【連作ホラー】伍横町幻想 —Until the day we meet again—

至堂文斗

文字の大きさ
35 / 176
第一部【霧夏邸幻想 ―Primal prayer-】

三十二話 失踪

しおりを挟む
「……痛てて。今のは」
「ナツノちゃんの記憶……かな」

 地下室から地上階へと戻る道中。
 俺たちの脳内に、突如として意識のようなものが流れ込んできた。
 あれは、ハルナとナツノが雑談をしている場面だ。
 時期的に、俺が引っ越しをした後のことだろう。

「留美さんの記憶が流れ込んできたときに、別の声が混じって聞こえてきたが……あれもナツノちゃんの記憶だったのかもな」
「この場を支配する霊になってるってことなら、そうなんだろう」

 まやくん、という声。
 あれは間違いなくナツノのものだ。

「あっミツヤくん、ソウシくん!」
「……ん?」

 階段を上がりきったところで、廊下の先から声が聞こえてきた。
 声の方へ顔を向けると、玄関ホール側からマヤとハルナが歩いてきていた。
 ……もう一人、サツキがいない。

「おいおい、今度はどうしたんだよ。なんでサツキがいないんだ?」
「そ、それが……私たちがちょっと油断した隙に、いなくなっちゃって」
「何だって!?」

 三人は食堂でじっと待機していたらしい。しかし、長時間緊張しっぱなしなこともあって、ぼうっとしてしまっていると、いつの間にやらサツキが姿を消していたのだという。

「どうしていなくなっちゃったんだろう……霊に襲われたら、殺されちゃうかもしれないのに」
「本当だよ。僕たち全員で生き残ろうって励ましあってたのに」

 二人はこの状況にすっかり困惑しきっていた。三人で大人しく待っていると約束したばかりなのにこうなってしまったのだから、困惑するのも無理はない。

「サツキが二人と離れちまったのは、あいつがタツマ……いや、タカキを殺した犯人だからだろう」
「え!?」
「そ、それって本当なの……?」
「ああ。元に戻したタカキ本人に聞いたんだから間違いない。あいつがタカキを殺してしまったんだ……」

 俺が簡潔に、タカキが殺害された理由について簡潔に説明すると、ハルナとマヤはその隠された過去に驚愕しつつも、二人に対して同情の念を抱くのだった。

「……なるほど。ミツヤくんがタカキくんを解放しに行くって言ったから、殺したことがバレると思っていなくなっちゃったわけか」
「思えば、タカキの霊を鎮めに行くって言ったときのあいつ、ちょっと変だったもんな。普通だったら解放してやってほしいって気持ちになるだろうに」

 霊を解放し、話せるようになってしまったら……死者に罪を告発されてしまう。
 そうなればもう、言い逃れなど出来はしない。
 死者の告発……罪人にとって、それはどれほど恐ろしいことだろう。

「とにかく、急いであいつを探そう。いつ悪霊に襲われるとも限らないんだから」
「そ、そうだね……!」

 俺たちは四人で固まって、いなくなったサツキを探すことにした。
 あいつが霊にやられてしまう前に、必ず見つけて連れ帰らなければ。
 それが、タカキとの誓いなのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

孤児が皇后陛下と呼ばれるまで

香月みまり
ファンタジー
母を亡くして天涯孤独となり、王都へ向かう苓。 目的のために王都へ向かう孤児の青年、周と陸 3人の出会いは世界を巻き込む波乱の序章だった。 「後宮の棘」のスピンオフですが、読んだことのない方でも楽しんでいただけるように書かせていただいております。

男装官吏と花散る後宮〜禹国謎解き物語〜

春日あざみ
キャラ文芸
<第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。応援ありがとうございました!> 宮廷で史書編纂事業が立ち上がると聞き、居ても立ってもいられなくなった歴史オタクの柳羅刹(りゅうらせつ)。男と偽り官吏登用試験、科挙を受験し、見事第一等の成績で官吏となった彼女だったが。珍妙な仮面の貴人、雲嵐に女であることがバレてしまう。皇帝の食客であるという彼は、羅刹の秘密を守る代わり、後宮の悪霊によるとされる妃嬪の連続不審死事件の調査を命じる。 しかたなく羅刹は、悪霊について調べ始めるが——? 「歴女×仮面の貴人(奇人?)」が紡ぐ、中華風世界を舞台にしたミステリ開幕!

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 
恋愛
「わ……私と結婚してください!」と叫んだのは、男爵令嬢ミーナ プロポーズされたのは第一騎士団の団長、アークフリード・フェリックス・ブランドン公爵 アークフリードには、13年前に守りたいと思っていた紫の髪に紫の瞳をもつエリザベスを守ることができず死なせてしまったという辛い初恋の思い出があった。 そんなアークフリードの前に現れたのは、赤い髪に緑の瞳をもつミーナ 運命はふたりに不思議なめぐりあいの舞台を用意した。 ⁂がついている章は性的な場面がありますので、ご注意ください。 「なろう」でも公開しておりますが、そちらではまだ改稿が進んでおりませんので、よろしければこちらでご覧ください。

月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳 yayoi × 月城尊 29歳 takeru 母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司 彼は、母が持っていた指輪を探しているという。 指輪を巡る秘密を探し、 私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

処理中です...