お気楽少女の異世界転移――チートな仲間と旅をする――

敬二 盤

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第三章後編『やっとついた?アストロデクス王国!』

第二十話 押して押されて押し返せ(3)

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『グルァァァァァァァァッルァ!』

異形の化け物が喚き叫ぶ様に空気を震わせる。

その声にどの様な意味があるのかは知らないが、悪い意味なのは間違いなさそうだ。

化け物はまるで内側から膨張していく様にブクブクと大きくなっていき、辛うじて存在していた顔らしき物は見えなくなり、変わりに巨大な単眼が姿を表す。

体から溢れ出た体液は、練り集まる様に絡み合い、無数の触手を形作る

「インカ!」

「うん!」

化け物の絶叫による硬直からいち早く回復した竜族の双子は、手を繋ぎながら余った手を化け物へ向けた。

「「《ハリケーンブレス》!」」

風属性のブレスが化け物に襲いかかる。

しかしそのブレスは化け物が触手の一本一本から放った光線により貫かれ、双子へ光線が襲いかかる。

「《テレポート》!」

そんなタイミングで硬直が解けた実穂によって、皆は外へと転移する。

「結構ずれちゃった……」

「仕方ないよ、腐ってもあの悪魔が元だしね」

ぐったりと地面に横たわるライトが、そう答える。

「………それにしてもあの変化は何だったんでしょうか?」

すっかり元の姿へ戻ったクルミが首を傾げる。

「流石にあれは掴めないわよ?」

美堀が化け物が居るであろう所を見つめながら冗談半分で言う。

「竜魔法も効かなかった………」

「簡単に防がれちゃった………」

インかとヨウタが落ち込んだ様に下を向いている。

「………兄ちゃん、調子は?」

「多分あれとの戦闘中に回復は無理かな………もう時間も無さそうだし」

ライトはちらりと森を見る。

一見何の変哲も無い森だが、良く見るとそこには生物が一匹も居ない事がわかる。

「………二人共、《竜化》はできないんだよね?」

「それはできない」

「二人でも何でかわからないけどできない」

ライトは一度目を瞑り、ラキトへ目を向けた。

「ラキト、ポシェットから眼鏡と封玉出し………あっ、服と一緒に消えてるか………副権限使って良いから出して」

「………『副権限行使:《アプリズングラス》《封印宝玉》』」

ライトの指示でラキトはそう呟く。

その言葉に反応して、銀縁の眼鏡と丸い水晶の様な宝玉が空に生成され、落下した。

「眼鏡かけてー」

ラキトに眼鏡をかけてもらったライトは双子を視る。

「………ほう、器が耐えられないパターンね………ならあれで………でも流石にメンタルが………ならこっちだね、うん………二人共! こっちに来て」

双子がライトの近くへ寄る。

「僕の手を握ってくれる?」

言われた通りに手を握る。

それを見たライトは、目を瞑り集中した。

「拒絶しないでね?」

ライトの体が輝き始める。

その光が手に集中して、光のほんの一部だけ双子へと流れていく。

「離してー」

双子は手を離したが、移った光は消えずに手に残っていた。

ライトは何故かまだ目を瞑り輝いている。

「あっ、ちょっと待って暴走する」

「えっ!?」

実穂がその言葉に驚き《エレメンタルウォール》を張ろうとするが、ライトの輝きはスーッと消えていった。

「ビックリさせないでよ………」

「あはは………もうスキルの補助無しで神力は使わないでおこっと」

「「神力!?」」

双子が驚きのあまり後ずさる。

「そうそう………さて、二人共? 君達は長年片角である事を隠して来た。 別に悪い事とは言わないよ、身を守る為だったんだしね………そして今は僕達を信用して角を見せてくれた………なら僕からもお返ししてあげなくちゃね」

ライトが少し芝居掛かった様な台詞を言うと、双子の手に纏わり付いていた光が全身にスーッと流れ込んでいく。

そして双子に溶け込むかの様に消えていった。

「二人共、神の力は願いを叶えてくれる。 きっと君達はもう《竜化》………いや、《神竜化》が使える筈だよ」

双子は互いを目をパチパチさせながら見つめあっている。

「………来ます」

そんなタイミングで森の中心からいくつもの細い光線が空へと照射され、爆発した。

モクモクと煙が上がり、謎の唸り声が響く。

その煙の中から大量の光線が放たれたかと思うと、煙は一瞬で晴れ、光線がこちらへ向かってくる様に曲がった。

「………ラキト、あの籠手使って」

「………良いのか?」

「壊れたら作り直せば良いしね」

ラキトは頷くと籠手を付け替え、光線の方向を殴りつけた。

そのあり得ない程強い拳の力は籠手に吸収され、籠手が壊れると同時に籠手からとてつもない程強い強風が吹き出した。

普通の風じゃないのか、光線は風に煽られて百八十度回転して化け物に命中した。

「………さぁ、二人共、イメージしてみて? 君達はどんな竜になりたい?」


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(………インカはどんな竜になりたい?)

