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一章
日常の幸せ
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俺は病院から出た。
雲一つない、晴天が俺を迎えた。
彩華の退院はもう少し様子を見てということに結局なった。
それが、俺にとっても彩華にとってもベストだろうというお医者さんの判断だ。
今の彩華には、昔の記憶はない。それはもう、わかった。理解したし、受け止めた。
けど、もうそんなことは悲しいことじゃない。
だって、今の俺にとって大事なのは、過去じゃなく今だから。失敗したことを失敗したままで終わらせない。
だから、俺は今の彩華としっかりと向き合い、大切にするって決めた。
それは決して、昔の彩華を諦めることじゃない。
昔の彩華へ報いるためにも、まずは今の彩華を大切しなきゃいけないと俺は思っているから。
そうして、俺は家に帰ってきた。
きっと今も、待っていてくれてるだろうその人を求めて、扉を開ける。
そこに鍵は掛かってなかった。
待っていてくれたのだと、そう思うと涙が込み上げてくる。
俺は葵からのその優しさに、いつも気づけなかった。いや、気づかなかった。気がつかないフリをしていた。
いつも、俺のことを気にかけてくれて、いつも俺を助けてくれていた。それなのに、それすらもわからなかった。
妹を助けるときも、葵は助けてくれた。
俺が学校に行かなくなったときも、俺の家まで来てくれていた。
それなのに、俺はなにもわかっていなかった。
それでも、葵はいつも待っていてくれる。今もそうして待っている。
そうして、部屋に入ると、食卓には料理が並んでいて、エプロン姿の葵がいた。
「葵、いつも、ありがとな」
「えっ? うん。でも、急にどうしたの?」
「いつも、いつもいつも、俺のことを心配してくれて、気にかけてくれていたのに。それを俺は気づけてなかったから。だから、葵にはしっかりとお礼を言っておこうと思ってな。こういうのはやっぱり、言えるときに言っとかないとだめなんだと思って」
「そう。それじゃ、私も。悠くん、いつもありがとう」
「なんで葵がそんなこと言うんだ?」
流れとしては全くもってわけがわからない。
俺は葵に感謝されるようなことをした覚えなんてない。覚えることと言えば、あのとき触った柔らかな感触……。いや、覚えてない。覚えてない、全く。
「うーん、悠くんがいるから?」
「なんだ、それ」
「言えるときに言っておきたいなって思って。それと、悠くんってさ、料理できないでしょ?」
「あー、いや、その……できないということもない? というか、ちょっとするのが面倒くさいなー、とか思うきらいはなくはないなー、という感じというか……」
「それって、料理しないってことは変わらないよね? 料理をやらないことにはなんも変わらないよね? だめだよ、インスタントなんかに頼っちゃ。体に悪いんだよ?」
「わかってる。わかってるけどさー」
そう、そんなことはわかってるのだ。重々承知の上なのだ。
それでも、人間ってのは楽できるのなら楽しようとするものだろう? 料理しなくても食べれるものがあるのなら、それを食べるのが普通だろう?
