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第二区画
108. 突然の呼び出し
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俺が桃乃の家で料理をしてから1週間が経った。桃乃は相変わらず元気ではあったが、ふと精神的に脆そうに感じる日もあった。
わかったきっかけはオーラが不安定に霞んでいたからだ。弱さを見せないようにしているのだろうが、自動鑑定でオーラが見えている俺はすぐに気づいた。
ただ、俺がプライベートにズカズカと足を踏み入れるのもおかしい。だからこそ、話したくなったらいつでも聞いてやるというスタンスで俺は生活していた。
そして、今日桃乃から家に居てくださいと言われている。
俺は家の中で家事をして待っているとインターホンが鳴った。
「はいはい、今開けますよ」
桃乃が来たと思いモニターを確認せずに扉を開けた。
「慧くんおはよう」
ああ、インターホンを押すのは桃乃だけではなかった。前回は何度もインターホンを押していたが、今回は普通の訪問だ。
「おはようございます」
今日もおかずを持ってきたのだろう。毎度休みのタイミングに合わせて大きな袋を持ってきている。
「今日も作りすぎたのよ! よかったら食べてね」
おかずを受け取ると、あまりの重さに腕が下に抜け落ちるかと思った。
「これ、重くなかったですか?」
「何言ってるのよ! おばさんってみんな力持ちなのよ」
体を斜めに向け、肘を曲げて力持ちのアピールしている。
――サイドチェスト
ボディビルダーの技の一つでもあるポーズをドヤ顔でしている。いくらおばさんでも普通はそんなポーズをしないだろう。
腕じゃなくて胸の筋肉を自慢する主婦は確実にいない。
「あっ、おはようございます!」
そんなことを話していると桃乃が家に着いたようだ。
「あら、香織ちゃんおはよう!」
急いでポーズを解き、手櫛で髪の毛を整えていた。さすがに同じ女性には見られたくないのだろう。
「今日もおかずをもらったんですね。やったー!」
桃乃は俺の持っている荷物を見て喜んでいる。この無邪気さが彼女の良いところだ。
「あっ、おばさんちょっと待っててね」
俺は忘れていたものを取りに行くためにリビングに戻った。
急いで戻るとその手には小さな紙袋を握っている。
「よかったら食べてください」
以前桃乃とも話していたが、いつももらってばかりのため、昨日お返しを買って準備をしていた。あとで桃乃と一緒に持っていくつもりだった。
最近お気に入りになったマカロンだ。
「私もここの洋菓子好きなのよ!」
どうやらおばさんに渡したものは間違いないようだ。袋の中のマカロンを覗いて喜んでいた。
「喜んでもらえてよかったです。この前から料理を始めたから今度俺も持ってきます」
「あら? じゃあ、これから私の手料理はいらないかしらね?」
「俺の中でおばさんの料理は母親の味です。いつでも食べたいですよ」
一人で暮らすようになってからはおばさんが作るご飯が母親の味になっていた。
落ち込んでしまった姿を見て俺はすぐに否定した。
今までそんなことを言ったことがなかったので、少し恥ずかしかった。それでも母親の味と言えば、亡くなった母親とおばさんの料理だ。
「ふふふ、ならよかったわね。料理はたくさんレシピを知ると便利だからね! じゃあ、私は行くね」
おばさんを見送ると、俺達は家に入り、リビングのテーブルに腰掛けた。
「そういえば花梨がこの間のコロッケが美味しかったってお礼にお菓子を持ってきました」
桃乃が取り出したのはピンク色の四角の缶。
「花梨が食べてもらおうと思って、たくさん焼いてましたよ」
桃乃がゆっくり開けると、色々な種類のクッキーが敷き詰められていた。
一つ手に取ると口に入れる。
サクサクでホロっとする感触を堪能すると、頭の中でレシピが作成された。
頭の中の記憶力は一体どうなっているのだろう。
「そういえば今日はどうしたんだ?」
俺は桃乃の要件を聞くことにした。
「よかったら異世界に行ってもいいですか?」
桃乃の顔は真剣だった。あれから何か心境の変化があったのだろうか。
桃乃は何かある時に自分から異世界に行こうと声をかけてくる。
「俺は大丈夫だけど何かあったのか?」
「少し株を買い増ししたので、スキルを強化しておこうかと思って……」
ただ単純に異世界に行きたかったらしい。それなら普通に言ってもらえれば気にしなかった。
真剣な顔で言われたから、無駄に身構えてしまった。
「じゃあ、準備していきますか」
動きやすい服装に着替え、桃乃と異世界に繋がる庭にある穴の中に入った。
♢
今回は特に投資信託や個別株の買い増しをしていない。だからアナウンスもあまり流れて来なかった。
【料理レシピ増加に伴い自動アイテム生成レシピ追加をしました】
ステータスではなく、スキルの変化に俺は驚いた。今までは異世界に行ったら現実世界に変化が起きたが、現実世界が異世界に反映されたのだ。
やはり現実世界での自動料理生成と自動アイテム生成は密接な関係があった。
料理レシピが増えれば、作れるアイテムのレシピが増えると分かれば本屋通いになるだろう。
速度ができる俺にはわざわざ買わなくても問題ない。
【今回のクエストは遺跡発掘です。制限時間は二日間です。それでは本日も頑張って家畜のように働きましょう】
