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湯船に足を入れると、思っていたよりもやわらかい熱が肌を包んだ。
「……あ、ちょうどいい」
思わず声が漏れる。
肩までゆっくり沈むと、さっきまで体に残っていた緊張が、湯の中に溶けていくみたいだった。
蓮も向かいに腰を下ろし、短く息を吐く。
「はあ……生き返る」
湯面がわずかに揺れて、湯気がふたりの間を曖昧にする。
外はもうすっかり夕方で、空の色が少しずつ深くなっていくのが見えた。
しばらく、言葉はなかった。
ただ、湯の音と、遠くで風が木を揺らす気配だけ。
「……こういうの、久しぶりかも」
先に口を開いたのは、蓮だった。
「なにが?」
「何もしない時間」
少し考えるようにしてから、続ける。
「仕事とか、人の目とか、次の予定とか……全部置いてきた感じ」
私は湯の中で、膝を抱えるようにして頷いた。
「わかる。頭が静かになる」
「来る前まで、いろいろ考えてたのに」
「なに考えてたの?」
「……内緒」
そう言うと、蓮が小さく笑った。
「そっか」
それ以上、踏み込まない。
その距離感が、今は心地よかった。
湯気の向こうで、蓮が少しだけこちらを見る。
「まどか、さ」
「うん?」
「こうやって一緒にいられるの、嬉しいよ」
飾り気のない声だった。
大げさでもなく、軽すぎもしない。
私は一瞬、返す言葉を探してから、正直に言った。
「……私も」
「最初は、正直ちょっと緊張してたけど」
「今は?」
「今は……落ち着いてる」
そう答えると、蓮は安心したように息を吐いた。
「よかった」
視線が絡み合い、お互い唇が重なった。
また、静けさが戻る。
でも今度は、さっきよりも少しだけ柔らかい沈黙だった。
湯船の縁に肘を乗せて、空を見上げる。
薄紫から紺色へと変わっていく空に、最初の星が滲むように浮かんでいた。
「……ね」
「ん?」
「この時間、一生忘れない」
蓮はすぐに答えず、湯の中で小さく頷いた。
「俺も忘れないよ」
その言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなる。
湯は変わらず静かで、
世界は、ここから遠く離れているようだった。
(多分私……今世界で一番幸せ)
私たちはただ、同じ湯に浸かりながら、
何も急がず、同じ時間を過ごしていた。
「そろそろあがろうか」
蓮の声に促されて立ち上がると、クラッとめまいがしてよろめいた。すかさず蓮が腕を回して支えてくれる。
「大丈夫?」
「うん……ちょっとのぼせちゃったみたい」
「しょうがないなあ」
そう言うと、蓮は私をそっと抱き上げ、お姫様抱っこにした。
「ちょっと! 私、歩けるよ」
「いいからいいから、お姫様」
茶化すように笑う声に、少し安心して思わず笑みが漏れる。
脱衣場に戻ると、蓮は丁寧にタオルで私の体を拭き、浴衣を優しく着せてくれた。
「こんなに優しくされたら……現実に戻れなくなる」
「今この瞬間が、現実だろ」
蓮はそう言うと、柔らかく唇を重ねてくる。
「ほら、水飲んで」
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのボトルを差し出す。
「ありがとう」
ボトルのキャップを開けて口に含むと、冷たい水が喉を通り、全身にじんわりと染み渡る。少し体が軽くなった気がした。
「夕食は部屋に運んでくれるから、それまで少し横になる?」
「至れり尽くせりだね」
「今日はそういう日」
蓮はそっと私の髪を撫でた。
ベッドに横になると、蓮が横に滑り込んできた。
「ベッド2つあるのに……」
「別々で寝たい?」
「やだ」
お互い目があって、同時にふふっと笑う。
引き寄せられるように、唇が重なった。
「あ……」
蓮の指が、ショーツの中に入り込み中を搔き回す。