だって、料理するのって、面倒くさいのだから。
「とにかく、今日は私が作ったから、食べちゃって? もう、冷めちゃってるかもだけど……」
「はいよ。葵、本当にありがとな」
「はいはい。それじゃ、私は帰るね? もう、遅いし」
「泊まっててもいいけど、さすがにだめか」
正直、本当に割と遅い時間だし、彩華の使ってた部屋が空いてるわけだし、そこを使ってくれたらいいかと思ったが、さすがにないか。
準備もしてきてないだろうし。
「うーん、今日は遠慮しとこうかな」
「それじゃ、家まで送ってくよ。もう、割と遅い時間だしさ」
「大丈夫だよ。それより、冷え切っちゃう前に、夜ごはん食べちゃって? せっかく作ったんだから」
そう言われても、俺もハイそうですかとはさがれない。心配だから。
女の子一人を遅い時間に外で歩かせることが怖い。
俺が無理を言ってでも送ってあげていれば、なんの事件も起きなかったのに。そういう事態は、見たくない。
彩華のときのような失敗は繰り返したくない。成長するためにも、簡単にさがれない。
「それでも、やっぱり送ってくって。夜遅い時間に女の子が一人、外を歩くなんてやっぱりよくない。それに、葵の家もそこまで距離があるわけじゃないしさ。送ったらすぐに家に帰って夜ごはんを食べるから」
「まあ、そこまで言うなら、わかった。お言葉に甘えて、送ってもらっちゃおうかな」
その時の葵の表情は、少し残念そうだった。
それから、少ししてから葵の家に向かった。
「もう、ここで大丈夫だよ?」
「いやいや、ちゃんと家まで送ってくから」
少し葵の家に近づくたび、そんなことを言われる。
けど、俺は葵が家にちゃんと帰ったところを見届けないと不安だった。
実際、ここから葵の家までは、そんなに時間もかからないと思う。
けど、ここで一人にして、万が一のことがあったら、と思うとどうしても、葵を一人にすることはできない。
葵にはいつも助けられてる。
きっと、少しでも恩返しをしたいという気持ちもあったと思う。
だけど、それだけじゃなくて、なんとなく、葵には笑っていて欲しかった。
「悠くん、ここまで来たら大丈夫だから。ほら、家だって目の前だし、もう大丈夫でしょ?」
「えっ? あー、うん。まあ、ここなら」
「それじゃあね、悠くん。明日はちゃんと、学校に来るんだよ? 休んだ分も、取り返さなくっちゃ」
「そう、だな。わかった、それじゃあまた明日な」
「うん、また明日ね」
俺を手をふると、家に向かって走り出す。
そんなとき、ふと赤里のことが頭をよぎった。
そう言えば、あの日以降、会うことはおろか、学校を休むという連絡すら送っていない。
もしかしたら、赤里も心配してるかも知れない。
まあ、赤里から連絡一つ来ないということは、問題もないということなんだろうけど。
ただまあ、明日学校に行くんだとしたら、事前に赤里にも連絡しといた方がいいだろ。あとで色々言われるのも面倒くさいし。
それに、赤里はあの日の妹を間近で見ていた俺の知り合いの唯一の人物でもある。
赤里から見た、彩華の様子がどうだったのか? ということも、一応聞いておきたい。
そんなことを思ってると、家についていた。
それから、夜ごはんを食べると、赤里に連絡し、風呂に入って、俺はその日を終えたのだった。
雲一つない、晴天が俺を迎えた。
彩華の退院はもう少し様子を見てということに結局なった。
それが、俺にとっても彩華にとってもベストだろうというお医者さんの判断だ。
今の彩華には、昔の記憶はない。それはもう、わかった。理解したし、受け止めた。
けど、もうそんなことは悲しいことじゃない。
だって、今の俺にとって大事なのは、過去じゃなく今だから。失敗したことを失敗したままで終わらせない。
だから、俺は今の彩華としっかりと向き合い、大切にするって決めた。
それは決して、昔の彩華を諦めることじゃない。
昔の彩華へ報いるためにも、まずは今の彩華を大切しなきゃいけないと俺は思っているから。
そうして、俺は家に帰ってきた。
きっと今も、待っていてくれてるだろうその人を求めて、扉を開ける。
そこに鍵は掛かってなかった。
待っていてくれたのだと、そう思うと涙が込み上げてくる。
俺は葵からのその優しさに、いつも気づけなかった。いや、気づかなかった。気がつかないフリをしていた。
いつも、俺のことを気にかけてくれて、いつも俺を助けてくれていた。それなのに、それすらもわからなかった。
妹を助けるときも、葵は助けてくれた。
俺が学校に行かなくなったときも、俺の家まで来てくれていた。
それなのに、俺はなにもわかっていなかった。
それでも、葵はいつも待っていてくれる。今もそうして待っている。
そうして、部屋に入ると、食卓には料理が並んでいて、エプロン姿の葵がいた。
「葵、いつも、ありがとな」
「えっ? うん。でも、急にどうしたの?」
「いつも、いつもいつも、俺のことを心配してくれて、気にかけてくれていたのに。それを俺は気づけてなかったから。だから、葵にはしっかりとお礼を言っておこうと思ってな。こういうのはやっぱり、言えるときに言っとかないとだめなんだと思って」
「そう。それじゃ、私も。悠くん、いつもありがとう」
「なんで葵がそんなこと言うんだ?」
流れとしては全くもってわけがわからない。
俺は葵に感謝されるようなことをした覚えなんてない。覚えることと言えば、あのとき触った柔らかな感触……。いや、覚えてない。覚えてない、全く。
「うーん、悠くんがいるから?」
「なんだ、それ」
「言えるときに言っておきたいなって思って。それと、悠くんってさ、料理できないでしょ?」
「あー、いや、その……できないということもない? というか、ちょっとするのが面倒くさいなー、とか思うきらいはなくはないなー、という感じというか……」
「それって、料理しないってことは変わらないよね? 料理をやらないことにはなんも変わらないよね? だめだよ、インスタントなんかに頼っちゃ。体に悪いんだよ?」
「わかってる。わかってるけどさー」
そう、そんなことはわかってるのだ。重々承知の上なのだ。
それでも、人間ってのは楽できるのなら楽しようとするものだろう? 料理しなくても食べれるものがあるのなら、それを食べるのが普通だろう?
