真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ

文字の大きさ
32 / 72
第二章

6案山子

しおりを挟む

部活も仕事も無い放課後、明日は土曜で休日。
週末だからと大目に出された宿題を片づけてしまおうと図書館にいた時のことだった。

金曜日の閉館直前の図書館には俺以外の利用者どころか何故か図書委員すらいなかった。司書の先生は今日出張中という事は知っていたが代わりに図書委員ぐらいいてもよさそうなのだが……。まぁ閉館時には戸締りにくるだろう。
冬も間近なこの時期は5時を過ぎれば外も鮮やかなオレンジ色で、開けっ放しにしていた窓から入る風が肌寒く感じる。

そろそろ帰ろうかとシャーペンと消しゴムを筆入れにしまおうとした時、ガラっと勢いよく入口のドアが開いた。

「……っ!」

振り向けばそこには木製の猿のような仮面を被った生徒が経立っていた。

「オズ……?」

その奇妙ないでたちは俺にその存在を特定させた。
彼は走っていたようで入口から少し離れている俺にも荒い息遣いが聞こえ、肩で上下させていた。
これはどうするべきなのか思案しようとした時、入り口のその更に向こうの方から怒鳴り声のような声が聞こえた。

「どっちに行った!!」
「図書館だ!!」

ソレは聞いたことのない声だったが、お面の生徒がビクリと肩を震わせたので追われていることが分かった。
そしてその瞬間、俺はとっさに彼に声をかけた。

「カウンターの中の掃除ロッカーに隠れろ」
「っ!?」

猿面は一瞬迷う様な素振りを見せたがすぐにカウンターを飛び越え、音も立てずにロッカーの中へ入った。制服の隅が挟まることも無く開かない限りそこに人がいるとはバレないだろう。

そして、俺は椅子から立ち上がり驚いた様な表情を作って開いている窓の方にゆっくりと歩いた。
少しして、予想通り後ろから声がかけられた。

「おい! そこの生徒!!」
「は、はいっ……!?」

肩をビクリと震わせ勢いよく振り返る。と、そこには腕に風紀と書かれた腕章をつけた二人の上級生がいた。

「何でしょうか……?」

状況が分からず面喰っているフリをすれば二人は駄目だ、と呆れた顔をした。

「今此処に案山子が来ただろう、どこへやった?」
「はい? かかし?」

今度は本当に面喰った。なんだかかしって、忍者か?

「お面を被った怪しいやつが来ただろう!?」
「あ、あの猿みたいなのですか!」
「そうだ! そいつはどこへ行った!!」

大声で怒鳴られ理不尽さを感じつつ怯えた様子で窓の方を見れば風紀委員は盛大に舌打ちした。

「何故捕まえなかった!!」
「え……いや、えっと。何ですか?」

半泣きのような表情で聞けば二人は完全に諦めた顔をしため息をついた。
どうやら上手く騙せているらしい。さすが俺、田中に勧誘されていただけはある。

「案山子はOZだ。OZは非公認組織で風紀委員が追っている。そのくらい知っておけ!」
「お、OZって……あのっ!? 学園内都市伝説じゃなくて実在するんですか!?」
「お前も見ただろう!! 変な仮面を被った生徒はOZだ。今度見つけたら捕まえるか無理なら風紀に連絡しろ。一応掲示板や報道の機関誌でアナウンスしているんだがなぁ……?」
「あ……すみません」

しっかり読んだことありませんでした、と小声で言えばまたため息を漏らされた。
更に何か言いつのろうとする上級生にもう一人の黙っていた方が口を出した。

「もういいだろう。この子も悪気があったワケじゃないんだ。ソレに、目の前に突然、翁の能面を付けた奴が現れたら怖いだろう。分かっていたとしても危険人物が現れたら逃げる方が先決だ。今回は案山子だから良かったもののコレがライオンだったらこの子の方が危なかったんだ」
「……分かったよ。とにかく、そこの……1年、だよな? 今度お面をつけた怪しい奴を見付けたら風紀に連絡しろ。分かったな!」

それだけ言い、荒々しい口調の方が携帯端末を取り出した。

「もしもし、案山子は取り逃がしました。……すみません、また図書館の窓から裏の雑木林の方に逃げたようです。……はい、わかりました」
「何だって?」
「もう追わなくていいだとさ。ったく、やってらんねぇぜ。……あ」

ポケットに携帯をねじ込むと風紀委員その1はふと思い出しように俺の方を見た。

「おい、お前」
「はい……?」
「さっきは捕まえろとか言ったが、案山子……さっき此処に来た奴とおかめの面の時だけにしろ。鬼と狐に出会ったら、逃げろ」
「あ……はい」

よく分からずにまぬけな返事をしたが、風紀委員の二人はソレを聞くと踵を返し部屋から出て行った。
二人の姿が完全に見えなくなってから俺はカウンターに向かって声をかけた。

「風紀委員は行っちゃいましたよー」

それから少しして、カタンと音を立ててロッカーが開かれお面をしたままの生徒が恐る恐る出てきた。

「はじめまして、案山子さん?」

そう声を掛ければお面を被っているので定かではないが彼は驚いた様に俺を真っ直ぐ見たのだった。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...