貞操逆転国の亡命代行

空の小説マン

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第十八話 決着

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互いに睨み合うウルフとゾリド。

両者の間に、静寂が宿る刹那、
瞬時にボウガンを構えたゾリドは、照準をウルフに合わせようとした。
すかさずウルフは、ゾリドに向かって、剣を投擲し、
彼の持つボウガンに激突させ、遠くの地面に落下させた。

近距離まで詰めたウルフは、ナイフを取り出し、ゾリドに向かって、刃を差し向けた。
寸前で攻撃を躱す彼に対し、ウルフはナイフの向きを横に変え、勢いよく刃を薙ぎ払う。

瞬時に、屈んで避けるゾリドは、ウルフの腹部に、拳を素早く放つも、
反応したウルフは、手首を掴み上げ、ゾリドの腕にナイフを突き刺した。
腕から血が流れる中、ゾリドは思い切り、ウルフの胴を蹴飛ばし、彼から距離を離す。

するとゾリドは、掌から魔法を放ち、次々と魔物を生成した。

魔物の群れを前に、ウルフは勢いよく接近すると、
先ほど投げて、弾き飛ばされた剣が、空から降ってくるのを視認し、
掴み取って魔物に、刃を振り下ろした。

真っ二つになった敵の奥にいる魔物を、ウルフは刺突で仕留めると、
引き抜いた勢いを活かし、別の魔物を、ナイフと共に剣で斬り裂いた。

瞬時に、三体の魔物を撃破したウルフは、残りの魔物達を見て、
闘志を燃やし、剣を構える。

そんな彼を見てゾリドは、高らかに笑ってみせた。
「無駄だ!グルマドで施した、俺の体内の魔導回路が動く限り、
魔物達が尽きることはない!」

数多もの魔物が襲いかかるも、ウルフは、剣を振るい抵抗する。

ウルフの薙ぎ払った刀身が、魔物の体を斬り裂き、
迫りくる別の魔物の頭部を、彼は剣先を差し向け、急所を突き刺す。

止むことなく襲いかかる魔物に、ウルフは、ナイフを突き立て、
動きを止めた直後、剣で一刀両断する。

連戦で息の上がるウルフへ、ゾリドは、嘲笑うかのように言った。
「まだまだ続くか?ウルフ?俺が魔法を使う限り、魔物の群れは、底が尽きることがない!
果たしていつまで持つかなぁ!!」
ウルフは、必死に剣を薙ぎ払い、魔物達を次々と撃破していく。
しかし次第に、体力を削られ、彼の呼吸が乱れていくのが見て取れた。

場に魔物が少なくなり、ゾリドは、新たに魔物を生成しようとした。

その時、彼は謎の違和感を覚えた。

魔法を放とうとしても、体内の魔導回路が反応せず、魔物が生成出来ないのだ。

怪訝な顔をするゾリドが、疑問を抱くと、ウルフは呼吸を整えながら、考察した。
「魔法を使うには、魔力を消費する。
俺が魔物と戦い、体力を消耗させるのと同じく、
お前も魔物を生み出して、魔力を消耗しているなら、いずれ底を尽きるはずだ!」
ウルフの言葉を聞き、ゾリドは、冷や汗を垂らす。
「ば、バカな!魔力が尽きるだと!?
魔力配分を考えて、場に魔物を生み出していたはず...」

するとウルフは、視線を鋭く光らせ、ゾリドに告げた。
「この場以外に、校舎にも魔物を召喚しているだろう。
お前は、校舎に魔物が居なくなり次第、補充するように、新たな魔物を生み出していた。
ならば、校舎にいるクロミネとベティが、次々と魔物を撃破していれば、
お前の魔力は、次第に枯渇せざるを得ない!」

ウルフは、剣先を鋭く向け、ゾリドに対して、冷たい視線を送りつけた。

「魔力が底を尽き、魔物が居なくなった今、
ゾリド、お前との肩を付ける」

緊迫感を漂わせる空気を破るように、ウルフは剣を手に、ゾリドへ肉薄した。
振り上げられた刃を、紙一重で回避したゾリド。
すかさずウルフは、咄嗟に蹴りを放ち、彼の腹部を、思い切り蹴飛ばした。
後方の地面に転がるゾリドは、地面に落ちたボウガンに手を伸ばすも、
ウルフは、迷わずナイフを投げつけ、ボウガンを拾おうとする彼の手に突き刺した。

