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序章 アンジェラス1は、世界を救う
5話 魔王と勇者の協定
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午前の3時、扉を叩く音が聞こえた。
「ん……」
非常識な時間に、尋ねてくる相手に若干苛立ちながら、扉を開ける。
「誰だよ……気持ちよく寝てたのに…………」
「すみませぬ、此処に勇者様はおりませぬでしょうか?」
「自分が勇者だが……」
全身黒いフードを被った男が、ホッと息をついた。
「あの、少し聞きたいことがあるだが、良いでありましょうか?」
「いいぞ。」
取り敢えず、中へ入れてココアを用意する。
「夜分遅くにすみません。」
「まぁ…いいよ。」
「感謝します……実は勇者様にお願いがあって参りました。」
「お願い?」
コクリと頷き、重々しい口調で話し出すフードの男にコチラも真剣に聞く姿勢をとる。
「はい。実は勇者様の実力を確かめたく………このようにっ!!」
途端、頬を何かがかすった。
『ーー殺すには、造作も無さそうであるな』
フードの男の声質が変わった。そして、フードが外れると共に禍々しい雰囲気が放たれる。
「ぶっ殺すぞ。」
非常識にも夜に訪ねてきて、真剣に聞いてやろうとした直後に、この言葉。流石に、殺意も湧く。
『不意打ちにも気づけぬのなら、黒剣にも気づけぬであろう。』
「ソレとこれは別だろ。」
『フッ、そもそも夜に人を入れるとは無用心にも程がある。』
「なら、夜に訪ねて来んなよ。こっちは大事な睡眠を削られて迷惑してるんだ。」
これから森で悠々自適に暮らすつもりであると言うのに。
「っていうか、魔王なんて倒す気無いから世界侵略したいなら好きにしてくれ。自分の生活の邪魔をしないなら、何もしないからさ。」
だらかもう帰ってくれと言ったら、何故かまた攻撃された。しかも、今度は不意打ちではなく正面から。
『貴様はソレでも、勇者なのか。』
眉を顰め、何故か睨め付けてくる。
その瞳は、何処か魔王を殺せと命令してくる人間達と似ている。
「勇者なんて、なりたくてなった訳じゃない。それに、お前だってそっちの方が戦わずに済むんだから良いだろう。」
どうせ今回も、本気で戦ったら相打ちか勇者が勝って終わる。でも、長生きできないし両者とも幸せにはなれない。
『勇者は、悪を倒す存在のはずだ。何故しない。』
「逆に聞くが、なんで自分がお前を倒さないといけないんだよ。いつ死ぬかも分からないのに。」
『ソレが、勇者と魔王に選ばれた宿命だからだ。』
「じゃあ、その宿命は誰が決めたんだ。」
この問いには、答えられないようで急に押し黙ってしまう。
「自分は、お前達と争う気はない。歴代勇者みたいに人を助けて、女神に仕えるなんて馬鹿げた綺麗事をいう気は無いし、なる気も無い。最低限の生活ができれば十分だ。」
『貴様は、勇者失格だ。』
「知ってるよ、そんな事。」
魔王は、何処か悲しそうにしている。
何故、手を引く事に喜ばないのか全く理解できない。
「分かったなら、早く帰ってくれ。」
魔王を残して寝室へ行けば、いつのまにか気配は消えていた。
***
翌朝、目が覚めると机に黒剣が置かれていた。
「なんで、これが……」
これは、魔王である証の剣であったはず。
何故、ソレが此処にいるのだろう。
初めて間近で見る黒剣は、赤黒い靄を纏い柄には目玉のようなものが付いている。
「気持ち悪いな……」
余り見たくなくて、取り敢えず引き出しの中にしまった。
そして、ナムエルに頼まれていた水晶を取り出す。
「《修理》」
水晶に手をかざし、壊れた部分の魔力回路の糸を見つけ、つなげる。
すると、今まで何の反応もなかった水晶が虹色に淡く輝いた。
特に何も写ることはないが、飾りとしては十便綺麗だと思う。
「ーー開けてくれ。」
水晶を、棚へ入れると同時に非常識な来客、魔王の声がした。
「入って良いぞ。」
「お邪魔する。」
今回は、フードを被っていない様で日が昇っていることもあり、姿がはっきりと見える。
魔王は、全身真っ黒でそれに反する様に綺麗な銀髪を靡かせ、貴族が着るような豪華な礼服を身につけている。
「黒剣、なんで昨日置いていったんだ。」
取り敢えず、棚にしまった黒剣を取り出す。
『貴様に戦闘の意思がないのなら、その黒剣は必要ない。』
「自分がお前を殺さないとは限らないんだぞ。」
『それはない。』
「なんで言い切れるんだよ。」
確実にない、と言い切る魔王は自信満々に見える。
『貴様には、何もないからだ。』
「は?」
『何もないから、俺を倒そうとも世界を守ろうともしない。そんな者が挑んでくるなどあり得ぬ。』
まるで全て分かってるとでも言うような言い草に少し苛立つ。
「此処で聖剣を抜いたら、お前は死ぬんだぞ。」
異空間から取り出した、聖剣を魔王の首へと添える。
『肩書きと力しか持っておらぬ貴様に、何が出来るというのだ。』
今にも殺されるかもしれないと言うのに、真っ直ぐ堂々としている。
確実に、今、聖剣で首を刎ねれば、魔王は死ぬ。そして、歴代勇者の仲間入りになる。
だが、何故だろうか?
