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第一区画
38. 頭の良さ
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「まずは今回危ない目に巻き込んですまなかった」
俺は桃乃に頭を下げた。桃乃は驚いていた表情をしていたが、命の危険にあったのは俺のせいだ。
「いえ、大丈夫ですよ。それであの穴はなんですか?」
俺にとってはだいぶ慣れてきているが、桃乃にとってはとんでもない穴だっただろう。
「あの穴は約半年ちょっと前に急にできていてな……あれは簡単に言えば、異世界へつなぐゲートになっている。桃乃も聞いたと思うがアナウンスが流れただろ?」
「とても無機質でAIみたいな声が直接脳に語りかけて来ました」
脳内に流れてくるアナウンスは桃乃も同じ声の人物なんだろうか。
「ゲートを潜った時のアナウンスは覚えているか?」
俺の言葉を桃乃は考えている。初めて行った時は急に話しかけられて俺も覚えてはいない。
「あー、株がどうやらって言ってました」
「ああ、大体は合っているな。実はあそこのゲートを通る時に、自身の投資によって能力が上昇するような仕組みになっている」
桃乃は能力について考えているのだろう。きっと俺の動きと自身の動きの違いに気づいてはいる。
普通に考えてスコップで人殺しできたら、とんでもない馬鹿力の持ち主になるだろう。
穴まで全力で走った時もそうだが、違いはその後の桃乃と俺の落ち着くまでの時間も全く異なっていた。
俺にはHP自動回復と疲労軽減のスキルがあるためその影響もある。
「それで俺は能力が上がり、向こうで依頼と言うのかクエストと言えば……とりあえず、言われた魔物を倒すことで報酬を貰っている」
「報酬ですか?」
俺は机に置いてある麻の袋を指さした。
「その袋を開けて、中身を出してみたらわかるよ」
桃乃は麻の袋を見ると一度驚いていたが、机の上に数枚お札を置いた。
「こんなに入ってました」
桃乃は机の上に7万円を置いた。ポイズンスネークの討伐報酬だろう。
「ちなみに俺のはこんな感じだ」
俺は麻の袋から今回の報酬と魔物の素材分の102万円を机に置いた。
「えっ……」
その多さに桃乃は空いた口が塞がらない。いきなり数ヶ月分の給料が袋から出てきたのだ。
「俺のはポイズンスネークの討伐と桃乃の救出、そして魔物の素材を売っている」
「魔物の素材ですか?」
「ああ。魔物を倒した後に急に消えたのを覚えているか?」
「あっ、先輩が触ったら消えるやつですよね?」
どうやら桃乃も疑問に思っていたが、異世界だからと割り切っていたらしい。
突然魔物の死体が消えるって中々びっくりすることだからな。
「あれは俺がこの袋に回収して魔物の素材を集めていたんだ。それでゲートを通る時に売却して利益を得ている」
「それじゃあ、投資で力を手に入れて、異世界で敵を倒してお金を手に入れるってことですか?」
桃乃は大体のことは理解していた。実際に体験しているからか理解が早くて助かる。
「結構命がけですね」
「ああ、だから万全な準備は必要だが、こっちからの荷物は持ち込めない仕組みになっている。だからこそ投資額や投資商品が重要になってくる」
桃乃はリスクについてもすぐに気づくことができ、命と異世界での副業を天秤にかけていた。
「それでもこれだけ稼げるのは大きいですね。先輩はすぐに仕事を辞めちゃうんですか?」
俺は軽く頷いた。この前の飲み会でお金を貯めて早期退職を目指していることを伝えている。
その時は冗談に感じていたのだろう。現実にはお金がこれだけ目の前に現れると実感するしかない。
「いや、リスクも高いから慎重に稼いでいくつもりだぞ。あと、報酬はそれだけじゃなくてもう一つあるんだ」
「もう一つですか?」
「向こうで手に入れた能力がそのままこっちでも何かしらの影響があるんだ」
「先輩の仕事が早くなったのはおよそ半年前……」
桃乃は聞いた瞬間、何かがつながったのだろう。俺はよく仕事を早く終わらせるにはどうすればいいのかと聞かれていた。
「そういうことだ。俺は何かしらの恩恵をゲートを潜って手に入れている」
桃乃はその恩恵に興味が湧いてきたのだろう。体を前のめりにして聞いている。
「俺の場合は体が疲れにくくなって、疲労が溜まりにくい体になったのと、頭の処理速度が格段に早くなっている」
「最近休憩をあまり取らないのも、仕事のスピードが早くなったのも関係していますか?」
桃乃は俺を観察しているのか、話をこんなに早く理解できるのはすでに何か能力を得ているのだろうか。
そんなことを思いながらも俺は話を続けた。
「それで合ってる。疲れにくくなっただけで体力はあるわけじゃないから運動を始めたし、頭の処理速度も早くなったけど、はじめはなんとなく感じる程度だからな」
「それが投資の額で能力が増加する仕組みとか……?」
桃乃の対応力と理解力には驚かされる。大体のことは理解して、予測を常に立てているのだ。
「だからこそ俺は投資額がある程度増えたらゲートを通るようにしている」
これで大体の説明は終えた。俺の話に桃乃も納得しているのだろう。
その後は時計を見た時に時間が進んでないことに気づき時間軸の違いの質問があった程度だ。
その後も取るに足らない話をして桃乃は帰ることになった。
「先輩ご迷惑をおかけしました」
「いやいや、迷惑をかけたのはこっちだからな」
桃乃は門前で頭を下げている。俺を家まで運ばせて、嘔吐物で汚れたスーツもかけ、ベットで服も着替えて寝ていたから本当に迷惑ばかりかけている。
「それじゃあ、また明日仕事場で!」
「はい」
桃乃はまた頭を下げて帰って行った。