だって、料理するのって、面倒くさいのだから。
「とにかく、今日は私が作ったから、食べちゃって? もう、冷めちゃってるかもだけど……」
「はいよ。葵、本当にありがとな」
「はいはい。それじゃ、私は帰るね? もう、遅いし」
「泊まっててもいいけど、さすがにだめか」
正直、本当に割と遅い時間だし、彩華の使ってた部屋が空いてるわけだし、そこを使ってくれたらいいかと思ったが、さすがにないか。
準備もしてきてないだろうし。
「うーん、今日は遠慮しとこうかな」
「それじゃ、家まで送ってくよ。もう、割と遅い時間だしさ」
「大丈夫だよ。それより、冷え切っちゃう前に、夜ごはん食べちゃって? せっかく作ったんだから」
そう言われても、俺もハイそうですかとはさがれない。心配だから。
女の子一人を遅い時間に外で歩かせることが怖い。
俺が無理を言ってでも送ってあげていれば、なんの事件も起きなかったのに。そういう事態は、見たくない。
彩華のときのような失敗は繰り返したくない。成長するためにも、簡単にさがれない。
「それでも、やっぱり送ってくって。夜遅い時間に女の子が一人、外を歩くなんてやっぱりよくない。それに、葵の家もそこまで距離があるわけじゃないしさ。送ったらすぐに家に帰って夜ごはんを食べるから」
「まあ、そこまで言うなら、わかった。お言葉に甘えて、送ってもらっちゃおうかな」
その時の葵の表情は、少し残念そうだった。
それから、少ししてから葵の家に向かった。
「もう、ここで大丈夫だよ?」
「いやいや、ちゃんと家まで送ってくから」
少し葵の家に近づくたび、そんなことを言われる。
けど、俺は葵が家にちゃんと帰ったところを見届けないと不安だった。
実際、ここから葵の家までは、そんなに時間もかからないと思う。
けど、ここで一人にして、万が一のことがあったら、と思うとどうしても、葵を一人にすることはできない。
葵にはいつも助けられてる。
きっと、少しでも恩返しをしたいという気持ちもあったと思う。
だけど、それだけじゃなくて、なんとなく、葵には笑っていて欲しかった。
「悠くん、ここまで来たら大丈夫だから。ほら、家だって目の前だし、もう大丈夫でしょ?」
「えっ? あー、うん。まあ、ここなら」
「それじゃあね、悠くん。明日はちゃんと、学校に来るんだよ? 休んだ分も、取り返さなくっちゃ」
「そう、だな。わかった、それじゃあまた明日な」
「うん、また明日ね」
俺を手をふると、家に向かって走り出す。
そんなとき、ふと赤里のことが頭をよぎった。
そう言えば、あの日以降、会うことはおろか、学校を休むという連絡すら送っていない。
もしかしたら、赤里も心配してるかも知れない。
まあ、赤里から連絡一つ来ないということは、問題もないということなんだろうけど。
ただまあ、明日学校に行くんだとしたら、事前に赤里にも連絡しといた方がいいだろ。あとで色々言われるのも面倒くさいし。
それに、赤里はあの日の妹を間近で見ていた俺の知り合いの唯一の人物でもある。
赤里から見た、彩華の様子がどうだったのか? ということも、一応聞いておきたい。
そんなことを思ってると、家についていた。
それから、夜ごはんを食べると、赤里に連絡し、風呂に入って、俺はその日を終えたのだった。
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