なぜかーーー
『腕に力が、こもらぬであろう?』
聖剣の柄を握る自分の手に、魔王の手が重ねられる。
『勇者は心が綺麗な故に、魔族を殺す事に罪悪感を覚える。世界平和のために心を鬼にして戦うのが勇者である。そして、怠け者に見える貴様も根本的な所は変わらない。』
だから、と、続けられる。
『貴様が我を殺せぬ理由はただ一つ。』
手が、震える。心臓の鼓動が早い。
「黙れ。」
『欲が欠如しているのだ。』
「黙れって言ってるだろ!!」
思いっきり聖剣を振りかぶり、魔王の首を斬る。実にあっけなくボトッと転がり落ちた。
「しんだ、のか……?」
聖剣に、魔王の青い血が滴り落ちる。
落ちた頭を恐る恐る持ち上げれば、瞳が真っ赤に輝いた。
『明確に殺す意思がないと、聖剣は魔王を殺せぬ。首を刎ねても殺せないのがその証拠だ。』
対して怯んだ様子もなく、喋る魔王。
「黙れよ……」
ぼそっと呟けば、フッと笑われた。
『我が思うに、勇者は魔王を倒す使命を請け負っているから勇者と呼ぶのではないと思うぞ。』
「どう言う事だよ。」
取り敢えず、首をと胴体をくっつけてあげる。
『勇者は、勇気ある者という意味だろう?魔王は魔族の王。そして、光の神と邪神から与えられた力。俺が思うに神どもが長年かけて、遊戯か、戦争をしているのではないかと思ってな。それに我らが巻き込まれているだけでは、ないだろうか。』
「考えすぎだろ。」
『そうか?考えてもみろ。エルフと人、ドワーフとエルフ。異種族同士で戦争するだろう?なのに、魔族と人間だけ特別な力が神から与えられる。おかしいと思わぬか?魔界からくるだけで、貴様らがやる戦争と何も変わらぬと言うのに。』
「それは……」
確かに、言われてみればそうだ。
『我は、魔王として、魔族の王として地上を支配したい。その欲が原動力となって黒剣で今の何もない勇者を殺せる。だが、貴様は何もない為に殺せぬ。故に勇者よ、』
机に置かれている聖剣を、魔王が掴む。
『貴様が我を真に倒したいと思った時、聖剣を取りに来るのだ。それが我であろうが、神であろうが、渡そう。その時に黒剣も返してくれ。』
そういうや否や、同じく異空間に聖剣を入れられてしまった。
つまり、魔王の言いたい事は、勇者を一時止めて勇者である理由を見つけろと言っているのだろう。
全く、敵のくせにお節介にも程がある。
「お前、魔王らしくないな。」
『よく言われる。』
「ある意味、魔王失格だ。」
『まぁ、人に後ろ指を刺されるような事を、してきた覚えはありはせぬからな。』
むしろ、見て見ぬ振りをして動いてこなかった勇者の方が、後指を刺されるだろう。
「お前が、なんで勇者に手助けするのかは知らんが、後で"やっぱ無し"は無理だからな。」
『約束は守ろう。勇者と刃を本気で交わらせねば歴代魔王を超越したと言えんからな。だから、貴様を殺すのだ。』
「結局、殺し合うことは変わらんのか。」
『ソレが、宿命であろう。』
ーー宿命。変わることのない運命。
だけど、今この時は魔王が統治する地上を見いと思った。
きっと、魔王に言えば嫌な顔をされそうだが、何も無い今だけは、本当にそう思う。
「ん……」
非常識な時間に、尋ねてくる相手に若干苛立ちながら、扉を開ける。
「誰だよ……気持ちよく寝てたのに…………」
「すみませぬ、此処に勇者様はおりませぬでしょうか?」
「自分が勇者だが……」
全身黒いフードを被った男が、ホッと息をついた。
「あの、少し聞きたいことがあるだが、良いでありましょうか?」
「いいぞ。」
取り敢えず、中へ入れてココアを用意する。
「夜分遅くにすみません。」
「まぁ…いいよ。」
「感謝します……実は勇者様にお願いがあって参りました。」
「お願い?」
コクリと頷き、重々しい口調で話し出すフードの男にコチラも真剣に聞く姿勢をとる。
「はい。実は勇者様の実力を確かめたく………このようにっ!!」
途端、頬を何かがかすった。
『ーー殺すには、造作も無さそうであるな』
