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第三章前編『おいでませ!竜人の世界!』
関話 空間魔法の始まり
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『空間魔法の始まり』
著者 ディア・ダーボー
保管場所 世界識別番号380351の231・時空の狭間図書館
昔々、とある領地に住んでいる美しい乙女が居ました。
その乙女は貴族であり、もうすぐ婚約者を探さねばならぬ時期でした。
しかし、乙女はそれを拒んだ。
何故ならもう、好いている人が居るからだ。
その相手は決して美しいとも、格好が良いとも言えず、日々汗にまみれながら必死に働いている下働きの青年でした。
乙女がその少年を初めて見つけたのは一昨年の春。
領地視察の帰り道、馬の体調が悪くなり、一度付近の村へと寄り、休む事になった。
領主が住んでいる街からは、とても遠い村なので、この村には滅多に貴族が来なかった。
なので、物珍しい人を見つけた様な眼差しで乙女は大勢の人に見られた。
その夜、乙女は眠れなかった。
昼間の村人の様子を思い出してしまったのだ。
私に何かあるのだろうか。 私は何か悪い事をしてしまったのだろうか。
そう考えると急に怖くなり、段々と眠れなくなっていったのだ。
そしてその考えを振り払う為に、気分転換として一度外に出た。
外は夜風が涼しく、星々が綺麗に輝いていた。
乙女はそれを、十分程眺めると、宿へ戻ろうと振り返った。
その振り返った先には謎の真っ黒な男が居て、短剣を振り上げている最中だった。
乙女は驚いて、後ろ向きに転けたが、そのお陰で短剣での一撃をかわす事ができた。
しかし、男は取り乱しもせず、乙女に向かって再び短剣を構える。
乙女の顔を目掛けて、短剣が空気を切り裂きながら近付いてくる。
乙女は怖くなり、目を瞑った。
そのまま数秒間じっとしていたが、乙女は何も衝撃を受けず、それ所か何の傷も受けなかった。
乙女が恐る恐る目を開けると、倒れ込んだ男と、ピッチフォークを持った青年が居て、男の腹からは血が流れていた。
これが乙女と青年の出会いだった。
それから一年の領地視察の時、乙女はその村へと再び訪れた。
村は相変わらず寂れており、村人達が汗水垂らして働いていて、あの青年の姿も見えた。
乙女はすぐにでも青年の所へと行きたかったが、領主の娘としての仕事があるので、村長の家へと渋々向かった。
村長の家では、村の予算が厳しくなったので、配給される予算を増やして欲しい事と、それでも厳しいので村の人を一人、引き取ってくれと言う相談だった。
村の予算を増やすのはすんなり話が通ったが、村の人を引き取る話は難航した。
それはそうだろう。 なぜならそんな前例が無い事、すんなりと承認する訳には行かないからだ。
しかし、これを断ると村の人を売りに出してしまう事になる。
売りに出された人は奴隷として、何者かの元で働かされるのだ。
それを危惧した乙女は、渋々了承した。
そのやってくる者が何者かも分からずに。
そして結局、その日は青年と話す事は出来なかった。
それから一週間後、ついに領主の住む街へと村人がやってきた。
その村人は、領主の館で下働きをする事になり、今日はその為の支度の日だった。
その日、乙女が窓から庭をボーッと見ていると、いきなり庭に青年が現れた。
乙女は寝惚けていると思い、目を擦ったが、その青年は消えなかった。
そう、領主の館にやってきた村人は青年だったのだ。
乙女はそれを見るとすぐに飛び出して行き、青年に話しかけた。
青年はその行動に凄く驚いたが、相手が領主の娘と言う事もあり、落ち着いた口調で話してくれた。
それから毎日、乙女は青年と話した。
青年は邪険にせずに話を聞いてくれた為、乙女はとても話しやすかった。
青年は驚いた時、素直に驚くので、乙女はその仕草を好いた。
毎日、領地の驚く話を持ってきては聞かせ、逆に青年からは下働き中にあった新鮮な事を聞かされた。