「ぐああ...!」
悲痛な声を上げるゾリドに、剣を握るウルフは、静かに口を開いた。
「もう終わりだ、ゾリド」
しかしゾリドは諦めず、手に刺さったナイフを引き抜くと、手から血を流しながら、
彼はナイフを振り上げ、ウルフに突進した。

迫りくる敵を前に、ウルフは剣を、全力で振り抜くと、
ゾリドの握るナイフを、地面に叩き落とした。

武器の無くなった彼に、ウルフは視線を向けると、
次の瞬間、ゾリドは拳を、ウルフの顔面に打ち付けた。
武器を無くしても尚、立ち向かってくる彼は、すかさず、頭突きを叩き込むと、
ウルフの手に握られた剣を、膝で蹴り上げた。

素手になったウルフは、ゾリドの放つ拳を受け止め、反撃の拳を頭部に叩き込む。

仰け反るゾリドは、何とか持ちこたえ、意識を繋ぎ止めるも、
彼の片腕は、ナイフの刺し傷で赤く染まり、片腕のみで向かってくるゾリドを、
ウルフは関節を抑え、足をかけ、地面に投げ飛ばした。

ウルフの足元に倒れ込むゾリドは、ゆっくりと立ち上がり、彼に向かって、言葉を吐いた。
「ま、まだだ...まだ俺は、負けちゃいねえ...!」
拳を固めるゾリドと向かい合い、ウルフも素手で迎え撃つ。

ゾリドが勢いよく放った拳は、ウルフの顔を寸前で掠め、
攻撃を躱したウルフは、反撃の拳を、ゾリドの顎に激突させた。

気絶する程のカウンターを食らい、
ゾリドは、後方の地面に倒れ込んだ。

意識を朦朧とさせるゾリドに対し、剣を拾ったウルフは、トドメの一撃を刺そうとする。
倒れた自身を見下ろす勝者を前に、ゾリドは、高らかに笑ってみせた。
「は、はっはっはっ...!まさかこの俺が、負けるなんてな...
大したもんだよ、ウルフ」

彼の執念に打ち勝ったウルフは、地面に背を預けるゾリドを見て、
寂しそうな瞳を浮かべ、一つ質問をした。
「ゾリド、最後に一つ聞きたい。
武器を手放しても、魔力が尽きても、腕から血を流しても、
諦めること無く、相手に立ち向かう執念。
そんな執念を持つお前が、他国を騙し、建物に火を放ち、人に恨まれてまで、
何故、グルマドに加担するのか、本当の理由を教えてくれ。
軍人としての忠義か?」

ウルフの問いに、ゾリドは、静かな瞳で答えた。
「そんなものじゃない。
俺はな、ルィフメー王国出身なんだよ」

衝撃の事実を聞き、驚愕するウルフに対し、ゾリドは話を続けた。
「ルィフメー王国の女尊男卑社会は、絶対だった。
男である俺は、奴隷のように扱われ、魔法を使う女達に、ずっと蔑まれてきた。
このまま生きていても、希望なんて生まれない。
そう思った矢先に、俺はグルマド国と出会ったんだ」

ゾリドは口角を上げながら、ウルフに言葉を送る。
「グルマド国の力があれば、俺は故郷を変えられると思った。
先進的な魔法科学と技術力で、ルィフメー王国を革新出来ると。
だが王国は、古い考えを捨てる気がなく、一生、男を奴隷にする道を選んだ。
だから一度、国を壊し、新たに作り上げる必要があったんだ!」
ゾリドは話を終えると、見下ろすウルフに、薄暗い表情を見せた。
「だが、その野望も既に潰えた。
俺の負けだ、ウルフ。
一思いにやってくれ」
するとウルフは、剣を振り上げ、ゾリドに深刻な顔で告げた。
「お前の信念は、しかと俺の記憶の中に、刻んでおこう。
信念を胸に戦ったお前に、敬意を表し、
一瞬も苦しませないと、約束しよう」
刃を掲げる彼へ、ゾリドは礼を述べた。
「フッ、ありがとよ。ニカルクアのウルフ」
振り下ろされた刀身は、ゾリドの意識を断ち切った。
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