お気楽少女の異世界転移――チートな仲間と旅をする――

敬二 盤

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第三章後編『やっとついた?アストロデクス王国!』

第二十話 押して押されて押し返せ(2)

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ドカァァンッ! という強烈な破裂音と共に奥の壁が粉々に砕け散る。

砕けた壁が細かくなって出来た煙の中に、赤く光る瞳が見えた。

ゆっくりと足音がこちらへ近付いて来る中、不意に煙の中で小さな光が見えた。

「避けて!」

ライトが叫んだその瞬間、煙の中から光線が放たれる。

私達は左右に分散して避けたが、光線によって壁が崩れ、出口が無くなってしまった。

「これを避けるのか………不意打ちのつもりだったんだがな………」

言葉は残念そうだが、口調は全くそうではない。

そんなを出しながら、煙を払った。

赤黒い皮膚、黒くねじ曲がっている角、皮膜が無い背中の羽、見てるだけで不安になってくる容姿。

間違い無い、これは悪魔だ。

「《エリアテレポート》!………あれ? 発動しない!?」

「悪魔はだいたいが《空間把握》スキルを持ってるんだよ………だから空間魔法は使えない」

実穂が皆を連れて逃げようとしたが、魔力が地上に繋げられなくなり霧散した。

「………ラキト、下ろして」

「兄ちゃん………わかった」

ラキトは危ないと言おうとしたが、ライトの真剣な表情を見て壁際に下ろした。

「ったく………人間ってのは変わらねぇなぁ。 自己犠牲なんてただの自己満足でしか無いのによぉ!」

悪魔は両手から光線を放つ。

「《エレメンタルウォール》!」

「《紅蓮 トルネード》!」

実穂は岩の魔力を入れた『エレメンタルウォール』で光線をギリギリ防ぎ、ラキトはその攻撃で光線を押し返した。

「人間にしちゃあ強い方だな」

悪魔は右手を前に出し、炎の渦を正面から受け止めた………のでは無く手元に炎の渦を球として留めた。

「お返しだ」

そして悪魔へ走り出していた美堀へ炎の渦を打ち出した。

「ぐっ!………きゃっ!」

美堀はブレスレットで手元を防御し、受け止めようとしたが、渦が強かったのか、弾き飛ばされた。

そうしてる間に悪魔には数多くの影で出来た刃が迫ってくる。

「邪魔くせぇなぁ」

悪魔がダルそうに指を鳴らすと、悪魔を中心に衝撃波が発生し、刃は打ち消されでクルミの分身も掻き消された。

「ご主人様」

実穂の近くで《影分身》を使用し直したクルミが実穂に声を掛ける。

「私の一人は双子の守護に回ります」

「わかった!」

実穂は次の魔法の為の魔力を集める。

「《エレメンタルウォール》!」

今度は上空から巨大な石の壁が悪魔へと落ちてくる。

悪魔はそれを見向きもせずに光線で砕いた。

しかしそれは悪手だ。

壁の中に仕込まれていた風魔法が破裂し、破片が全て悪魔へとショットガン並の勢いで飛んでいく。

それと同時にクルミの分身二体が影の刃を回転しながら投げ続ける。

「………舐められた物だな」

悪魔は蹲り、力を溜めた。

「ハァァァァッ!」

悪魔が叫びながら胸を張ると同時に物凄いエネルギーが放出され、破片も刃も全て消失した。

「これなら避けられまい」

悪魔は両腕を開き、両側に光線を放った。

クルミの分身はそれを避け、新しい刃を投げようとした。

しかしそれは出来ない。

なぜなら悪魔が回転して、光線を波の様に動かしたからだ。

それに巻き込まれて分身は消滅。

そのまま回転する光線が実穂や双子達に向かって近付いて来る。

「くっ!」

復帰した美堀がビームを止めようと悪魔に掴み掛かるが、悪魔の蹴りによりまた壁に衝突する。

「はぁっ!」

