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35.おじさん、こんな仕事やめてやる ※一部紅蓮の冒険団視点

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「あー、可愛かったな」

「話すミツクビウルフも可愛いけど、ココロくんも良いわね」

「お前達絶対に楽しんでいただろ!」

 俺はギルド職員に呼ばれて急いで戻ってきたのに、冒険者達は拍手しながらココロの活躍を見守っていた。

 彼らからしたら紅蓮の冒険団のメンバーなんて子どもみたいなものだからな。

「冒険者ギルドって癒しがないのがいけないのよ!」

「俺もおっさんばかりで疲れたわ」

 たしかに見習い冒険者は少ないから、癒しがないのは仕方ない。

 ただ、こいつらは完全にココロとケルベロスゥを見て楽しんでいた。

 おもちゃにされてココロは大丈夫だったか心配だ。

「はぁー、あれであの子が冒険者のこと嫌いになったらどうするんですか?」

「あっ……そうだな」

「すっかりそのことを忘れていたわね」

 職員に怒られているこの二人だが、冒険者の中でもかなり優秀なやつらだ。

 そんな冒険者がこんな田舎町の冒険者ギルドに来ているとは、紅蓮の冒険団も気づかなかっただろう。

「Aランク冒険者なのにそこに気づかないのか」

「いや、あれは俺達が止めなくても大丈夫だったぞ」

「あのおててさんって言われている黒い手達も相当強かったわよね?」

 おててさんってビッグベアーを運んで来た謎の魔物だったかな?

 あいつも戦うことができるのか。

 あの年齢であそこまで魔物を手懐けられるのは、よっぽどテイマーとしての才能があるのだろう。

 髪の色からして想像以上に魔力も高そうだしな。

 考えれば考えるほど、なぜあの子が奴隷として売られたのか謎だ。

「そういえば、ギルドマスターはちゃんとあの子を勧誘したのかしら?」

「あっ……」

 職員に言われて、俺は大事なことを思い出した。

 ココロを呼んだのは、紅蓮の冒険団の話だけではなく見習い冒険者に勧誘する予定だった。

 俺もすっかり忘れていた。

 Aランク冒険者の二人は立ち上がって俺に近づいてきた。

「私達に頭が回らないって言ったのは誰かしら?」
「あの歳であれだけテイムできるやつだ。優秀な人材はちゃんと捕まえておかないとな?」

「はい」

 俺は彼らを追いかけるように冒険者ギルドを後にした。

「ははは、ここのギルドマスターは面白いな」

「最近楽しいことがなかったから良いわね」

 今頃絶対俺の後ろ姿を見て笑っているぞ。

 こんな田舎の冒険者ギルドなんてやめてやる!

「それで元冒険者・・・・達はどうする? きっとまた襲ってくるわよね」

「そうだな」

「私達で処分しちゃう?」

「ははは、やっちまうかー!」

 急いで追いかける俺の耳には彼らの恐怖の会話は聞こえなかった。

 ♢

「おい、なぜ俺がここにいるんだ?」

「あの子どもに気絶させられたのを覚えていないのか?」

「いや……って痛っ!?」

 急に下半身に痛みを感じた俺は急いでズボンを脱ぐ。

「なんだこれ……」

「どうしたんだ?」

 俺達は股間を見て驚いた。

「真っ青だ……」

 俺の大事な息子が青色に変色していた。

 すぐに血が出ていないか確認をしたが、どこにも怪我をした様子はない。

 ただただ、全部が真っ青になっている。

「それって死んでないか?」

「はぁん? ここが死ぬことってあるんかよ!」

「だって息子って言うぐらいだぞ……?」

 俺はこの息子を使って女達をヒイヒイ言わせてきた。

 そんな俺が自分の股間を見て、ヒイヒイ言う時が来るとは思いもしなかった。

「ぬあああああああ!」

 急に股間も真っ青になるとは誰も思わない。

 それにさっきまで忘れていたが、俺達は冒険者としての資格も剥奪された。

 あまりにも受け入れられない現実に俺はその場で叫ぶしかなかった。

「ねぇ、あなた達こんなところで何してるのかしら?」

 声をかけられて振り返ると、そこには冒険者ギルドにいた女性がいた。

 壁際にいたから気づかなかったが、そこら辺にいる女よりは美人で胸も大きい。

 これなら俺の息子も喜んで……いないだと!?

 いつもならすぐにワッショイする息子が、やはりぴくりともしないぞ。

「なぁ、あいつ下半身出して頭大丈夫か?」

「いや、頭がおかしいのは変わりないけど、色がすごいことになっているわね」

「あー、これは俺達の出番はなかったんじゃないか?」

「それもそうね」

 本当に俺の息子は死んじまったのか?

「おい、お前達……」

 気づいた時にはさっきまでいた女性はいなくなっていた。

 おのれ……。

 俺の股間を真っ青にしたあいつらを許さねーぞ。
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