それから桃乃は数日仕事に来ることもなく休んでいた。
俺は桃乃に頭を下げた。桃乃は驚いていた表情をしていたが、命の危険にあったのは俺のせいだ。
「いえ、大丈夫ですよ。それであの穴はなんですか?」
俺にとってはだいぶ慣れてきているが、桃乃にとってはとんでもない穴だっただろう。
「あの穴は約半年ちょっと前に急にできていてな……あれは簡単に言えば、異世界へつなぐゲートになっている。桃乃も聞いたと思うがアナウンスが流れただろ?」
「とても無機質でAIみたいな声が直接脳に語りかけて来ました」
脳内に流れてくるアナウンスは桃乃も同じ声の人物なんだろうか。
「ゲートを潜った時のアナウンスは覚えているか?」
俺の言葉を桃乃は考えている。初めて行った時は急に話しかけられて俺も覚えてはいない。
「あー、株がどうやらって言ってました」
「ああ、大体は合っているな。実はあそこのゲートを通る時に、自身の投資によって能力が上昇するような仕組みになっている」
桃乃は能力について考えているのだろう。きっと俺の動きと自身の動きの違いに気づいてはいる。
普通に考えてスコップで人殺しできたら、とんでもない馬鹿力の持ち主になるだろう。
穴まで全力で走った時もそうだが、違いはその後の桃乃と俺の落ち着くまでの時間も全く異なっていた。
俺にはHP自動回復と疲労軽減のスキルがあるためその影響もある。
「それで俺は能力が上がり、向こうで依頼と言うのかクエストと言えば……とりあえず、言われた魔物を倒すことで報酬を貰っている」
「報酬ですか?」
俺は机に置いてある麻の袋を指さした。
「その袋を開けて、中身を出してみたらわかるよ」
桃乃は麻の袋を見ると一度驚いていたが、机の上に数枚お札を置いた。
「こんなに入ってました」
桃乃は机の上に7万円を置いた。ポイズンスネークの討伐報酬だろう。
「ちなみに俺のはこんな感じだ」
俺は麻の袋から今回の報酬と魔物の素材分の102万円を机に置いた。
「えっ……」
その多さに桃乃は空いた口が塞がらない。いきなり数ヶ月分の給料が袋から出てきたのだ。
「俺のはポイズンスネークの討伐と桃乃の救出、そして魔物の素材を売っている」
「魔物の素材ですか?」
「ああ。魔物を倒した後に急に消えたのを覚えているか?」
「あっ、先輩が触ったら消えるやつですよね?」
どうやら桃乃も疑問に思っていたが、異世界だからと割り切っていたらしい。
突然魔物の死体が消えるって中々びっくりすることだからな。
「あれは俺がこの袋に回収して魔物の素材を集めていたんだ。それでゲートを通る時に売却して利益を得ている」
「それじゃあ、投資で力を手に入れて、異世界で敵を倒してお金を手に入れるってことですか?」
桃乃は大体のことは理解していた。実際に体験しているからか理解が早くて助かる。
「結構命がけですね」
「ああ、だから万全な準備は必要だが、こっちからの荷物は持ち込めない仕組みになっている。だからこそ投資額や投資商品が重要になってくる」
桃乃はリスクについてもすぐに気づくことができ、命と異世界での副業を天秤にかけていた。
「それでもこれだけ稼げるのは大きいですね。先輩はすぐに仕事を辞めちゃうんですか?」
俺は軽く頷いた。この前の飲み会でお金を貯めて早期退職を目指していることを伝えている。
その時は冗談に感じていたのだろう。現実にはお金がこれだけ目の前に現れると実感するしかない。
「いや、リスクも高いから慎重に稼いでいくつもりだぞ。あと、報酬はそれだけじゃなくてもう一つあるんだ」
「もう一つですか?」
「向こうで手に入れた能力がそのままこっちでも何かしらの影響があるんだ」
「先輩の仕事が早くなったのはおよそ半年前……」
桃乃は聞いた瞬間、何かがつながったのだろう。俺はよく仕事を早く終わらせるにはどうすればいいのかと聞かれていた。
「そういうことだ。俺は何かしらの恩恵をゲートを潜って手に入れている」
桃乃はその恩恵に興味が湧いてきたのだろう。体を前のめりにして聞いている。
「俺の場合は体が疲れにくくなって、疲労が溜まりにくい体になったのと、頭の処理速度が格段に早くなっている」
「最近休憩をあまり取らないのも、仕事のスピードが早くなったのも関係していますか?」
桃乃は俺を観察しているのか、話をこんなに早く理解できるのはすでに何か能力を得ているのだろうか。
そんなことを思いながらも俺は話を続けた。
「それで合ってる。疲れにくくなっただけで体力はあるわけじゃないから運動を始めたし、頭の処理速度も早くなったけど、はじめはなんとなく感じる程度だからな」
「それが投資の額で能力が増加する仕組みとか……?」
桃乃の対応力と理解力には驚かされる。大体のことは理解して、予測を常に立てているのだ。
「だからこそ俺は投資額がある程度増えたらゲートを通るようにしている」
これで大体の説明は終えた。俺の話に桃乃も納得しているのだろう。
その後は時計を見た時に時間が進んでないことに気づき時間軸の違いの質問があった程度だ。
その後も取るに足らない話をして桃乃は帰ることになった。
「先輩ご迷惑をおかけしました」
「いやいや、迷惑をかけたのはこっちだからな」
桃乃は門前で頭を下げている。俺を家まで運ばせて、嘔吐物で汚れたスーツもかけ、ベットで服も着替えて寝ていたから本当に迷惑ばかりかけている。
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「はい」
桃乃はまた頭を下げて帰って行った。
それから桃乃は数日仕事に来ることもなく休んでいた。
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