ラキトは籠手を付けた拳で衝撃波を放つが、悪魔の周りの空間が歪んで消えてしまった。

「《エレメンタルウォール》!《エレメンタルウォール》!《エレメンタルウォール》!」

実穂が何重にも壁を作って対抗しようとするが、片っ端から破壊される。

「ほら、抵抗できない気分はどうだ?」

二つの光線が挟み込む様に実穂達に迫る。

実穂は魔力の壁を作って凌ごうとするが一瞬で破壊される。

後ろで双子達が何かを喋っているがもう耳に入って来ない。

「《ウォーターウォール》!《サンドウォール》!《マジックウォール》!」

「さらに絶望してみるか?」

悪魔の光線は実穂達を捕獲する形で止まり、悪魔は両手を前に出した。

その掌にはあり得ない程の魔力が集まっており、それは今にも破裂しそうだった。

「じゃあな、下等生物共人間共

その魔力の塊とも言える巨大な光線が実穂達目掛けて放たれる。

目の前が真っ白な光に包まれた実穂達は、跡形も無く消滅………していなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


実穂達が戦っている中、双子はアイコンタクトで会話していた。

(インカ、大丈夫? 怖くない?)

(インカは大丈夫! ヨウタは?)

(ヨウタも大丈夫!)

一人称が自分の名前の双子は、迫ってくる悪魔の光線を見た。

(………嘘、インカは怖い)

(………ヨウタは怖くなんかない)

インカはそんなヨウタをそっと見た。

その様子は、どう頑張っても強がっている様にしか見えない。

(………インカはね? あの強そうな悪魔が怖いんじゃ無いの)

インカはどこか遠くを見る様な目で悪魔を見つめる。

(昔、ヨウタが虐められてるインカを助けてくれた事があったでしょ? あの時、インカは凄く嬉しかったんだよ)

(妹を助けるのは当たり前、でも何でいきなりそんな話を?)

ヨウタはその話の意味がわからず首を傾げた。

(あの後、虐めてた子達が竜魔法でヨウタに仕返ししようとしてたよね?)

(大人達が止めに来てたけどね)

(その時ね? インカ、怖かったの)

そう心の中で呟くインカは、震えていた。

(インカはその時狙われてなかった、ヨウタが狙われていた。 でもその時、怖くなったの、ヨウタが居なくなっちゃったらどうしようって)

(………)

ヨウタはあの後大泣きしていた妹の姿を思い出した。

(ヨウタがまだ実穂達を完全に信じられないのはわかるよ? でも………それでこの人達を失うのは怖い………)

ヨウタは、俯いているインカの顔を自分へと向かせて心の中で言った。

(………ヨウタもそれはわかる。 信じられないって言っても優しくしてくれたのは事実だもん………でもインカが虐められたらって思うと怖くて………)

インカはヨウタも震えている事に気付いた。

そして震えあっていた二人は、何故か吹き出してしまった。

「ヨウタ、そろそろ私達も成長しなきゃ」

「インカ、ヨウタもそれには賛成するよ」

双子は強大な魔力を手元に集めている悪魔を見つめた。

「インカ達双子に必要なのは怖いって思う事から逃げない事だったね」

「ヨウタは信じるのが怖かった」

「インカは人が傷付くのが怖かった」

二人は手を繋いで、もう片方の手を前に出した。

「でももう大丈夫」

「どんな事が起こっても」

二人の頭から、片方ずつ輝く何かが生える。

ヨウタは右に、インカは左に。

そして手元に赤い光が集まり………

「「二人一緒に居るから!」」

竜を模した炎が迫り来る光線を飲み込んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ぐぁぁぁぁぁっ!」

竜の形をした炎が光線ごと悪魔を飲み込む。

全身を焼かれた悪魔は、なんとか力を解放して炎を消した。

(………二人共………精神世界で見たあの姿は幻覚じゃ無かったんだね)

