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30 王子様ルート
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煌びやかな装飾が施された扉から頭を覗かせ、周囲を警戒する。誰もいないことを確認すると、女はそっと部屋から抜け出した。
(久しぶりの外だわ……)
浮足立つ女は美しいが、その表情はどこか憔悴している。
音を立てないように駆ける足がもつれ、前につんのめる。
転倒に備えぎゅっと目を瞑った女の体は、しっかりした胸板に受け止められた。
「あ、ありがとう――っ」
女の顔から血の気が引く。そこにいるのは、愛しい、旦那様だった。
笑っているのに、冷ややかな空気を感じる。
「アルフレッド、さま……どうして、今日は隣国の王と会談なのでは」
「あぁ。でも嫌な予感がして君の様子を見に来たんだ。そしたらこれだ」
アルフレッドは女を抱き上げ、二人の寝室へと連れて行く。
女は唇を噛んだ。今日は、アルフレッドの監視から外れる千載一遇のチャンスだったのに。
「ねぇ、君は僕のことが嫌い?」
耳元で囁かれる問いかけに、女は全力で首を横に振った。
「まさか! 誰よりもお慕いしております。ただ、少しだけ、外の空気を感じたいと思っただけで……」
アルフレッドはため息を吐く。魔法で扉を開けると、ベッドの上に女を寝かせた。
そのまま女の上にのしかかる。
「僕も愛してる。誰よりも。だから不安でしかたないんだよ。君は学生の時から色んな人を魅了していたから、少しでも目を離すと、僕の元から離れていってしまいそうで」
美しい紺碧の瞳が、切実に訴えかけてくる。女は思わずアルフレッドの頬に手を伸ばした。
「……わたしは、ずっとあなたのものです」
その言葉に、秀麗な顔がふっと緩んだ。
幸せそうな表情に、囁かれる睦言に、女は愛されている実感に胸がいっぱいになる。
ここから出られなくても、誰とも会うことができなくても、アルフレッドが傍にいてくれればそれでいいと思えてくる。
アルフレッドの愛を一身に受け、女は顔を曇らせた。
「……ごめんなさい。勝手に部屋を抜け出して、心配をかけてしまって」
「いいや。僕も君の愛を疑ってごめんね? お詫びに、今日はずっと君を抱きしめるから」
「それは嬉しいですが、あなたのお仕事の邪魔になるのでは――」
「僕たちの邪魔をする公務の方が悪い」
「ですが……んっ」
諫言は唇でふさがれる。長いキスに、女の思考がぼやけていく。
やっと解放された時、女の瞳は熱を帯びて潤んでいた。対照的に、アルフレッドの表情は冷めている。
「僕はほんの少しでも君と離れるのが苦痛なのに、君は僕が傍にいなくても平気なの?」
またアルフレッドの逆鱗に触れてしまったことに気づき、女は慌てて弁明する。
「ち、違います。わたしだって寂しいです」
「寂しいなら、冷たいこと言わないで」
縋るような声に、女の胸がきゅっと締め付けられた。愛する人を傷つけてしまった不甲斐なさに、女の目から涙がこぼれる。
「ごめんなさい、アルフレッド様……」
「いいよ。僕もきつく言い過ぎた」
男らしい手が女の涙を拭う。その手の優しさに、余計に涙が止まらなくなる。
(どうして、こんなに愛をくれるアルフレッド様を悲しませてしまうの)
「……君は、泣いている姿も美しいね」
アルフレッドは思わずといった様子で呟いくと、女をあやすように、ぎゅっと抱きしめた。体を包む温もりに、女の緊張がふっと解ける。
しばらくして、泣き疲れた女はうつらうつらと船をこぎだした。
アルフレッドは上体を起こして、今にも眠りに落ちそうな女を見つめる。
ふと、シーツから露になっていた華奢な手首に目が留まり、アルフレッドはそっと触れた。
「そうだ、君への贈り物を考えていたんだけど、鎖がいいかもね。僕と君を繋いで……そうすればずっと一緒にいられる」