青年の話は令嬢として生きていると、想像もつかない様な話ばかりで、しかもそれを面白おかしく話していたので、乙女はついつい笑ってしまっていた。
そんな乙女の仕草を青年は好いていた。
そんな日常が続き、十一ヶ月が経った。
もう年頃なので婚約者を探さねばならない中、とある侯爵の息子が話題に上がった。
そこの息子から、婚約を希望する手紙を出され、乙女は溜め息を着いた。
それも仕方が無いだろう。
乙女父の位は伯爵。 つまり侯爵には逆らえない。
それに今の時代は女性の位が低く、婚約と言ったら嫁ぐしか道は無いのだった。
つまりそれは青年ともう会えなくなると言う事になるのだ。
乙女は悲しんだ。
その話を聞いた青年は、乙女にこう言ったのだった。
『大丈夫です。 居る場所は変わりましても、身体の位置が遠くなりましても、心はずっとお側に居ます』
その言葉で乙女は覚悟を決めたのだった。
そしてその一ヶ月後、乙女はその侯爵の息子の所へと嫁いで行った。
そこの息子は、世間一般で言う所の我が儘っ子で、その父は親バカであった。
乙女は比較的容姿が良かったので、あまり酷い事はされなかったが、それでも口答え等をすると問答無用で殴られた。
しかし、乙女はそれを甘んじて受け入れ、何度殴られても心が折れる事は無かった。
息子は、その様子を見てさらに不機嫌になった。
そして父に頼み、その折れない心の源を探してもらったのだった。
心さえ折れば、後は自分の好きな様に変える事ができる。 そう信じて。
それからさらに三ヶ月後、息子は、あの青年の事を知った。
息子はすぐにその青年を連れて来させた。
その連れてくる様子は乱暴その物だったが、青年は乙女の迷惑になると思い、静かにしていた。
それが気に食わなかったのか、連れてくる筈の兵士が青年に暴力を振るい始めた。
そして侯爵の領地に着いた時にはボロボロだった。
そんな青年が来ているとも知らされて居ない乙女は、ある日、息子に地下室に来る様に言われた。
勿論、一度断ったが、何故か息子が殴って来ないので、少々怪しみながら着いていった。
地下に下る石造りの階段があり、そこを抜けると地下牢になっていた。
誰も居なかったが、そこ着いていた血の跡で、誰かが悲惨な扱いを受けていたのは容易にわかった。
そしてその地下牢を抜けた先にそれは居た。
処刑台に張り付けにされ、その身体は所々の皮膚が剥がれ、顔に至っては原型が分からなくなる程に殴られた"青年"だった。
それを見て乙女は駆け寄ろうとした。
しかし、付近の兵士に取り押さえられて、床に這いつくばる事になった。
乙女は抵抗したが、兵士に何か薬を飲まされると、身体の力だけが抜け、質素な椅子に座らされた。
乙女が心の中で嘆く中、処刑用の剣を持った大男が、ゆっくりと青年に近寄っていく。
乙女は必死になって近寄ろうとしたが、身体に力が入らない。
大男が剣を振り上げている様子がスローに見える中、その剣が青年の首に向かって振り下ろされた。
青年の首が乙女の所まで転がっていき、止まった。
その首は、乙女に心配させたくなかったのか、小さな笑みを浮かべていた。
乙女が呆然としている中、息子がその首を踏み潰した。
色々な物が周りに飛び散り、当然、乙女にもそれは振り掛かった。
その時、乙女は思った。 人間とは何と醜いのだろうと。
そして乙女は願った。 またあの青年に会いたいと。
乙女は願った。 この愚か者に天の裁きをと。
その願いは強い思念波となり、地面や壁を問わず、辺り一面に広がった。
その思念波に答える様に、まだその時代ではとても薄かった魔力が渦を巻く様に乙女に吸い寄せられていく。
その魔力は色を持っていた。
この世と違う世界を繋ぐ様な空色を。
こんな現象はこの時代ではあり得ない。
まだ魔法は限られた物のみが使え、使えても今で言う生活魔法程度だった。
なので人々はこの魔力に驚き、畏怖した。
一方侯爵の息子は逃げようとしていた。
しかし、そこに居た乙女以外の人は皆、突如宙に浮き、謎の笑い声を聞いた。
