曲者が、曲者の常識で曲者と人を裁く非常識な少女の物語である 題名変えました

さや

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2章 アンジェラス1は軍部で活躍します

58話 魔物の蔓延る森

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私は今、焚き火の前でスープを呑んでいる。
日が暮れた、月の照る深夜に。

「アンジュ様、追加しますか?」  

スープの追加を聞く部下に、首を左右に振る。

「ありがとう。」

礼だけを言って、スープに映る疲労した私の顔を見る。
青白い顔色に、ボサボサな髪。

どう見ても、世界の意志様からもらった健全な、以前の体とはかけ離れている。

「ふぅ……」

取り敢えず、スープを飲み干して部下が欠けてくれたシーツにフェンリルを胸に抱えて膝を抱え込む。

「あの、そろそろ何があったのか聞いても、よろしいでしょうか?」

「別に、大した事じゃないよ。」

知ったとしても、恐らく成す術など無いだろう。
もしかしたら、未確認生物ではない可能性もあるが、それなりに上位の生物である事は確かだろう。
今は余計な不安を抱かずにいられる様に、黙っていようと思う。



***



次の日の朝、少し日程外れたものの、フェンリルが探ってきてくれた道筋を辿りながら、魔物が生息する場所へと兵士たちを連れていく。

その間にも、まだ顔が青白いらしい私を心配している様で、先程から鬱陶しいくらいに身を寄せ合って歩いていた。

「ねぇ、ちょっと離れてほしいんだけど……」

「ご遠慮なさらず!」

寒くない様にぎゅうぎゅうに固まって歩く配慮をしてくれているとフェンリルから聞いたが、これは嫌がらせをされている様にしか思えない。

むさ苦しい筋肉質な体に挟まれて、苦しくないわけがないのだ。
まだ、女の子の様な柔らかな肌だったら痛くは無いのに。

『耐エロ、アンジュ。』

フェンリルは、断ってはダメだと言う。
だから、何も言えずに受け入れるしか無かった。

「寒くないですか!?」

「さ、寒くないよ……」

むしろ、暑苦しくて進み辛いくらいだ。

「なら良かったです!」

くっついて進む事を提案してきただけあって、一応気にかけてはくれていると副団長であるカントスの声でわかる。

尤も、その配慮が相手の望んでいる物になっているのかどうかは別としてだが。

一応、フェンリルと考えた作戦では魔物に囲まれて全員が、武器を構えた瞬間に不意に私がいなくなっている事に気付くというものだ。

私を探すにつれて、段々と奥深くに入っていく事によって、強い魔物と戦わざるを得なくなり、最終的には一人一人が強い魔物と対峙する事になるだろう。

まぁ、連携が取れているのなら一人になる事はないだろうが、大抵は自分が想定していた状況を上回ると、一人先走って連携を崩す輩が1人くらいはいるものだ。

「!?」

ビクッ!と兵士たちの体が跳ねた。
ぎゅうぎゅう詰めで、身体全体が痛い。

「ま、魔物に囲まれているぞっ!」

どうやら、もう早々に囲まれてしまったらしい。
見たところ、大して強い魔物でもないが姿を消すには丁度いい頃合いだ。

「皆、頑張ってね……」

誰にも聞こえないくらいの声で囁き、その場から消える。
ぎゅうぎゅう詰めで、私を守っていた部分点が空いてしまい、不自然な隙間ができる。

「アンジュ様!?」

「あ、アンジュ様が消えたぞ!」

「魔物が連れ去ったのか!?」

消えるといっても、姿が見えなくなるだけで魔物の直ぐ後ろに立っている為、結構近くにいる。

「早くアンジュ様を探すぞ!!」

気合を入れて、カントスが副団長らしく連携して剣術を使う。
まだ、使いこなせていないからか、私が教えた剣術っぽい技は使わない様だ。

そして、そのまま勢いで魔物達を倒し切った兵士達は、予測通りもっと奥深くへ足を踏み入れる。
その後を、乗り物になれるくらいの大きさになったフェンリルの背に乗って、追う。

『躊躇イガナイナ。』

「そうだね。」

一応、警戒心はある様で私のことを探しながらも前後左右に意識を向ける事は怠っていない。

そして、段々と深くなっていく森の中で、不意にカントス達は一旦足を止めて、全員向き合った。

「もし、無理だと思ったら全員逃げろ。」

「で、ですがっ……」

カントスの言葉に、兵士の一人が言い返そうとする。
だが、鋭い眼光で黙らせた。

「アンジュ様が、もし死んでいるのなら俺達は今直ぐにでも、この森を去るべきだ。」

確かにその通りである。
伊達に副団長では無い様だ。

「だが、まだ死んでいると確定したわけでは無いし、苦戦するほどの魔物も居ない。だが、いつ強力な魔物が現れるか分からないんだ。もし、連携が崩れる事になれば全員死ぬ可能性だってある。」

カントスの言葉に、誰もが暗い顔をして俯くが、誰も反論しない事を見る限り、頭では分かっているのだろう。

「それに、アンジュ様なら帰ってくるだろう。良く分からない御人だが強さだけは次元が違うからな。」

ニッと、暗い空気を払拭するかの様に笑うカントスに、空気が和らぐ。

「確かに、そうだな。」

剣術に一番優れているが魔法がイマイチな真面目くんことヒロが、コクリと頷いた。

「頑張ろう。」

カンストが手を伸ばすと、次々とその上に手が重なっていき、全員笑顔で叫んだ。

「「「「クソッタレーーー!!!」」」

あまりにも大きな声だったものだから、カラスが飛んでいく。
魔物が蔓延る森で、大声を出すなんて馬鹿にも程がある。

『マタ、大層ナ円陣ダナ。』

「あれ円陣だったの?滅茶苦茶、雑だけど……」

『ヒトソレゾレダカラナ。』

確かに、円陣の掛け声に関しては人それぞれだろう。
文句を言う権利は、私には無い。

そう思いながら、暫く足を進めていると再度魔物に囲まれた。
流石に兵士達も気づいた様で、警戒している。

因みに今のところ、誰も取り乱していない。

「取り乱すなよ。」

「「「はい!」」」

カントスの一声で、それぞれの剣術で敵を薙ぎ倒していく。
もちろん、私が教えた魔法も駆使している為、通常では倒せないであろう敵も簡単に倒せている。

「この森じゃ、相手にならないのかな……」

胸に挟まってる、フェンリルに視線を落とすと、静かに森の奥を見つめていた。

「?」

不思議に思って、同じように見つめるが何も無い。
姿どころか、気配さえしない。

「フェル、何を見てるの?」

声をかけても、反応しない。
もぞもぞと、まるで引かれるように胸から抜けて手を伸ばそうとするフェンリルを無理やり胸の中に埋めて、強制的に動きを封じ込める。

真っ暗で驚いたのか、それとも動かない事が気に食わないのか、暫く暴れていたが数秒後には死んだように眠っていた。

「ふむ……」

これは、可笑しい。
血の様な湖もそうだが、フェンリルの様子を見ても、まだ危険な目に遭っていないうちに引き返した方が良さそうである。

「そろそろ帰った方が懸命だよね。」

兵士達全員に、透明化の魔法をかける。
そして、魔物に会う事なく森を抜ける事に成功した。










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