君も、きっと喜んでくれるよね。
楽しげながらも狂気が滲む愛しい人の声に、まどろみながらも女は頷いた。
(久しぶりの外だわ……)
浮足立つ女は美しいが、その表情はどこか憔悴している。
音を立てないように駆ける足がもつれ、前につんのめる。
転倒に備えぎゅっと目を瞑った女の体は、しっかりした胸板に受け止められた。
「あ、ありがとう――っ」
女の顔から血の気が引く。そこにいるのは、愛しい、旦那様だった。
笑っているのに、冷ややかな空気を感じる。
「アルフレッド、さま……どうして、今日は隣国の王と会談なのでは」
「あぁ。でも嫌な予感がして君の様子を見に来たんだ。そしたらこれだ」
アルフレッドは女を抱き上げ、二人の寝室へと連れて行く。
女は唇を噛んだ。今日は、アルフレッドの監視から外れる千載一遇のチャンスだったのに。
「ねぇ、君は僕のことが嫌い?」
耳元で囁かれる問いかけに、女は全力で首を横に振った。
「まさか! 誰よりもお慕いしております。ただ、少しだけ、外の空気を感じたいと思っただけで……」
アルフレッドはため息を吐く。魔法で扉を開けると、ベッドの上に女を寝かせた。
そのまま女の上にのしかかる。
「僕も愛してる。誰よりも。だから不安でしかたないんだよ。君は学生の時から色んな人を魅了していたから、少しでも目を離すと、僕の元から離れていってしまいそうで」
美しい紺碧の瞳が、切実に訴えかけてくる。女は思わずアルフレッドの頬に手を伸ばした。
「……わたしは、ずっとあなたのものです」
その言葉に、秀麗な顔がふっと緩んだ。
幸せそうな表情に、囁かれる睦言に、女は愛されている実感に胸がいっぱいになる。
ここから出られなくても、誰とも会うことができなくても、アルフレッドが傍にいてくれればそれでいいと思えてくる。
アルフレッドの愛を一身に受け、女は顔を曇らせた。
「……ごめんなさい。勝手に部屋を抜け出して、心配をかけてしまって」
「いいや。僕も君の愛を疑ってごめんね? お詫びに、今日はずっと君を抱きしめるから」
「それは嬉しいですが、あなたのお仕事の邪魔になるのでは――」
「僕たちの邪魔をする公務の方が悪い」
「ですが……んっ」
諫言は唇でふさがれる。長いキスに、女の思考がぼやけていく。
やっと解放された時、女の瞳は熱を帯びて潤んでいた。対照的に、アルフレッドの表情は冷めている。
「僕はほんの少しでも君と離れるのが苦痛なのに、君は僕が傍にいなくても平気なの?」
またアルフレッドの逆鱗に触れてしまったことに気づき、女は慌てて弁明する。
「ち、違います。わたしだって寂しいです」
「寂しいなら、冷たいこと言わないで」
縋るような声に、女の胸がきゅっと締め付けられた。愛する人を傷つけてしまった不甲斐なさに、女の目から涙がこぼれる。
「ごめんなさい、アルフレッド様……」
「いいよ。僕もきつく言い過ぎた」
男らしい手が女の涙を拭う。その手の優しさに、余計に涙が止まらなくなる。
(どうして、こんなに愛をくれるアルフレッド様を悲しませてしまうの)
「……君は、泣いている姿も美しいね」
アルフレッドは思わずといった様子で呟いくと、女をあやすように、ぎゅっと抱きしめた。体を包む温もりに、女の緊張がふっと解ける。
しばらくして、泣き疲れた女はうつらうつらと船をこぎだした。
アルフレッドは上体を起こして、今にも眠りに落ちそうな女を見つめる。
ふと、シーツから露になっていた華奢な手首に目が留まり、アルフレッドはそっと触れた。
「そうだ、君への贈り物を考えていたんだけど、鎖がいいかもね。僕と君を繋いで……そうすればずっと一緒にいられる」
君も、きっと喜んでくれるよね。
楽しげながらも狂気が滲む愛しい人の声に、まどろみながらも女は頷いた。
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