蜜口から愛液が溢れ、新品のショーツを汚していくのが分かった。
「さっきイかされたから……お返し」
「もう」
蓮は赤いショーツを脱がせ、自分のボクサーパンツも脱いだ。
はだけた浴衣の隙間からペニスが立ち上がっていた。
「夕食まで……ちょっとだけ……」
「浴衣姿のまどか……可愛くて我慢出来ない」
浴衣の裾をはだけさせ、蓮のものがズブリと私を貫いた。
「あんっっ!」
「はあっ……まどか……いい匂い……」
リズミカルに抜き差しを繰り返していく蓮。
「あっああっ蓮っ!すごいっ」
身体が暖まっているせいだろうか。
いつもより蓮のものが張り詰めて大きく感じる。
「ずっと舞台中もっ……我慢してたからっ……」
蓮が堪らないといった表情で肉杭を打ち付ける。
「今夜も……明日もいっぱいしよっ……」
「うんっ……」
「はあっ……ィきそ……」
「出して、蓮のいっぱい……」
「そんな事言われるともう……うっ……」
蓮の下半身が爆発し、私の中が熱いものでいっぱいになった。
「……まどか」
低く名前を呼ばれて見上げると、蓮の目がまだ熱を帯びていた。
指先で頬に触れられ、そのまま額に、そっと口づけられる。
「可愛すぎだろ」
囁くような声に、胸がきゅっと縮まった、そのとき——
——コンコン
扉の向こうから、控えめなノック音。
「お食事をお持ちしました」
一瞬、時間が止まったみたいに、私たちは顔を見合わせる。
「……っ」
「やば」
小声で言い合って、同時に我に返った。
「す、すみません! ちょっと待って下さい!」
私が慌てて応じる。
急いで帯を直し、乱れた襟元を押さえる。
蓮も浴衣を整えながら、ふっと苦笑した。
「タイミング、完璧すぎない?」
「……うん」
まだ熱の残る空気を、無理やり落ち着かせるみたいに、深呼吸する。
扉が開くと、仲居さんが丁寧に食事を並べていく。
その所作の静かさが、さっきまでの出来事を夢だったみたいに遠ざけていった。
でも、並んで座る私たちの指先は、ほんのすこし触れたままだった。
「……あ、ちょうどいい」
思わず声が漏れる。
肩までゆっくり沈むと、さっきまで体に残っていた緊張が、湯の中に溶けていくみたいだった。
蓮も向かいに腰を下ろし、短く息を吐く。
「はあ……生き返る」
湯面がわずかに揺れて、湯気がふたりの間を曖昧にする。
外はもうすっかり夕方で、空の色が少しずつ深くなっていくのが見えた。
しばらく、言葉はなかった。
ただ、湯の音と、遠くで風が木を揺らす気配だけ。
「……こういうの、久しぶりかも」
先に口を開いたのは、蓮だった。
「なにが?」
「何もしない時間」
少し考えるようにしてから、続ける。
「仕事とか、人の目とか、次の予定とか……全部置いてきた感じ」
私は湯の中で、膝を抱えるようにして頷いた。
「わかる。頭が静かになる」
「来る前まで、いろいろ考えてたのに」
「なに考えてたの?」
「……内緒」
そう言うと、蓮が小さく笑った。
「そっか」
それ以上、踏み込まない。
その距離感が、今は心地よかった。
湯気の向こうで、蓮が少しだけこちらを見る。
「まどか、さ」
「うん?」
「こうやって一緒にいられるの、嬉しいよ」
飾り気のない声だった。
大げさでもなく、軽すぎもしない。
私は一瞬、返す言葉を探してから、正直に言った。
「……私も」
「最初は、正直ちょっと緊張してたけど」
「今は?」
「今は……落ち着いてる」
そう答えると、蓮は安心したように息を吐いた。
「よかった」
視線が絡み合い、お互い唇が重なった。
また、静けさが戻る。
でも今度は、さっきよりも少しだけ柔らかい沈黙だった。
湯船の縁に肘を乗せて、空を見上げる。
薄紫から紺色へと変わっていく空に、最初の星が滲むように浮かんでいた。
「……ね」
「ん?」
「この時間、一生忘れない」
蓮はすぐに答えず、湯の中で小さく頷いた。
「俺も忘れないよ」