実穂はその事を思い出し、双子にとある魔法を使った。

「《エアベール》!」

双子に風が纏わり付き、素早く移動できる様になった。

「「実穂! ありがとう!」」

双子は地面を蹴り、手を繋ぎながら悪魔へと走っていく。

「くっ!下等生物人間がぁ!」

悪魔が光線を乱射してくる。

「「《ドラゴンオーラ》!」」

双子の周りに二つの頭がある竜の形をしたオーラが出現し、双子の拳に纏わり付いた。

「インカ!」

「わかった!」

ヨウタはインカと生きを合わせて回転しながら跳び、光線を全て打ち消した。

「やっちゃえ!」

「はぁっ!」

その勢いのまま、ヨウタは悪魔に竜を纏った拳を振るう。

「させるかっ!」

悪魔は手に力を集中させ、その拳に対応した。

「「よっと」」

その勢いを利用して上へと別れながら跳んだ二人は、なぜか目に見えて動きが遅くなっていて、角が無い。 竜のオーラも消えている。

それをチャンスと思ったのか、悪魔が双子目掛けて光線を放つ。

「させないわよ!」

しかしそれはクルミの影によって運ばれていた美堀が足を掴んだ事によって阻止された。

「グワァッ!」

悪魔は投げ技により、空に浮かされ、強烈な蹴りを叩き込まれて宙を舞った。

「「『二対の竜が交わりし時 新たな力が誕生する』!」」

双子は実穂の援助によって手を繋げる距離まで近寄っていた。

角もまた生え、調子を取り戻した双子は詠唱を始めた。

「………行きます、『ラストスキル』!」

《影分身》でまた三人になったクルミは、そう呟いた瞬間消え去った様に見えた。

しかしそれは一瞬の間に移動していただけだ。

その証拠に、悪魔の周りには無数の影の刃と各種投げナイフが浮かんでいた。

「はあっ!」

ラキトの衝撃波が悪魔の羽を破壊する。

「やっちゃえ!」

実穂がそう声を上げた。

「《オールエレメンタルブレス》!」

「《魅惑の俊足 零チャームスピード ブランク》」

その声を引き金に二つの大技が動き出す。

無数の刃が身動きできない悪魔を貫いていく。

さらに各種状態異常、《エクスプロージョン》や《フリーズ》が組み込まれたナイフ等が発動する。

そんな串刺しの悪魔を、竜のブレスを模した魔法が飲み込んでいく。

「くっ! このぉぉぉぉぉっ!」

そんな断末魔を叫びながら悪魔が魔法の中へと消えていく。

そして悪魔を中心とした爆発が起こる。

「《エリアテレポート》!」

悪魔が消えたので空間魔法が使える様になった実穂は、皆を呼び戻した。

「皆! やったね!」

姿が戻ったクルミと角が無くなった双子を抱き締めながら実穂は言う。

「私も混ぜなさいよー」

美堀が実穂共々抱き付く。

そうやって喜ぶ私達に、ライトは衝撃的な事を言う。

「………まだ喜ぶのは早かったみたいだね?」

「え?」

皆と離れて悪魔が埋まった筈の瓦礫を見ると、ソレは居た。

『グルァァァァァァァァッルァ!』

まるでさっきの悪魔を巨大化させて内側から膨張させた様な異形の巨大生物が。

「………第二ラウンドの始まりってやつかな?」

「兄ちゃん、それを言うなら第三ラウンドだ」

ライトとラキトの軽口が、今は少しありがたい。

それ程目の前の巨大生物は、圧倒的な力を持っているのだ。

………異形対実穂達の戦いが、また始まるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ディメン「どうも皆さんこんにちは、あとがき担当のディメンだぜ」

シルフィ「どうも皆さんこんにちは、ライトの代わりのシルフィよ」

ディメン「いやぁ、ヤバイの出ちまったなぁ」

シルフィ「個人的にはそれよりも『ラストスキル』ってのが気になるわね」

ディメン「あれか………あれはな? 基本的には《終焉》と同じなんだ。 文字通り最後の一撃、それのスキルバージョンって感じだな」

シルフィ「それにしては新しいスキルでは無かった様な………」

ディメン「ラストスキルは存続のスキルを超強化する技だ。 そしてラストスキルを使った後は一定時間全スキルが使用不可になる」

シルフィ「………って事はつまり?」

ディメン「もうクルミは活躍できないな」

シルフィ「………どうするのかしら?」

ディメン「まぁそれはまた次回って事で………今回はこの小説を読んでくれてありがとな」

シルフィ「誤字脱字やストーリー矛盾等がありましたらご報告の方をお願いするわね」

ディメン「それでは皆さん」

ディメン&シルフィ「さようなら」」
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