(………あんまりわからない)

双子は互いを見つめながら心の中で会話をする。

(ヨウタは?)

(ヨウタもわからない)

(………竜になれるなんて考えても無かったもんね)

双子はお互いの角を見て考える。

(インカ達、竜になっても片角なのかな?)

(どうだろう? でもそれはそれで双子の証みたいで良いと思う)

(そうだね!)

双子はこちらを見ながら何かを訴える様な鳴き声を放つ悪魔の成れの果てを見た。

(………もう時間が無さそう)

(じゃあ………竜になれたらやりたい事を考えてみる?)

(竜になれたらやりたい事………)

化け物は触手の先端を目へと向け、巨大な球を造り始めた。

(………ヨウタと、一緒に居たい?)

(ヨウタもインカと一緒に居たい)

双子は考えが一緒だった事に少し喜び、空いていたもう片方の手も握った。

(………インカ、行くよ?)

(いつでも良いよ、ヨウタ)

二人が目を瞑ると、二人の下からエネルギーの奔流が巻き起こる。

その奔流に流れる様にインカの髪から緑の光が、ヨウタの髪から青の光が、二人の角から赤の光が天へ昇っていく。

そんな幻想的な様子を見て、竜族の双子、インカとヨウタは揃えて声を響かせた。

「「《神竜化》!」」

響いた声に答える様に、光の奔流を遡って竜を形作ったエネルギーが二人目掛けて降り注ぐ。

そして強烈な光を放ち、輝いたのだった。


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(眩しっ!)

実穂はあまりの眩しさに目を瞑る。

化け物が居た方角からはギュンギュンと何かが溜まる音が聞こえてきていて、もう最高まで溜まってそうな勢いで鳴っていた。

そんな眩しさの中、その光を割って"一匹の竜"が姿を表した。

白い鱗に黒い紋様、2つの黒い角に黄緑と空色のオッドアイ。

両手に目と同じ色をした宝玉を二つ持ち、ぐるりと宙を舞う。

「………まさかの一心同体かぁ」

ライトが驚いた様な声を出す。

双子だった竜は地上へ舞い戻り、軽くとぐろを巻いた。

化け物はその様子を見て、溜めていた極太光線を放つ。

それに対して双子だった竜は直線上のブレスを放つ。

二つの力は拮抗して、打ち消し合った。

『実穂! 乗って!』

「えっ!? インカ!? 喋れるの!?」

『別にヨウタ達が消えた訳じゃ無い、普通に喋れるみたい!』

竜が下へ降りてペタンと伏せる。

「実穂! これ持っていきなよ!」

ライトはラキトに目配せして実穂に一つの宝玉を渡した。

「あの化け物が弱ったと思ったら投げ付けて、それで多分封印できるから」

「わかった!」

竜に乗った(と言うより背中に立った)実穂を見て、クルミはスキルを発動して付いていこうとした。

しかしスキルは発動せず、クルミはこけてしまった。

「………スキルが使えなくなってます」

「実穂! こっちは心配しなくて良いわよ! 私とクルミがちゃんとこれを守るから!」

「これ扱いは酷くない?」

落ち込むクルミ、実穂に声をかける美堀、扱いが不満そうなライト、少し無口なラキト。

皆それぞれ違う反応だが、実穂を応援している。

実はインカが実穂を乗せる様に言ったのも、実穂ならなんとかしてくれると思ったからだ。

『実穂! しっかり捕まってて!』

『魔法で落ちない様にしたけど注意してね!』

双子の竜はゆっくりと飛び上がる。

背中に実穂を乗せ、化け物を倒す為に。

「頑張らなきゃ!」

役者は揃った。

悪魔との本当の戦いが今! 始まる!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ディメン「どうも皆さんこんにちは、あとがき担当のディメンだぜ」

シルフィ「どうも皆さんこんにちは、ライトの代理だったシルフィよ」

ライト「どうも皆さんこんにちは、久しぶりのライト スターダストです」

ディメン「本当に久しぶりだな」

ライト「そうだねー」

シルフィ「………ライトが戻ってきたなら私帰って良いわよね?」

ライト「そうだね、今回"まで"は居てね?」

シルフィ「………」

ディメン「それにしても今回、お前が主役かって位に色々してたよなー」

ライト「まぁ久しぶりの僕だしね、そうなるのも仕方無いよ」

シルフィ「………次回から出番は減るそうよ?」

ライト「そりゃそうだろうねー………というか次回で今の章終わるよ?」

ディメン「終わる………と良いな………今回はこの小説を読んでくれてありがとな」

ライト「誤字脱字やストーリー矛盾等がありましたらご報告の方をお願いします」

シルフィ「それでは皆さん」

ディメン&ライト&シルフィ「さようなら」
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