その笑い声の主である"精霊"は、それぞれ赤、緑、白、青、黄、黒といった色をしていた。
そして、渦が消え、魔力が乙女の中に溜まりきると、精霊達と乙女は歌い始めた。
『揺れし炎は幻想の色彩 流れる時空は現実の土台 それらを混ぜし歌は流れる この歌は天に捧げる』
赤い精霊と乙女がそう歌うと、乙女の身体の中に赤い精霊が入り込み、乙女の圧が増した。
『風は空のほんの一欠片 時には巨大となり牙を剥く しかし時には恵みを運ぶ そう、まるで地からの祝福の様に』
緑の精霊が乙女の身体に入り込んだ。
『全ての物には光がいる なので私は光を無くす 私が愛する全てが消えた この世界から抜け出すために』
光の精霊が入り込んだ。
『そこが深い水の底でも 私は見失わずに進むだろう 私が恋い焦がれたあの人の元へ 私はこの身を使って試して見せる』
青い精霊が入り込んだ。
『大地は大きな空の土台 巨大な心で全てを包み 全ての魂の味方だった なので私を手伝って』
黄色い精霊が入り込んだ。
『その裏には闇が眠るが その闇が悪とは言いきれない もしも善き闇だとしたら 何処か遠い星空へと連れてって』
黒い精霊が入り込んだ。
六色の精霊が入り込むと、乙女の中に入り込んでいた魔力が再び表へと出て、乙女を中心に渦を巻いた。
そしてその渦は天井を突き破り、青く綺麗な空が顔を覗かせた。
その渦がが止んだ途端に"その出来事"は起こった。
空が急にひび割れ、裂けていく。
その内側からは謎の力が働いており、侯爵の息子やその父、兵士や裏路地で恫喝をしていた人々などが吸い寄せられていった。
普通の領民は自分が吸い寄せられないとわかると、吸い寄せられている者を嘲笑った。
そしてその吸引が終わると空の裂け目は閉じていき、何事も無い平穏な空へと戻った。
領民達は先程までの出来事を笑いの種にしたり、楽しんだりしていた。
その最中、それは起こった。
空が歪み、軋むような音が響き渡った跡………空が爆ぜた。
その爆発はその街を完全に消し飛ばし、瓦礫すら残さなかったと言う。
そこに残っていたのは、楽し気に宙を舞う六人の精霊達と、その中心に居る"空色の精霊"だった。
これが後に『空間魔法』と呼ばれる物の始まりなのだった。
著者 ディア・ダーボー
保管場所 世界識別番号380351の231・時空の狭間図書館
昔々、とある領地に住んでいる美しい乙女が居ました。
その乙女は貴族であり、もうすぐ婚約者を探さねばならぬ時期でした。
しかし、乙女はそれを拒んだ。
何故ならもう、好いている人が居るからだ。
その相手は決して美しいとも、格好が良いとも言えず、日々汗にまみれながら必死に働いている下働きの青年でした。
乙女がその少年を初めて見つけたのは一昨年の春。
領地視察の帰り道、馬の体調が悪くなり、一度付近の村へと寄り、休む事になった。
領主が住んでいる街からは、とても遠い村なので、この村には滅多に貴族が来なかった。
なので、物珍しい人を見つけた様な眼差しで乙女は大勢の人に見られた。
その夜、乙女は眠れなかった。
昼間の村人の様子を思い出してしまったのだ。
私に何かあるのだろうか。 私は何か悪い事をしてしまったのだろうか。
そう考えると急に怖くなり、段々と眠れなくなっていったのだ。
そしてその考えを振り払う為に、気分転換として一度外に出た。
外は夜風が涼しく、星々が綺麗に輝いていた。
乙女はそれを、十分程眺めると、宿へ戻ろうと振り返った。
その振り返った先には謎の真っ黒な男が居て、短剣を振り上げている最中だった。
乙女は驚いて、後ろ向きに転けたが、そのお陰で短剣での一撃をかわす事ができた。
しかし、男は取り乱しもせず、乙女に向かって再び短剣を構える。
乙女の顔を目掛けて、短剣が空気を切り裂きながら近付いてくる。
乙女は怖くなり、目を瞑った。
そのまま数秒間じっとしていたが、乙女は何も衝撃を受けず、それ所か何の傷も受けなかった。
乙女が恐る恐る目を開けると、倒れ込んだ男と、ピッチフォークを持った青年が居て、男の腹からは血が流れていた。
