曲者が、曲者の常識で曲者と人を裁く非常識な少女の物語である 題名変えました

さや

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1章 アンジェラス1は転生する

30話 魔物退治

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「こんばんは。お嬢さん。」

「えぇ、こんばんは。一週間ぶりですね。」

「なかなか仕事が終わらなくての。」

「お忙しいのですね。」

「ところで、ワシの職場で働く気はないかの?」

「丁重に断らせていただきます。」

ニコリと笑いかけてくる老人に、私も微笑み返す。

「誘いはお受けしません。それよりもお酒をご注文ください。」

「いつものを頼もうかの。」

「畏まりました。少々お待ちください。」

軍部の誘いを綺麗にスルーして、酒を運んだ。




***



その日も、いつものように朝8時から接客業に励んでいた。
夜ほど人も多くない為、話しかけてくる客とたわいもない世間話に花を咲かせていた。

「嫁がな、最近機嫌悪くて。」

「ソレは、災難ですね。プレゼントでも送れば直してくれるのでは?」

「それも考えたんだが、懐が寒くてね……」

「酒場に来る暇があったら、その金で買えばいいじゃないですか。」

「相変わらずドストレートに言うね。」

「事実ですけど……?」

苦笑いをする客の言いたいことが良く分からずに首を傾げていると、人の叫び声が聞こえた。

「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

甲高い声で、恐らく女性の悲鳴なのだろう。
ついでに物が壊れる音もする。

「何かあったのかね。」

「多分…でも、どうせ暴力団がなんかでしょう。」

「ははっ、助けに行こうとは思わんのかい?」

「助けに行って逆恨みされたら店長に迷惑かけてしまいますから。」

「確かに。」

そう話している間にも、物を壊すような音が段々と大きくなっている。
しかも、近付いてきているようで都を歩いていた人々が、逃げ始めていた。

「お嬢さん、これは暴力団の騒ぎじゃなさそうだね。」

「まぁ、そうですね。」

「逃げようか。」

「まぁ、それが懸命な判断ですね。」

立ち上がり、先にお客さんを逃す。

「後で追いつきますので、先に行ってください。」

「あぁ!また後で!」

「はい!」

客が逃げた後に、外を出て音原へ目を向ける。

「うわぁ……」

『マタ、面倒ナノガ来トルナ。』

「本当、面倒だね。」
 
音原は、大きなムカデの怪物だった。

「面倒な上にキモい。」

『同感ダ。』

見た目がキモいし、変に目立ちたくないし、逃げようか迷う。
皆必死に逃げてるから、流石に大して足も早くない怪物に殺されるとは思えない。

「逃げようかな……」

回れ右して逃げようと、足を進めたその直後。

『子供が、泣イテオルノカ』

「そうみたいだね。」

『助ケナイノカ?』

「知らない人を助けて何になるの?」

『薄情ダナ。』

「獣人なんてどうでもいいもん。というか、人間に似てる獣人は嫌いだよ。」

『ソウカ。』

鳴き声を無視して、走り出した。
別に、誰が殺されようと知ったことではない。小さな命が死んだところで、世界は大して変わらないのだ。

『ホントニ、ミステルノカ。』

「くどいよ。それに世界を救う過程で見捨てる事なんて多々あったから、罪悪感なんて今更なんだよ。」

なんだかんだ言いながら、助けることを勧めてくるフェンリルに、少しだけ苛立つ。

「文句があるなら、フェルが助けに行けばいいでしょ。」

段々と離れて、泣き声も小さくなっていく。

『デキン。』

「なら、黙ってて。」

胸に挟まったまま、今度こそフェンリルは何も言わなくなった。

「それにしても、検非違使は何をしているのかな?こんな事態に陥っているのに、誰一人としてこないよ。」

『シランナ。』

まぁ、私やフェンリルには関係のないことだ。

「ーーお嬢さん、無事で良かったの。」

不意に老人の声が耳を掠め、高速で横を通り過ぎて行った。

しかも、常連さんの老人だ。

「お客さんが、死んじゃう。」

それは防がなきゃいけない。

『助ケニ行クノカ?』

「常連が、死ぬのは得策じゃ無いからね。」

相当な手馴れだというのは分かるが、あのムカデは、そう簡単には倒せないだろう。
きっと、子供を庇いながら戦うことになるだろうし。

「ちょっと助けに行くよ。」

屋根の上に飛び乗り、最短経路で巨大なムカデの元へ向かい、近くまで来て見下ろす。
もう泣いている子供と老人以外は誰も居ない。

『助ケニイカンノカ?』

「ヤバくなったら行くよ。あんまり目立ちたく無いし。」

『マァ、ドチラニシロ行クダロウナ。』

「多分ね。」

少し、老人の実力を見るだけだ。
危なくなったら助けに入る所存だ。

「お客さんは、神~神~かーみー、ふぇすてぃばるぅ~」

『変ナ歌ダナ。』

「だまらっしゃい。」

ちょっと口遊んだだけなのに、酷い言われ様だ。

「ーーと、そろそろかな。」

海色のキューブを取り出し、宝石の様に煌く一振りの剣へと変形させる。

【食事?】

空中に浮かぶ剣は、問いかける。

「あの子供と老人を守りながら戦ってね。」

【了解デス。敵ハ、食ベテモ良イデスカ?】

「好きにして良いよ。」

【ハイ。】

自我を持つ剣は、私が自ら刃を振るわなくとも大抵の敵は倒してしまう。

海色の剣なだけあって、水属性の魔法が中心で、私が握った場合にだけ他の属性も使えるようになる。

『アノ剣ハ、ソウトウナ手馴レダナ。』

「私たちと同様に、あの剣も成長するからね。」

『不思議ナ剣ナノダナ。』

「まぁ、どの世界を回っても自我を持つつ武器なんて存在しないからね。あの武器は世界の意志様に貰った特別な物なの。」

屋根の上から、ムカデの魔物と剣の攻防を見守る。

剣は、一気に倒す気はない様で一番魔力の集まっている場所を少しずつ傷つけて、生きたまま食事をするつもりらしい。
食事というのは人間と違って、その生物の体の魔力を全て吸い尽くすことだ。

因みに肉体や骨は、そのついでに消し去るだけだ。

「もうちょいで、決着がつくね。」

剣の動きが止まっということは、そろそろ本命である心臓が食べ頃になったのだろう。

暴れ回るムカデの魔物の心臓目掛けて、一直線に剣が向かう。

「キシァァァァァァッ!!!」

耳がはち切れんばかりの魔物の叫びが、帝都全体に響き渡り、跡形もなく剣に取り込まれる。

そして、剣からキューブへと変形し、戻っきたキューブを懐へ入れる。

「じゃ、行こっか。」

【ウム。】

こういうのは、面倒な事になる前に立ち去るに限るのだ。




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