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第二区画
106. 事前準備は大事です
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キッチンに向かうとすでに二人は準備していた。さすがは料理に慣れている二人だ。
鞄からこの日のために用意したマイエプロンを取り出した。
「あれ? 先輩の家にエプロンってありました?」
家には調理器具もないため、当然エプロンもない。ちゃんと今日のために買った緑のエプロンだ。
「この間買ってきたがこういうのがお洒落なんだよな……?」
最近おしゃれなカフェとかで見る腰に巻くタイプのエプロンだ。たくさんポケットがついているため、調味料が収納できて便利だろう。
実際に美味しそうな塩と胡椒を仕込んできた。
「あはは、お姉ちゃん……私限界」
「いや、これが先輩の本当の姿だからね」
なぜか二人は俺のエプロン姿を見て笑っていた。どこかおかしいのだろうか。
「このエプロンかっこいいよな? ポケット沢山で便利だぞ」
ポケットから塩と胡椒を取り出すと、桃乃姉妹はシンクを掴んで悶えている。
「もうダメ……お腹がよじれそう……」
「先輩のそのエプロンすごい似合ってますよ」
「そうか! いいだろ!」
「くふふ」
「はい、先輩らしいですがスコップを持ってたらもっと先輩らしいです」
「スコップ?」
桃乃は何を言っているのだろう。料理をするのにスコップは必要ないはずだ。
小さなスコップ形のスプーンが売っているのを見たことがあるが、そのことを言っているのだろうか。
「もう、お姉ちゃんが教えてあげたら。私お腹が痛いよ」
花梨さんはついにはその場でしゃがみ込んでしまった。
「先輩……大変言いにくいんですか……」
「なんだ?」
「そのエプロンってガーデニング向けのエプロンですよ?」
「えっ……」
確かに買ったところはお洒落な雑貨店だが、ガーデニング向けだとは思ってもなかった。確かにショート丈だと思ったが、調理には向いていないらしい。
たくさんあるポケットも、ハサミなどの道具を入れるためにあるようだ。
「まぁ、大事なところだけは汚れないからいいんじゃないですか?」
「ダメ……お姉ちゃんまでそんなこと言わないで」
花梨さんはついにキッチンから出て行ってしまった。
エプロンなのに膝丈なのにはそういう理由があった。ほとんど大腿の半分ぐらいしかなく、ミニスカートよりミニの状態だ。
「まさか料理をする前に、こんなことが起きるとは思いませんでしたよ」
「ああ、俺も思わなかったわ」
俺もこんなに笑われるとは思わなかった。この間も偶然に花梨さんと会った時は、仕事終わりで疲れていたため今回はかっこよくきめたつもりがどうやら作戦失敗らしい。
「先輩は今のままが一番いいですからね。花梨を呼んできます」
どうやら空回りしていたことが、桃乃にはバレてしまった。
俺はその合間に材料の下準備をすることにした。料理をしたこともないのに、脳から下準備の仕方が教えられる。すると体が動き出した。
「先輩、花梨を……えっ?」
「おっ、どうした」
「あの短期間でこんなに進んでるんですか?」
「ほんとだな」
手元を見ると皮を剥き終えたじゃがいもは水に浸して、フライパンにはすでに玉ねぎを炒めた状態で挽肉を入れていた。
「すみません、私が笑い過ぎて……えっ?」
どうやら少し遅れた花梨さんも驚いているようだ。
俺も体が勝手に動くから驚いている。これこそ自動料理生成と言っても良いぐらいだ。
「コロッケに練乳を入れるんですか?」
入れるタイミングもわからなかったが、体が勝手に動いてくれるため慣れた手つきで練乳を入れる。
「先輩初めてコロッケ作るらしいよ」
「はあ……えっ、初めてなんですか?」
ついさっきまで笑わせてたのに、今度は何度も驚かせてしまって申し訳ない。
「本当に規格外だよね」
「うん、先輩さんって謎ですよね」
俺はいつのまにか花梨さんの中では謎の人物という扱いになっていた。
俺自身も行動が自分の中で処理できていない証拠だろう
そして知らないうちにタネができ、後は衣をつけて揚げるだけだ。
「あとは揚げるだけだぞ?」
「そのままやってみますか?」
