曲者が、曲者の常識で曲者と人を裁く非常識な少女の物語である 題名変えました

さや

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1章 アンジェラス1は転生する

28話 気をつけるべき事

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次の日も、酒場は大繁盛だった。
きっと昼も開けれいれば、繁盛している事だろうというほど、次の日そのまた次の日も客の足が絶えなかった。

「嬢ちゃん、また頼むぜ。」

「はい。」

店主に頼まれ、今日も今日とてせっせと働く。
ほとんどの客が、フェンリルが触りたくて来るが、どれだけ皆んな犬が好きなんだろう。

老若男女問わずやっぱり愛されているのかもしれない。

「お客さん、そういうのはダメですよ。」

たまに足を触ってくる客には、笑いながら払う。

「ガードが硬いねぇ。」

だいたい笑い話で済まされる。
本気で狙ってくる客は、居ない。

だから、少し油断していた。

ーーその日は偶々フェンリルが、寝ていたから桜舞楼閣に残してきたのだ。

店の接客はいつも通りで、上手くあしらいながら客の対応をこなしていた。

店を閉める時も何も変わらず、給料と礼とちょっとした賄いを貰い、桜舞楼閣に帰る途中だったのだ。

「ちょっと失礼。」

突然腕を掴まれ、裏路地に引き込まれた。

「ん!んー!」

「静かにしろや。」

「兄貴、早くやりましょうぜ。」

「あぁ。」

男二人から押さえつけられ、目の前にいる男から、着物の合わさった部分を暴かれる。

「兄貴、はやく!」

「そう急かすなって。」

ゲラゲラ男達が笑う。
男達が何しようとしているのか何となく分かってしまって上手く魔法が使えない。

「んー!」

「優しくすっからよ。」

下着の上から胸を優しく揉まれる。 

「オレらは、下を解しますね。」

「あぁ。」

もう一つの男の手が、私の下半身に移る。
あと少しで、着物の中へ手が入る時だった。

「あ…….」

辺りが、真っ赤に染まった。
ドタッと、三つの首が地面に落ちる。

『大丈夫カ。』

「フェンリル……」

足から力が抜けて座り込む。

「ありがとね……」

『モウ、一人デ行動スルナ。』

「うん。」

こういう時、私はまだ対処できない。
ソレが明確に、今理解できた。

『話ガアル、帰ルゾ。』

フェンリルの姿で私を乗せて、桜舞楼閣へ帰った。

そして、口外一番に叱られた。

『胸ヲ利用シタ商売ナドナラ、気ヲツケルベキダロウガ。』

「でも、みんなフェンリルが触りたくて……」

『ソンナ訳ガナカロウ。男共ハ貴様が思ッテイルヨリモ下品ナ小僧ダ。』

「そうなの?」

『ソウダ。コレカラハ、我ヲ胸ニ入レテ商売スルデナイ。』

「分かった。ごめんね。」

『謝ルコトデハナイ。』

叱りながらも心配してくれるフェンリルに、礼を告げて、お風呂に入る。
もう何日か経ったからか、フェンリルも一緒に風呂に入る事が慣れた様だった。

いつも深夜に入るため、フェンリルの正体がバレることは無い。

「今日もいい月見日和だね……」

『ソウダナ。』

最近は、フェンリルが自分から胸の上に乗る様になってきた。
そして身を挟めて、一緒に月を見ている。

そんなに胸の中は、安心するのだろうか。

「フェンリルは、獣人が憎いとは思わないの?」

『質問ノ意図ガ図リカネルナ。』

「別に言いたくないならいいけど、自分を殺した者達の国を私と一緒に見るなんて事、よく出来るなって。」

『復讐ナド、虚シイダケデアル。』

何処か、達観した様な瞳で月を見上げるフェンリルの姿は、物寂しそうに見える。
やはり、どれだけ割り切ろうとも悲しさは拭えないのだろう。

「………」

濡れて湿った毛を撫でる。
互いに何も言わずに、ただ月だけを見上げる。
長年生きると、何故か月をずっと見ていたくなる。  

欲しいとは思わないが、何故か惹かれるのだ。



***




今日は、ちゃんとフェンリルを連れて接客をする。
私の胸の中が定位置になっているフェンリルは、特に動じる事もなく客に撫でられている。

極々たまに、ある一定の客に物凄い笑顔で対応している時があるが、もしかしたらお気に入りの客でも出来たのかもしれない。  

かくいう私も、最近は気になる人が居た。

「お客さん、隈が酷いですね。」

「あぁ……お嬢さんか。」

話しかければ、白髪に髭を薄く蓄えている老人は疲れ切った笑顔を向けてきた。

「何かお困りでしたら、サービスとして話くらい聞きますよ?」

幸いな事に、今日は雨な事もあり客は大して多くなかった。
注文も程々に、酒を飲みながら仕事をする者や読書をしている者が、結構多い。

「お嬢さんは、仕事中であろう?」

「お話をする時間くらいはありますよ。」

「ふむ………」

何かを考え込んで、意を決した様に老人は話し出した。

「最近、人攫いが多発しているのじゃが中々黒幕が掴めなくての。」

「ソレは、闇が深そうですね。」

「相当深いのだ……」

意見を言ってやるつもりはない。
あくまでも話を聞いてやるだけ。余計なことには首を突っ込まないに限る。

「あまり張り詰めすぎるのも行けませんので、酒でも飲んで気分を晴らしてください。なんなら、この子を触ってもいいですよ。」 

フェンリルを胸から取り出して、老人の前へ座らせる。

「可愛い小動物は、癒しですし。」

「ほっほっ、気の利いたお嬢さんだ……」

「えぇ……おやすみなさい。」

あまりにも酷い隈だから、フェンリルに頼んで疲れが取れる治癒魔法と睡眠魔法を同時にかけてもらう。

すると、死んだ様に老人は眠りこけてしまった。
この調子だと、閉店寸前まで起きないだろう。

「明日は休みだから、このくらいのサービスは罰当たんないよね。」

フェンリルと顔を見あわせ、緩く笑い合う。
老人でも大人でも子供でも、寝ている時はあどけない顔をする。

その表情が、長年者である私達からすると小さな子供を見ている様な気分になるのだ。

「さ、また始めますか。」

立ち上がり、フェンリルを胸へ誘う。
すると、すっぽり入り酒を店主に貰いに行く。

「四番テーブルだぞ。」

「はい。」

つまみと酒を持って、四番テーブルへと置く。
読書にしている様で、互いに目配せだけして終わる。

こういう客は大して会話がないため、あまり気を使う必要がなく楽だ。

必要最低限の会釈をしておけば、大抵通じるから。

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