その言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなる。
湯は変わらず静かで、
世界は、ここから遠く離れているようだった。
(多分私……今世界で一番幸せ)
私たちはただ、同じ湯に浸かりながら、
何も急がず、同じ時間を過ごしていた。
「そろそろあがろうか」
蓮の声に促されて立ち上がると、クラッとめまいがしてよろめいた。すかさず蓮が腕を回して支えてくれる。
「大丈夫?」
「うん……ちょっとのぼせちゃったみたい」
「しょうがないなあ」
そう言うと、蓮は私をそっと抱き上げ、お姫様抱っこにした。
「ちょっと! 私、歩けるよ」
「いいからいいから、お姫様」
茶化すように笑う声に、少し安心して思わず笑みが漏れる。
脱衣場に戻ると、蓮は丁寧にタオルで私の体を拭き、浴衣を優しく着せてくれた。
「こんなに優しくされたら……現実に戻れなくなる」
「今この瞬間が、現実だろ」
蓮はそう言うと、柔らかく唇を重ねてくる。
「ほら、水飲んで」
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのボトルを差し出す。
「ありがとう」
ボトルのキャップを開けて口に含むと、冷たい水が喉を通り、全身にじんわりと染み渡る。少し体が軽くなった気がした。
「夕食は部屋に運んでくれるから、それまで少し横になる?」
「至れり尽くせりだね」
「今日はそういう日」
蓮はそっと私の髪を撫でた。
ベッドに横になると、蓮が横に滑り込んできた。
「ベッド2つあるのに……」
「別々で寝たい?」
「やだ」
お互い目があって、同時にふふっと笑う。
引き寄せられるように、唇が重なった。
「あ……」
蓮の指が、ショーツの中に入り込み中を搔き回す。
蜜口から愛液が溢れ、新品のショーツを汚していくのが分かった。
「さっきイかされたから……お返し」
「もう」
蓮は赤いショーツを脱がせ、自分のボクサーパンツも脱いだ。
はだけた浴衣の隙間からペニスが立ち上がっていた。
「夕食まで……ちょっとだけ……」
「浴衣姿のまどか……可愛くて我慢出来ない」
浴衣の裾をはだけさせ、蓮のものがズブリと私を貫いた。
「あんっっ!」
「はあっ……まどか……いい匂い……」
リズミカルに抜き差しを繰り返していく蓮。
「あっああっ蓮っ!すごいっ」
身体が暖まっているせいだろうか。
いつもより蓮のものが張り詰めて大きく感じる。
「ずっと舞台中もっ……我慢してたからっ……」
蓮が堪らないといった表情で肉杭を打ち付ける。
「今夜も……明日もいっぱいしよっ……」
「うんっ……」
「はあっ……ィきそ……」
「出して、蓮のいっぱい……」
「そんな事言われるともう……うっ……」
蓮の下半身が爆発し、私の中が熱いものでいっぱいになった。
「……まどか」
低く名前を呼ばれて見上げると、蓮の目がまだ熱を帯びていた。
指先で頬に触れられ、そのまま額に、そっと口づけられる。
「可愛すぎだろ」
囁くような声に、胸がきゅっと縮まった、そのとき——
——コンコン
扉の向こうから、控えめなノック音。
「お食事をお持ちしました」
一瞬、時間が止まったみたいに、私たちは顔を見合わせる。
「……っ」
「やば」
小声で言い合って、同時に我に返った。
「す、すみません! ちょっと待って下さい!」
私が慌てて応じる。
急いで帯を直し、乱れた襟元を押さえる。
蓮も浴衣を整えながら、ふっと苦笑した。
「タイミング、完璧すぎない?」
「……うん」
まだ熱の残る空気を、無理やり落ち着かせるみたいに、深呼吸する。
扉が開くと、仲居さんが丁寧に食事を並べていく。
その所作の静かさが、さっきまでの出来事を夢だったみたいに遠ざけていった。
でも、並んで座る私たちの指先は、ほんのすこし触れたままだった。
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