フードの男の声質が変わった。そして、フードが外れると共に禍々しい雰囲気が放たれる。
「ぶっ殺すぞ。」
非常識にも夜に訪ねてきて、真剣に聞いてやろうとした直後に、この言葉。流石に、殺意も湧く。
『不意打ちにも気づけぬのなら、黒剣にも気づけぬであろう。』
「ソレとこれは別だろ。」
『フッ、そもそも夜に人を入れるとは無用心にも程がある。』
「なら、夜に訪ねて来んなよ。こっちは大事な睡眠を削られて迷惑してるんだ。」
これから森で悠々自適に暮らすつもりであると言うのに。
「っていうか、魔王なんて倒す気無いから世界侵略したいなら好きにしてくれ。自分の生活の邪魔をしないなら、何もしないからさ。」
だらかもう帰ってくれと言ったら、何故かまた攻撃された。しかも、今度は不意打ちではなく正面から。
『貴様はソレでも、勇者なのか。』
眉を顰め、何故か睨め付けてくる。
その瞳は、何処か魔王を殺せと命令してくる人間達と似ている。
「勇者なんて、なりたくてなった訳じゃない。それに、お前だってそっちの方が戦わずに済むんだから良いだろう。」
どうせ今回も、本気で戦ったら相打ちか勇者が勝って終わる。でも、長生きできないし両者とも幸せにはなれない。
『勇者は、悪を倒す存在のはずだ。何故しない。』
「逆に聞くが、なんで自分がお前を倒さないといけないんだよ。いつ死ぬかも分からないのに。」
『ソレが、勇者と魔王に選ばれた宿命だからだ。』
「じゃあ、その宿命は誰が決めたんだ。」
この問いには、答えられないようで急に押し黙ってしまう。
「自分は、お前達と争う気はない。歴代勇者みたいに人を助けて、女神に仕えるなんて馬鹿げた綺麗事をいう気は無いし、なる気も無い。最低限の生活ができれば十分だ。」
『貴様は、勇者失格だ。』
「知ってるよ、そんな事。」
魔王は、何処か悲しそうにしている。
何故、手を引く事に喜ばないのか全く理解できない。
「分かったなら、早く帰ってくれ。」
魔王を残して寝室へ行けば、いつのまにか気配は消えていた。
***
翌朝、目が覚めると机に黒剣が置かれていた。
「なんで、これが……」
これは、魔王である証の剣であったはず。
何故、ソレが此処にいるのだろう。
初めて間近で見る黒剣は、赤黒い靄を纏い柄には目玉のようなものが付いている。
「気持ち悪いな……」
余り見たくなくて、取り敢えず引き出しの中にしまった。
そして、ナムエルに頼まれていた水晶を取り出す。
「《修理》」
水晶に手をかざし、壊れた部分の魔力回路の糸を見つけ、つなげる。
すると、今まで何の反応もなかった水晶が虹色に淡く輝いた。
特に何も写ることはないが、飾りとしては十便綺麗だと思う。
「ーー開けてくれ。」
水晶を、棚へ入れると同時に非常識な来客、魔王の声がした。
「入って良いぞ。」
「お邪魔する。」
今回は、フードを被っていない様で日が昇っていることもあり、姿がはっきりと見える。
魔王は、全身真っ黒でそれに反する様に綺麗な銀髪を靡かせ、貴族が着るような豪華な礼服を身につけている。
「黒剣、なんで昨日置いていったんだ。」
取り敢えず、棚にしまった黒剣を取り出す。
『貴様に戦闘の意思がないのなら、その黒剣は必要ない。』
「自分がお前を殺さないとは限らないんだぞ。」
『それはない。』
「なんで言い切れるんだよ。」
確実にない、と言い切る魔王は自信満々に見える。
『貴様には、何もないからだ。』
「は?」
『何もないから、俺を倒そうとも世界を守ろうともしない。そんな者が挑んでくるなどあり得ぬ。』
まるで全て分かってるとでも言うような言い草に少し苛立つ。
「此処で聖剣を抜いたら、お前は死ぬんだぞ。」
異空間から取り出した、聖剣を魔王の首へと添える。
『肩書きと力しか持っておらぬ貴様に、何が出来るというのだ。』
今にも殺されるかもしれないと言うのに、真っ直ぐ堂々としている。
確実に、今、聖剣で首を刎ねれば、魔王は死ぬ。そして、歴代勇者の仲間入りになる。
だが、何故だろうか?
