109 / 158
第二区画

109. 異世界の変化

しおりを挟む
「ももちゃんここって……」

「この間の集落で合ってますよ」

 周りを見渡すと、やはり現実世界に戻った時の穴がある集落で間違いないようだ。

 それにしてもどことなく集落内の何かが変化している。

「何か違わないか?」

「一緒だとは思いますが……少し荒れてますか?」

 確かに前回来た時よりも建物はさらに崩れ落ち、集落が荒れている気がする。元々荒れている集落だから、わかりにくいのが現状だ。

 今までの経験では俺達が現実世界に戻れば異世界の時間は止まっているかわずかに進んでいる程度だった。しかし、その考えであれば異世界に来たタイミングでスカベンナーが穴の前にいるのが普通のはず。

 そもそもコボルトなら俺達が気づいたことをすぐに察知して寄ってきていたが、スカベンナーは違うようだ。

「とりあえずスカベンナーを探してみるか?」

「それがいいかも知らないですね」

 まずはスカベンナーを探すことにした。初めにスカベンナーがオークを隠していた穴に向かうことにした。距離としては一番近いため、きっと食糧のことも考えるとそこにいる可能性が高い。

「それにしても荒れてますね」

「この間も荒れていたけどさらにぐちゃぐちゃだな」

 建物自体が壊されているものが増えているが、中まで荒れている。まるで隅々まで探しものをしているようだ。

「ももちゃんストップ」

 俺は異変に気づき手を横に突き出した。桃乃がそれ以上歩かないように静止させる。

 装備画面に切り替え、魔刀の鋸を装備して周囲の警戒をする。俺の動きに気づき、桃乃もヘルメスの杖を装備した。

 そのままスカベンナーの穴に近づいていくと、さっきより異変が強くなっていた。どこか血の臭いを強く感じる。

 前回オークを倒した時はそこまで血の臭いはしなかった。

 俺が物陰から覗き込むと、そこには穴の前で血だらけで倒れているスカベンナーがいた。

「おい、大丈夫か!」

 俺は警戒を強めながらも、スカベンナーに近づくが辺りには敵らしいものは存在していない。

 どこかかなり前にやられたような傷をしていた。

「ももちゃん間に合うか?」

 スカベンナーの状態を確認している桃乃に聞くと頭を縦に振っていた。

「ただ、時間がかかるかもしれません」

 どうやら息はしているため命には問題ないらしい。ただ、危険な状態なのは間違いない。

 俺は急いで回復ポーションを取り出しスカベンナーに飲ませる。魔物に飲ませていいのかはわからないが、回復魔法よりは効果が早く出るため使った方が命は助かるだろう。

 それと同時に桃乃は回復魔法の発動を始めた。

 スカベンナーが血だらけで倒れているということは、ここまで傷つける何者かが集落に侵入していた。

 俺はその証拠を探すために辺りを見渡す。

「オークの死体がない……?」

 あれから2週間程度しか経っていないが、時間の進み方が違う異世界ではオークの死体はそのまま残っているはず。

 しかし、現状は穴の中にすらオークの骨すらも残っていない。

「先輩、ベンが目を覚ましました」

 スカベンナーは俺達の存在に気づくと、安心したのか桃乃にべったりとしている。

 そんなに体をスリスリすると桃乃がまたオークに襲われるではないか。

「おい、ベン!」

 俺はスカベンナーに近づくとにやりと笑っていた。

 前も現実世界に戻った時に感じたが、どうやらスカベンナーは怪しい顔で笑うようだ。

「ひょっとして俺らが前来た時ってだいぶ前か?」

 俺の言葉を理解しているのかスカベンナーは頷いている。

「ここにオークの死体がないのも……」

 オーク・・・という単語を出した途端にスカベンナーは震えていた。あの反応からしてスカベンナーを傷だらけにしたのもオークという可能性が高い。

 スカベンナーに近づき撫でると、震えも次第に収まりだす。

「それにしてもどのぐらい時間が経ったんですかね?」

 それは俺も気になっていた。時間軸が違うのは理解しているが、どの程度違いがあるのか今のところわかっていない。

「今回の依頼って制限時間2日ってなると明日の仕事に間に合いますか?」

「時間もだけど遺跡発掘って何をすればいいんだ」

 今までは討伐依頼が多かったのだが、今回は初めて遺跡発掘という何をすればいいかわからない依頼だ。

 そもそもこの砂漠の世界に来てから、遺跡っぽいものをまだ見かけたことはない。

「ベンって遺跡を見たことがあるか?」

 スカベンナーに聞いてみると反応はなかった。どうやら遺跡というものを理解していないようだ。

「何かしらの建築物を探すしかないですよね」

 桃乃が何か空中に触れていると俺の地図機能に"new"と表示されていた。

 ひょっとしてまさか……。

 桃乃を見るとスカベンナーのようににやりと笑っている。

「自動マッピングに共有機能が増えました」

 どうやら買い増ししたことにより、桃乃の自動マッピングで書いた地図が俺にも共有できるようになったらしい。ただ、マッピングできるのは桃乃だけなのは変わらない。

 それでも今後の探索には便利になりそうだ。

「じゃあ、まずは遺跡を探そうか」

 俺と桃乃は集落から出ることにしたが、後ろからスカベンナーが追いかけてきていた。

 オークにやられてから集落で待っているのが怖いのだろうか。

「一緒に来るか?」

 スカベンナーに聞くとやはりにやりと笑っていた。相変わらず笑い方が不気味なのは変わらないようだ。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

合成師

あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

処理中です...