世界一の彼女として、愛してくれますか?──俺は求めてないのだが、ラブコメ展開になるのはどうしてだろうか?

R.K.

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一章

妹を助けても…… 2

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 妹が拐われ助けてから次の日、警察の方が来て、俺にいくつか質問して帰っていった。
 それと入れ違いになるようにして、あおいも来た。あおいは俺にたった一言だけ声をかけるとすぐに帰ってしまった。
 俺はなんて声をかけられたのかもわからず、あおいに『ただいま』を言うこともできなかった。
 あれから妹が目を覚ましてないと思うと、とても気が気じゃなかった。
 他の知らない人の誰かの言葉なんて、俺の耳には一切届かなかった。
 それから数日の間、俺は全てを塞ぎ込んだまま家の中に引き籠もり、病院からの妹が目を覚ましたという連絡を待っていた。
 そんなとき、家の電話が鳴った。
 俺にとってそれは、一筋の光のようで、また絶望の始まりのような音だった。
 何度かコールが鳴り終わったタイミングで、俺は電話にでた。

「はい、もしもし」

『あー、えっと、ゆうか? 今、会えるか?』

「えっと、誰……」

 そこまで言って、俺は一度言葉を飲み込んだ。お父さんだ。あの日と全く同じとは言えないが、この声はお父さんだ。
 そういえば、お父さんには妹のことを話していなかった。
 それに、お父さんから連絡してきたということは、警察からかなんかから妹のことの連絡がいったのだろう。それだけ、事態は深刻なのだと考えだした瞬間、俺の胸がドキンと音を立てて途端に鼓動が早くなる。
 俺は、俺はあのとき、どうして……。

『……う。悠っ!』

 その声で、俺は現実に引き戻されるような思いになる。

「あっ、えっと……」

『悠、大丈夫か? お前がそんなんじゃ、彩華あやかも心配するだろ』

「わ、悪い」

『辛い気持ちは理解できる。それで、会えるのか?』

「問題ない。どこへ行けばいい?」

『病院だ。詳しい場所はあとで送る。病院のフロントまで来ればいい』

「それってつまり……!」

彩華あやかが目を覚ました』

 たったそれだけの言葉が、お父さんが発したその一言が、俺にとっては救いの言葉だった。
 何よりも、誰かの他の言葉よりも、その言葉を待ち望んでいて……。
 そして、俺の目の前は真っ白に染まり上がった。

『おい、悠?』

「……あ、ああ」

『それじゃ、またあとでな』

 そこで、電話は途切れる。それから数分と経たず、病院の詳しい場所の連絡がきた。
 彩華あやかが目を覚ました。俺にとって、これ以上嬉しいことなんてない。
 だから、今の俺にはたかが一分一秒の時間すら惜しいと感じてしまう。
 今すぐにでも、お父さんが待つであろう病院に向かって走り出したいというそんな気持ちを抑えながら、簡単に準備を済ませ、数日ぶりに玄関のドアを開けた。
 久しぶりの外の光が俺の目には毒で、よく染みる。
 けど、俺は彩華あやかの笑ってる姿がまた見たい一心で走り出そうとしたその時、

「悠くん」

 そう声がかけられた。
 聞き馴染みのある声。振り返ると、そこにはあおいがいた。
 まともな会話をしたのなんて、妹を助けに行ったとき以来だ。

「悠くん、これからどこに行くの?」

彩華あやかが目を覚ました。これから、病院に行こうと思ってる」

「……っ!」

 葵は驚いたような顔をする。けど、その顔は嬉しそうではなく、どこか悲しそうで辛そうな印象を受ける。

「急いでるんだ。悪い、もう行く」

「待って……。私も、私も一緒に……」

「ごめん。葵には待ってて欲しい。あのときのただいまをまだ言えてないから」

「…………わかった。気をつけてね」

「ああ」

 俺は葵を一瞥してから、駅に向けて走り出した。少しでも早く、彩華あやかに会うために。

 ☆☆☆☆☆☆

 お父さんに言われた通り、病院のフロントに着く。そこに既にお父さんが居て、けど、そのお父さんの顔はあまり嬉しそうではない、それどころか険しそうな顔つきだった。
 彩華あやかが目を覚ました。これ以上のなにをお父さんは望んでいるのか。
 俺には理解することなんてできない。

「悠、早かったな」

彩華あやかが目を覚ましたんだ。当たり前だろ」

「そういうものか。彩華あやかのことは既にほとんど聞いてる。今は何も聞かないし、何も言わなくていい。けどな、そのときがきたらちゃんと話せ」

 お父さんからの、優しく、温かい、いや、胸の内に直接語りかけるような熱い言葉に、俺は涙腺を刺激される。
 今回のことは、全て俺が招いたことだ。これは、俺の罪であり、償うべき罰だ。
 本来それは、今話さなければならない。いや、もっと前だ。こんなことになってすぐに、話さなければならなかった。
 けど、お父さんはそれを今は話さなくていいと。いつかそれを話せと、そう言ってくれた。
 今は彩華あやかとしっかり話せ、そう言ってくれてるんだ。
 俺はお父さんからの言葉を今一度噛み締め、涙をしっかり我慢する。
 そして、俺は少しぶっきらぼう気味に、

「わかってる」

 そう言った。そのたった五文字の言葉はやけに耳に残った。

「とりあえず、受付で面会の手続きをしてこい」

「お父さんの面会の手続きは?」

「一度彩華あやかに会ってきた。驚いたよ。思ったよりも美人さんに成長していて」

 お父さんのその言葉は、嬉しさが感じられる。けど、その嬉しさの奥に隠れた、悲しさや苦しみなんかも感じた。

「ほら、悠。とっとと、面会の手続きをしてこい」

「あ、ああ」

 俺はお父さんに言われるがまま受付に向かった。受付には何人かの人がいて、俺の応対をしてくれる。
 けど、彩華あやかの名前を出した瞬間、受付にいた人は険しい顔つきになった。とても、悲しそうで、まるで俺に同情するかのような瞳で。
 けど、俺は久しぶりに目を覚ました彩華あやかと話せるのだと、あの日のことを謝れるのだと、そう思ったら、とても嬉しく、心臓の鼓動がドクドクと早くなってしまう。
 そして、受付の人は俺に面会に来たことを示すシールを胸元に貼ってくれる。

「悠、それじゃ、行くか」

 お父さんにそう言われ、エレベーターホールへ向かう。

「少しだけ、言っておきたいことがある」

 お父さんはとても苦しそうな顔で、とても辛そうにそう言った。

「なに?」

「お前は聞いてるだけでいい。ただ、なにがあっても冷静にいろ。どんなことがあっても、冷静にいる心構えをしていてくれ」

「それは、どういうことなんだ?」

「今はわからなくていい、すぐわかる」

 そこで、エレベーターが来て、そのままエレベーターで彩華あやかのいる階まで向かう。
 そして、さほど時間も経たず病室に着く。ドア一枚隔てた先に彩華あやかがいる。
 そう思うとドキドキしてくる。
 そして、ドアを開け中に入ると、どこか怯えた様子の虚ろな目をした彩華あやかがそこにいた。
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