なぜかーーー
『腕に力が、こもらぬであろう?』
聖剣の柄を握る自分の手に、魔王の手が重ねられる。
『勇者は心が綺麗な故に、魔族を殺す事に罪悪感を覚える。世界平和のために心を鬼にして戦うのが勇者である。そして、怠け者に見える貴様も根本的な所は変わらない。』
だから、と、続けられる。
『貴様が我を殺せぬ理由はただ一つ。』
手が、震える。心臓の鼓動が早い。
「黙れ。」
『欲が欠如しているのだ。』
「黙れって言ってるだろ!!」
思いっきり聖剣を振りかぶり、魔王の首を斬る。実にあっけなくボトッと転がり落ちた。
「しんだ、のか……?」
聖剣に、魔王の青い血が滴り落ちる。
落ちた頭を恐る恐る持ち上げれば、瞳が真っ赤に輝いた。
『明確に殺す意思がないと、聖剣は魔王を殺せぬ。首を刎ねても殺せないのがその証拠だ。』
対して怯んだ様子もなく、喋る魔王。
「黙れよ……」
ぼそっと呟けば、フッと笑われた。
『我が思うに、勇者は魔王を倒す使命を請け負っているから勇者と呼ぶのではないと思うぞ。』
「どう言う事だよ。」
取り敢えず、首をと胴体をくっつけてあげる。
『勇者は、勇気ある者という意味だろう?魔王は魔族の王。そして、光の神と邪神から与えられた力。俺が思うに神どもが長年かけて、遊戯か、戦争をしているのではないかと思ってな。それに我らが巻き込まれているだけでは、ないだろうか。』
「考えすぎだろ。」
『そうか?考えてもみろ。エルフと人、ドワーフとエルフ。異種族同士で戦争するだろう?なのに、魔族と人間だけ特別な力が神から与えられる。おかしいと思わぬか?魔界からくるだけで、貴様らがやる戦争と何も変わらぬと言うのに。』
「それは……」
確かに、言われてみればそうだ。
『我は、魔王として、魔族の王として地上を支配したい。その欲が原動力となって黒剣で今の何もない勇者を殺せる。だが、貴様は何もない為に殺せぬ。故に勇者よ、』
机に置かれている聖剣を、魔王が掴む。
『貴様が我を真に倒したいと思った時、聖剣を取りに来るのだ。それが我であろうが、神であろうが、渡そう。その時に黒剣も返してくれ。』
そういうや否や、同じく異空間に聖剣を入れられてしまった。
つまり、魔王の言いたい事は、勇者を一時止めて勇者である理由を見つけろと言っているのだろう。
全く、敵のくせにお節介にも程がある。
「お前、魔王らしくないな。」
『よく言われる。』
「ある意味、魔王失格だ。」
『まぁ、人に後ろ指を刺されるような事を、してきた覚えはありはせぬからな。』
むしろ、見て見ぬ振りをして動いてこなかった勇者の方が、後指を刺されるだろう。
「お前が、なんで勇者に手助けするのかは知らんが、後で"やっぱ無し"は無理だからな。」
『約束は守ろう。勇者と刃を本気で交わらせねば歴代魔王を超越したと言えんからな。だから、貴様を殺すのだ。』
「結局、殺し合うことは変わらんのか。」
『ソレが、宿命であろう。』
ーー宿命。変わることのない運命。
だけど、今この時は魔王が統治する地上を見いと思った。
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