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第二区画

132.生活準備

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 俺は異世界のことを笹寺に伝えると、噛み合わないことがいくつかあった。

 そもそも俺達のようにゲームのような能力やアイテムなどが、視界に何も表示されていないのが特徴的だった。

 本人が覚えているのは直接脳に聞こえた謎の声ぐらい。その声の主は俺達が聞いているデジタル音声と同じなんだろうか。

 オークを倒した場所に戻ると、まだ死体はそのまま残っていた。魔物に食べられた形跡もなく、数もそこまで多くない。

 俺達は何度も集落と往復し、運び込むことにした。

 ちなみにドワーフがいる集落の周りはトレント達に見張りをお願いしたら快く引き受けてくれた。

 その様子を見ていた笹寺は腹を抱えて笑っていた。側から見ると俺はヤシの木と話しているように見えるようだ。

 自分達が笑われていると気づいたトレントは、怒って実を笹寺に投げていた。どうやらトレントも怒るらしい。

「これで最後?」

「これだけあれば食料はどうにかなるけど、後はあのオアシスの中に食料はあったか?」

「基本的には水と実ばかりだったぞ」

 どうやらオーク達の主食は実ばかりで肉食ではないようだ。俺達は出来る限り食料を確保するためにオークがいた集落に向かう。





 集落の中は誰もいなくなり、風の音が聞こえるぐらいしか音がないほど静かだ。

「食料と水はどこにあるんだ?」

「こっちこっち!」

 笹寺が案内したところは集落の中央にある建物だった。どうやって笹寺はこんなところを移動していたのか疑問になるほど、周りには特に隠れる場所もない。

 俺は笹寺に続いて中に入ると急な目眩に襲われる。

「慧大丈夫か?」

 突然視界が砂嵐のようになる。ゆっくりと目を開けると、自動鑑定による鑑定結果で視界が埋まっていた。

 頭の処理が追いつかずに目眩に襲われたのだろう。キラーアントの食糧庫の時よりも種類が多いようだ。

 俺は種を一つずつ手に取るが、植物詳細を使っても表記は変わらない。何かわからない物に関しては、スキルも反応しないのだろう。

 集落に戻った時にドワーフに見てもらうために、全てアイテムの中に入れる。

 どんどん無くなる実と種に笹寺も驚いていた。普通に考えても、アイテム回収機能って便利だからな。

 水はアイテムとして回収できなかったが、何かの容器に入れれば回収は出来た。容器に水を入れて、ドワーフのところまでアイテムとして回収した。

 気づけば太陽が少しずつ出てきて辺りは明るくなっていた。

 集落の中を歩き回ると、俺達がいる集落の方が大きいことに気づく。ただ、オークに一度襲われているため、いつオークが襲ってくるかわからない。

 そのため自衛できる環境を作っておく必要がある。

「あっ、ちょっと待った。寄りたいところがあるから行ってくる」

 帰ろうとしたら、笹寺は何かを思い出したのか走ってどこかに行ってしまった。

 しばらく集落の入り口で待っていると笹寺は戻ってきた。その手には沢山の武器を抱えていた。

「自衛するなら武器は必要だろ?」

 俺が装備できないため、武器に対しての意識が向いていなかったがドワーフ達であれば使えれるように調整すれば、自衛する手段になるだろう。

 武器は収納できなかったため、笹寺と分担してドワーフの元へ持っていくことした。





「いやぁー!!」

 集落に近づくと女性の叫び声が聞こえてきた。笹寺の顔を見ると笹寺も聞こえていたようだ。

「走れるか?」

「おう!」

 俺と笹寺は全速でドワーフが待つ集落に向かう。

 入り口のトレント達に変わりはなく、むしろ俺の帰宅を枝を揺らして歓迎している。

「おい、大丈夫か?」

 声がしたドワーフの方へ近づくと桃乃が何か作業をしていた。どうやら桃乃はすでに起きていたらしいを

「先輩遅いです」

「ああ、すまない」

 俺は前回のこともあり遅いって言われると申し訳ない気持ちになってしまう。

 一方、あの時の怖い桃乃はもういなかった。

「それよりもどうしましょう」

「なにかあったのか?」

「私、ひょっとしたら助産師になれそうです」

 桃乃の手には小さくて可愛い子供が抱かれていた。だが、その顔はオークに似ており、豚ではないが豚に近い顔をしていた。
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