これが乙女と青年の出会いだった。
それから一年の領地視察の時、乙女はその村へと再び訪れた。
村は相変わらず寂れており、村人達が汗水垂らして働いていて、あの青年の姿も見えた。
乙女はすぐにでも青年の所へと行きたかったが、領主の娘としての仕事があるので、村長の家へと渋々向かった。
村長の家では、村の予算が厳しくなったので、配給される予算を増やして欲しい事と、それでも厳しいので村の人を一人、引き取ってくれと言う相談だった。
村の予算を増やすのはすんなり話が通ったが、村の人を引き取る話は難航した。
それはそうだろう。 なぜならそんな前例が無い事、すんなりと承認する訳には行かないからだ。
しかし、これを断ると村の人を売りに出してしまう事になる。
売りに出された人は奴隷として、何者かの元で働かされるのだ。
それを危惧した乙女は、渋々了承した。
そのやってくる者が何者かも分からずに。
そして結局、その日は青年と話す事は出来なかった。
それから一週間後、ついに領主の住む街へと村人がやってきた。
その村人は、領主の館で下働きをする事になり、今日はその為の支度の日だった。
その日、乙女が窓から庭をボーッと見ていると、いきなり庭に青年が現れた。
乙女は寝惚けていると思い、目を擦ったが、その青年は消えなかった。
そう、領主の館にやってきた村人は青年だったのだ。
乙女はそれを見るとすぐに飛び出して行き、青年に話しかけた。
青年はその行動に凄く驚いたが、相手が領主の娘と言う事もあり、落ち着いた口調で話してくれた。
それから毎日、乙女は青年と話した。
青年は邪険にせずに話を聞いてくれた為、乙女はとても話しやすかった。
青年は驚いた時、素直に驚くので、乙女はその仕草を好いた。
毎日、領地の驚く話を持ってきては聞かせ、逆に青年からは下働き中にあった新鮮な事を聞かされた。
青年の話は令嬢として生きていると、想像もつかない様な話ばかりで、しかもそれを面白おかしく話していたので、乙女はついつい笑ってしまっていた。
そんな乙女の仕草を青年は好いていた。
そんな日常が続き、十一ヶ月が経った。
もう年頃なので婚約者を探さねばならない中、とある侯爵の息子が話題に上がった。
そこの息子から、婚約を希望する手紙を出され、乙女は溜め息を着いた。
それも仕方が無いだろう。
乙女父の位は伯爵。 つまり侯爵には逆らえない。
それに今の時代は女性の位が低く、婚約と言ったら嫁ぐしか道は無いのだった。
つまりそれは青年ともう会えなくなると言う事になるのだ。
乙女は悲しんだ。
その話を聞いた青年は、乙女にこう言ったのだった。
『大丈夫です。 居る場所は変わりましても、身体の位置が遠くなりましても、心はずっとお側に居ます』
その言葉で乙女は覚悟を決めたのだった。
そしてその一ヶ月後、乙女はその侯爵の息子の所へと嫁いで行った。
そこの息子は、世間一般で言う所の我が儘っ子で、その父は親バカであった。
乙女は比較的容姿が良かったので、あまり酷い事はされなかったが、それでも口答え等をすると問答無用で殴られた。
しかし、乙女はそれを甘んじて受け入れ、何度殴られても心が折れる事は無かった。
息子は、その様子を見てさらに不機嫌になった。
そして父に頼み、その折れない心の源を探してもらったのだった。
心さえ折れば、後は自分の好きな様に変える事ができる。 そう信じて。
それからさらに三ヶ月後、息子は、あの青年の事を知った。
息子はすぐにその青年を連れて来させた。
その連れてくる様子は乱暴その物だったが、青年は乙女の迷惑になると思い、静かにしていた。
それが気に食わなかったのか、連れてくる筈の兵士が青年に暴力を振るい始めた。
そして侯爵の領地に着いた時にはボロボロだった。
そんな青年が来ているとも知らされて居ない乙女は、ある日、息子に地下室に来る様に言われた。
勿論、一度断ったが、何故か息子が殴って来ないので、少々怪しみながら着いていった。
地下に下る石造りの階段があり、そこを抜けると地下牢になっていた。