「ああ、そうするわ」
俺は気づいてしまった。新しいスキルの影響で、体を止めようとしても、作り終わるまで止まらないことを。
鞄からこの日のために用意したマイエプロンを取り出した。
「あれ? 先輩の家にエプロンってありました?」
家には調理器具もないため、当然エプロンもない。ちゃんと今日のために買った緑のエプロンだ。
「この間買ってきたがこういうのがお洒落なんだよな……?」
最近おしゃれなカフェとかで見る腰に巻くタイプのエプロンだ。たくさんポケットがついているため、調味料が収納できて便利だろう。
実際に美味しそうな塩と胡椒を仕込んできた。
「あはは、お姉ちゃん……私限界」
「いや、これが先輩の本当の姿だからね」
なぜか二人は俺のエプロン姿を見て笑っていた。どこかおかしいのだろうか。
「このエプロンかっこいいよな? ポケット沢山で便利だぞ」
ポケットから塩と胡椒を取り出すと、桃乃姉妹はシンクを掴んで悶えている。
「もうダメ……お腹がよじれそう……」
「先輩のそのエプロンすごい似合ってますよ」
「そうか! いいだろ!」
「くふふ」
「はい、先輩らしいですがスコップを持ってたらもっと先輩らしいです」
「スコップ?」
桃乃は何を言っているのだろう。料理をするのにスコップは必要ないはずだ。
小さなスコップ形のスプーンが売っているのを見たことがあるが、そのことを言っているのだろうか。
「もう、お姉ちゃんが教えてあげたら。私お腹が痛いよ」
花梨さんはついにはその場でしゃがみ込んでしまった。
「先輩……大変言いにくいんですか……」
「なんだ?」
「そのエプロンってガーデニング向けのエプロンですよ?」
「えっ……」
確かに買ったところはお洒落な雑貨店だが、ガーデニング向けだとは思ってもなかった。確かにショート丈だと思ったが、調理には向いていないらしい。
たくさんあるポケットも、ハサミなどの道具を入れるためにあるようだ。
「まぁ、大事なところだけは汚れないからいいんじゃないですか?」
「ダメ……お姉ちゃんまでそんなこと言わないで」
花梨さんはついにキッチンから出て行ってしまった。
エプロンなのに膝丈なのにはそういう理由があった。ほとんど大腿の半分ぐらいしかなく、ミニスカートよりミニの状態だ。
「まさか料理をする前に、こんなことが起きるとは思いませんでしたよ」
「ああ、俺も思わなかったわ」
俺もこんなに笑われるとは思わなかった。この間も偶然に花梨さんと会った時は、仕事終わりで疲れていたため今回はかっこよくきめたつもりがどうやら作戦失敗らしい。
「先輩は今のままが一番いいですからね。花梨を呼んできます」
どうやら空回りしていたことが、桃乃にはバレてしまった。
俺はその合間に材料の下準備をすることにした。料理をしたこともないのに、脳から下準備の仕方が教えられる。すると体が動き出した。
「先輩、花梨を……えっ?」
「おっ、どうした」
「あの短期間でこんなに進んでるんですか?」
「ほんとだな」
手元を見ると皮を剥き終えたじゃがいもは水に浸して、フライパンにはすでに玉ねぎを炒めた状態で挽肉を入れていた。
「すみません、私が笑い過ぎて……えっ?」
どうやら少し遅れた花梨さんも驚いているようだ。
俺も体が勝手に動くから驚いている。これこそ自動料理生成と言っても良いぐらいだ。
「コロッケに練乳を入れるんですか?」
入れるタイミングもわからなかったが、体が勝手に動いてくれるため慣れた手つきで練乳を入れる。
「先輩初めてコロッケ作るらしいよ」
「はあ……えっ、初めてなんですか?」
ついさっきまで笑わせてたのに、今度は何度も驚かせてしまって申し訳ない。
「本当に規格外だよね」
「うん、先輩さんって謎ですよね」
俺はいつのまにか花梨さんの中では謎の人物という扱いになっていた。
俺自身も行動が自分の中で処理できていない証拠だろう
そして知らないうちにタネができ、後は衣をつけて揚げるだけだ。
「あとは揚げるだけだぞ?」
「そのままやってみますか?」
「ああ、そうするわ」
俺は気づいてしまった。新しいスキルの影響で、体を止めようとしても、作り終わるまで止まらないことを。
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