急な明るさに目を閉じると、前回のような暑さを感じなかった。
瞼を開けるとそこはスカベンナーに教えてもらった集落の穴の前に立っていた。
わかったきっかけはオーラが不安定に霞んでいたからだ。弱さを見せないようにしているのだろうが、自動鑑定でオーラが見えている俺はすぐに気づいた。
ただ、俺がプライベートにズカズカと足を踏み入れるのもおかしい。だからこそ、話したくなったらいつでも聞いてやるというスタンスで俺は生活していた。
そして、今日桃乃から家に居てくださいと言われている。
俺は家の中で家事をして待っているとインターホンが鳴った。
「はいはい、今開けますよ」
桃乃が来たと思いモニターを確認せずに扉を開けた。
「慧くんおはよう」
ああ、インターホンを押すのは桃乃だけではなかった。前回は何度もインターホンを押していたが、今回は普通の訪問だ。
「おはようございます」
今日もおかずを持ってきたのだろう。毎度休みのタイミングに合わせて大きな袋を持ってきている。
「今日も作りすぎたのよ! よかったら食べてね」
おかずを受け取ると、あまりの重さに腕が下に抜け落ちるかと思った。
「これ、重くなかったですか?」
「何言ってるのよ! おばさんってみんな力持ちなのよ」
体を斜めに向け、肘を曲げて力持ちのアピールしている。
――サイドチェスト
ボディビルダーの技の一つでもあるポーズをドヤ顔でしている。いくらおばさんでも普通はそんなポーズをしないだろう。
腕じゃなくて胸の筋肉を自慢する主婦は確実にいない。
「あっ、おはようございます!」
そんなことを話していると桃乃が家に着いたようだ。
「あら、香織ちゃんおはよう!」
急いでポーズを解き、手櫛で髪の毛を整えていた。さすがに同じ女性には見られたくないのだろう。
「今日もおかずをもらったんですね。やったー!」
桃乃は俺の持っている荷物を見て喜んでいる。この無邪気さが彼女の良いところだ。
「あっ、おばさんちょっと待っててね」
俺は忘れていたものを取りに行くためにリビングに戻った。
急いで戻るとその手には小さな紙袋を握っている。
「よかったら食べてください」
以前桃乃とも話していたが、いつももらってばかりのため、昨日お返しを買って準備をしていた。あとで桃乃と一緒に持っていくつもりだった。
最近お気に入りになったマカロンだ。
「私もここの洋菓子好きなのよ!」
どうやらおばさんに渡したものは間違いないようだ。袋の中のマカロンを覗いて喜んでいた。
「喜んでもらえてよかったです。この前から料理を始めたから今度俺も持ってきます」
「あら? じゃあ、これから私の手料理はいらないかしらね?」
「俺の中でおばさんの料理は母親の味です。いつでも食べたいですよ」
一人で暮らすようになってからはおばさんが作るご飯が母親の味になっていた。
落ち込んでしまった姿を見て俺はすぐに否定した。
今までそんなことを言ったことがなかったので、少し恥ずかしかった。それでも母親の味と言えば、亡くなった母親とおばさんの料理だ。
「ふふふ、ならよかったわね。料理はたくさんレシピを知ると便利だからね! じゃあ、私は行くね」
おばさんを見送ると、俺達は家に入り、リビングのテーブルに腰掛けた。
「そういえば花梨がこの間のコロッケが美味しかったってお礼にお菓子を持ってきました」
桃乃が取り出したのはピンク色の四角の缶。
「花梨が食べてもらおうと思って、たくさん焼いてましたよ」
桃乃がゆっくり開けると、色々な種類のクッキーが敷き詰められていた。
一つ手に取ると口に入れる。
サクサクでホロっとする感触を堪能すると、頭の中でレシピが作成された。
頭の中の記憶力は一体どうなっているのだろう。
「そういえば今日はどうしたんだ?」
俺は桃乃の要件を聞くことにした。
「よかったら異世界に行ってもいいですか?」
桃乃の顔は真剣だった。あれから何か心境の変化があったのだろうか。
桃乃は何かある時に自分から異世界に行こうと声をかけてくる。
「俺は大丈夫だけど何かあったのか?」
「少し株を買い増ししたので、スキルを強化しておこうかと思って……」
ただ単純に異世界に行きたかったらしい。それなら普通に言ってもらえれば気にしなかった。
真剣な顔で言われたから、無駄に身構えてしまった。
「じゃあ、準備していきますか」
動きやすい服装に着替え、桃乃と異世界に繋がる庭にある穴の中に入った。
♢
今回は特に投資信託や個別株の買い増しをしていない。だからアナウンスもあまり流れて来なかった。
【料理レシピ増加に伴い自動アイテム生成レシピ追加をしました】
ステータスではなく、スキルの変化に俺は驚いた。今までは異世界に行ったら現実世界に変化が起きたが、現実世界が異世界に反映されたのだ。
やはり現実世界での自動料理生成と自動アイテム生成は密接な関係があった。
料理レシピが増えれば、作れるアイテムのレシピが増えると分かれば本屋通いになるだろう。
速度ができる俺にはわざわざ買わなくても問題ない。
【今回のクエストは遺跡発掘です。制限時間は二日間です。それでは本日も頑張って家畜のように働きましょう】
急な明るさに目を閉じると、前回のような暑さを感じなかった。
瞼を開けるとそこはスカベンナーに教えてもらった集落の穴の前に立っていた。
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