝食になっていなかったこと自体奇跡のようなものなのに、ここで話しかけては爆発してもおかしくない。
 そう思ったのだが、意外にもそんなことはおきなかった。
 それどころか、

「いってらっしゃい」

 と、妹が実に可愛らしく、それでいて少しトゲが残った物言いで言ってくれた。
 そんな妹の態度に、俺は少し目にくるものを感じながらも、なんとか堪える。
 もし、ここで涙を流そうもんなら、「はっ?ちょーきもい」と、せっかくの空気が台無しになってしまう。

 それでも、それは仕方ないことなんだ。
 だって、普通に『いってらっしゃい』と言ってくれたのは、のことなんだから。

 そんなわけで、妹の予想外の行動に、少し驚き、そして感動しながら、家を出たのだった。


 俺は、昨日言われた通り、昨日と同じ、同じ場所に着く。
 いや、着いたはず。
 だが、そこにいた背丈の小さな女の子が最初に発した言葉は、

「遅いわよっ!」

 俺に対しての不満の言葉だった。
 その言葉に、俺は自分のスマホで時間を瞬時に確認する。
 けど、時間はまだ
 いつも通り、綺麗な赤い髪をツインテールにまとめ、清楚でかわいい彼女こと、赤里あかりは、間違いなく俺にキレている。
 ただ、俺にひがあるわけじゃない。
 だって、のだから。

「いや、遅れてはないだろ。遅れては......」

 気づいたときには、そう口が開いていた。

「はっ?あんた、なに言ってんの?女の子を待たせてる時点でダメなのよ。万死に値するわ!」

 俺の発した言葉に、真っ向から来るのではなく、もはや理不尽なことを言われた。
 てか、なんでこいつはこいつで、こんなにも理不尽なんだよ。
 昨日からなんか、様子がおかしいような気はしたが......。
 ただ、いくら考えても答えは見つからないので、諦めることにする。
 それに、赤里はもともとそういうやつだったような気もする。
 本当、なんで背は低いのに、こんなにも態度は大きいのだろうか......。
 俺がそう、自分でもうまいなと、心の中で思うと、

「あんた今、失礼なことを考えてたで
しょ...」

「えっ?い、いや、そんなことは考えてないぞ?それよりもほら、早く学校行こう──」

 俺がそう言おうとしてる途中で、それを最後まで言わせることなく赤里は言う。

「やっぱりね。本当、あんたってばわかりやすいわね」

 いや、俺がわかりやすいわけじゃないだろ。
 どう考えても、お前の勘が鋭いだけだろう。お前がおかしいんだよ。
 そう思うも、万が一のことを考え、今後は気をつけることにする。
 悪魔で、万が一のことを考えてだ。
 俺がそんな思考をしていると、昨日同様、俺に近づいてくる、
 もちろん、理由もわかっている。
 ただ、普通に考えて、美少女にゼロ距離まで近づかれたら、なんだかそわそわするのは当たり前なんだ。
 そして、ちょっとした高揚感におそわれる。
 これは、男なら仕方ない。
 それに、鼻孔をくすぐるような、女の子特有の甘い香りなんかも、いろいろなものを刺激する。

 そして、問題は背の低さだ。
 こんなことを考えていたら、またなんか言われるかもしれないが、正直抱きしめたくなる。
 すっぽりと腕に収まるぐらいの彼女は、なんというか、同年代というよりは年下のような感じなのだ。
 だから、小学生にハグをするような感覚でしたくなるのであって、決して他意はない。
 ......いや、それはそれでアウトだったわ。

 そんなわけで、美少女である赤里が、たとえ少しの間の時間であったとしても、ゼロ距離まで近づかれると、結構よくない考えが飛び交う。
 本当、俺じゃなかったら、とっくの昔に襲われていてもおかしくないというわけで。
 彼女には、もう少し危機管理能力を磨いてもらいたい。

 そんな、わけのわからないようなことを考えだしていたら、

「ほら、そろそろ行くわよ」

 いつのまにか終わっていたようで、赤里は楽しそうな顔を浮かべてそう言った。
 本当、いつもからそんな感じだったらしてるかもしれないのになぁ~。
 俺は、起きもしないことを漠然と思う。
 いつまでも彼女を待たせていては、また理不尽に怒られかねないので、俺は赤里を追いかける。
 そして、俺が赤里の隣に並ぶと、そのタイミングで俺は声をかけられた。

「あっ、悠く~ん、、、と、そのお友達......」

 元気いっぱいな声に応じるように振り向く。
 そこには、それなりに胸も大きいあおいが、その大きな胸を弾ませながら走っていた。
 そして、そんな葵は声とは対象的な、少し元気のなそうな顔をしていて、俺は少し戸惑う。
 けど、葵はすぐにいつもの表情に戻った。
 少しの間、俺たちはその場で葵が来るまでを待つ。
 葵も、あまり待たせてはいけないと思ったのか、少しペースを早めて走ってくれる。
 それに比例するように、胸の揺れも大きくなって、眼福......もとい、とても目のやり場に困った。
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