お気楽少女の異世界転移――チートな仲間と旅をする――

敬二 盤

文字の大きさ
131 / 188
第三章後編『やっとついた?アストロデクス王国!』

プロローグ 動き始めた闇

しおりを挟む
「国王様、近頃魔物が凶暴化しているとの報告が相次いでいます」

「うむ………被害は?」

ここはアストロデクス王国首都の中心部にある城の執務室。

そこでは真面目そうな執事と難しそうな顔をしている大柄の男性………国王が向かい合っていた。

「民家が三軒、家畜十五頭ですね………あくまで現在わかっている時点での被害ですので、首都から離れた場所では何十倍もの被害が出ているでしょう」

「………そうか」

国王は悲しげな顔をしてから、机に設置されている魔道具を取り、耳に当てた。

「………またあの方に協力を頼むのですか?」

執事はまだ早いと言うかの様に諌めた。

「………恐らく今回の凶暴化は自然の物では無いだろう、丁度増え始めたタイミングが帝国の勇者召喚の時期と一致しているからな。………そして放置しておけば大きな災厄となる予感がする」

「作用でございますか」

執事は納得して、魔道具の本体に魔石を填めた。

すると魔道具は輝きだし、光の線が国王の持っている魔道具へと繋がった。

『………こんな時にどうしたの? 王様?』

その魔道具からは何故か不機嫌な子供の様な声が聞こてきた。

「少々頼みたい事があってな。 その為に連絡をしたのだが………お取り込み中か?」

『まぁそうだね。その用事は後で聞いてあげるよ。 あと数日でそっちに着くからね?』

王様と執事はそんな軽い感じの発言に驚いた。

二人の予想では、もう少し遅いと思っていたのだ。

『………あっ、そうだ!』

子供の声の主は突如思い付いたかの様に声を上げた。

『ねぇ、君達に質問なんだけどね? 今からすぐにギャラフ領のリバの町に修復金を送るか、乱暴で性格が悪く、横暴なAランク冒険者をボコボコにされる。 どっちの方が良い?』

その言葉を聞いて、二人は察した。

"これ、仲間が絡まれて起こってるな"と。

「………Aランク冒険者は町に必要な存在だが………その町は他にも居たな?」

「えぇ、Sランク冒険者『終演のジャスミン』が拠点としている筈です」

………二人は顔を見合せ、頷いた。

「良いぞ? ボコボコにしてやれ」

「一人の冒険者の為に複数の将来有望な冒険者が被害を受けるなど許せませんからね?」

二人は何故か楽しげな表情をしていた。

『了解♪ それじゃ、用件は今日の夜、一人で直接聞きに来るとするよ。 それじゃあまた今夜!』

子供の声の主がそう言うと、魔道具の輝きが止まった。

「………あそこの町のAランクと言うと………あいつだったな?」

「えぇ、何人もの冒険者を止めさせている、厄介者なので逆にありがたいですね」

そしてこの二人は思った。

"そんな奴があいつの精神攻撃に耐えられるのか?"と。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ジトジトと湿っていて暗い洞窟の中、謎の黒いローブを被った男が血を流しながら魔法陣を書いていた。

ポタポタと流れる血が、ゆっくりと線の形になっていき、少しづつ赤黒く染まっていく。

そして、その男の周りにはおびただしい量の魔法陣が張り巡らされている。

壁や床は勿論、天井や水の中、水の上にまで血で描かれていた。

水の波紋でも崩れる事は無い魔法陣一つ一つからは、謎のオーラが立ち上っている。

「Gugyaaaaa!」

そんな異様な光景の中、突如洞窟の奥から急に巨大な蜥蜴が叫びながら謎の男に向かって行った。

「………」

謎の男はユラリと立ち上がり、近付いてきた蜥蜴の首にある、鱗と鱗の隙間に刃が真っ赤に染まった槍を突き刺した。

「Gugyaa!?」

蜥蜴はその槍が刺さったまま暴れていたが、暫くすると動きが鈍くなり、動かなくなった。

その蜥蜴の死体を男はズルズルと引きずり、近くの魔法陣の上に置いた。

すると魔法陣は黒く輝きだし、紫色の煙を出しながら蜥蜴を取り込んでいった。

その紫色の煙が他の魔法陣に触れた途端、触れられた魔法陣は蜥蜴が取り込まれた魔法陣と同じ様に黒く輝き出し、魔法陣の模様がゆっくりと消えていく。

その消えている場所から、上位魔法文字が浮き上がり、何かを形作っていく。

そして魔法陣が完全に消えると同時に、何かを形作っていた文字は固まる様に圧縮され………"取り込まれた筈の蜥蜴"が作られた。

それを見習うかの様に周りの魔法陣も消えていき、次々と蜥蜴が作られていく。

その様子を謎の男は、喜ぶでもなく、悲しむでもなく、ただボーっと見つめていただけだった。

暫く経って大量の蜥蜴が洞窟の外に出ていった後、男はまた指先をナイフで切って魔法陣を作り始めた。

その様子は淡々としていて冷静そうに見えるが、そうでは無いのだろう。

詳しい事はわからないが、少なくとももう壊れている事は確かなのだった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...