誰も居なかったが、そこ着いていた血の跡で、誰かが悲惨な扱いを受けていたのは容易にわかった。
そしてその地下牢を抜けた先にそれは居た。
処刑台に張り付けにされ、その身体は所々の皮膚が剥がれ、顔に至っては原型が分からなくなる程に殴られた"青年"だった。
それを見て乙女は駆け寄ろうとした。
しかし、付近の兵士に取り押さえられて、床に這いつくばる事になった。
乙女は抵抗したが、兵士に何か薬を飲まされると、身体の力だけが抜け、質素な椅子に座らされた。
乙女が心の中で嘆く中、処刑用の剣を持った大男が、ゆっくりと青年に近寄っていく。
乙女は必死になって近寄ろうとしたが、身体に力が入らない。
大男が剣を振り上げている様子がスローに見える中、その剣が青年の首に向かって振り下ろされた。
青年の首が乙女の所まで転がっていき、止まった。
その首は、乙女に心配させたくなかったのか、小さな笑みを浮かべていた。
乙女が呆然としている中、息子がその首を踏み潰した。
色々な物が周りに飛び散り、当然、乙女にもそれは振り掛かった。
その時、乙女は思った。 人間とは何と醜いのだろうと。
そして乙女は願った。 またあの青年に会いたいと。
乙女は願った。 この愚か者に天の裁きをと。
その願いは強い思念波となり、地面や壁を問わず、辺り一面に広がった。
その思念波に答える様に、まだその時代ではとても薄かった魔力が渦を巻く様に乙女に吸い寄せられていく。
その魔力は色を持っていた。
この世と違う世界を繋ぐ様な空色を。
こんな現象はこの時代ではあり得ない。
まだ魔法は限られた物のみが使え、使えても今で言う生活魔法程度だった。
なので人々はこの魔力に驚き、畏怖した。
一方侯爵の息子は逃げようとしていた。
しかし、そこに居た乙女以外の人は皆、突如宙に浮き、謎の笑い声を聞いた。
その笑い声の主である"精霊"は、それぞれ赤、緑、白、青、黄、黒といった色をしていた。
そして、渦が消え、魔力が乙女の中に溜まりきると、精霊達と乙女は歌い始めた。
『揺れし炎は幻想の色彩 流れる時空は現実の土台 それらを混ぜし歌は流れる この歌は天に捧げる』
赤い精霊と乙女がそう歌うと、乙女の身体の中に赤い精霊が入り込み、乙女の圧が増した。
『風は空のほんの一欠片 時には巨大となり牙を剥く しかし時には恵みを運ぶ そう、まるで地からの祝福の様に』
緑の精霊が乙女の身体に入り込んだ。
『全ての物には光がいる なので私は光を無くす 私が愛する全てが消えた この世界から抜け出すために』
光の精霊が入り込んだ。
『そこが深い水の底でも 私は見失わずに進むだろう 私が恋い焦がれたあの人の元へ 私はこの身を使って試して見せる』
青い精霊が入り込んだ。
『大地は大きな空の土台 巨大な心で全てを包み 全ての魂の味方だった なので私を手伝って』
黄色い精霊が入り込んだ。
『その裏には闇が眠るが その闇が悪とは言いきれない もしも善き闇だとしたら 何処か遠い星空へと連れてって』
黒い精霊が入り込んだ。
六色の精霊が入り込むと、乙女の中に入り込んでいた魔力が再び表へと出て、乙女を中心に渦を巻いた。
そしてその渦は天井を突き破り、青く綺麗な空が顔を覗かせた。
その渦がが止んだ途端に"その出来事"は起こった。
空が急にひび割れ、裂けていく。
その内側からは謎の力が働いており、侯爵の息子やその父、兵士や裏路地で恫喝をしていた人々などが吸い寄せられていった。
普通の領民は自分が吸い寄せられないとわかると、吸い寄せられている者を嘲笑った。
そしてその吸引が終わると空の裂け目は閉じていき、何事も無い平穏な空へと戻った。
領民達は先程までの出来事を笑いの種にしたり、楽しんだりしていた。
その最中、それは起こった。
空が歪み、軋むような音が響き渡った跡………空が爆ぜた。
その爆発はその街を完全に消し飛ばし、瓦礫すら残さなかったと言う。
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