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第一部【霧夏邸幻想 ―Primal prayer-】
三十二話 失踪
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「……痛てて。今のは」
「ナツノちゃんの記憶……かな」
地下室から地上階へと戻る道中。
俺たちの脳内に、突如として意識のようなものが流れ込んできた。
あれは、ハルナとナツノが雑談をしている場面だ。
時期的に、俺が引っ越しをした後のことだろう。
「留美さんの記憶が流れ込んできたときに、別の声が混じって聞こえてきたが……あれもナツノちゃんの記憶だったのかもな」
「この場を支配する霊になってるってことなら、そうなんだろう」
まやくん、という声。
あれは間違いなくナツノのものだ。
「あっミツヤくん、ソウシくん!」
「……ん?」
階段を上がりきったところで、廊下の先から声が聞こえてきた。
声の方へ顔を向けると、玄関ホール側からマヤとハルナが歩いてきていた。
……もう一人、サツキがいない。
「おいおい、今度はどうしたんだよ。なんでサツキがいないんだ?」
「そ、それが……私たちがちょっと油断した隙に、いなくなっちゃって」
「何だって!?」
三人は食堂でじっと待機していたらしい。しかし、長時間緊張しっぱなしなこともあって、ぼうっとしてしまっていると、いつの間にやらサツキが姿を消していたのだという。
「どうしていなくなっちゃったんだろう……霊に襲われたら、殺されちゃうかもしれないのに」
「本当だよ。僕たち全員で生き残ろうって励ましあってたのに」
二人はこの状況にすっかり困惑しきっていた。三人で大人しく待っていると約束したばかりなのにこうなってしまったのだから、困惑するのも無理はない。
「サツキが二人と離れちまったのは、あいつがタツマ……いや、タカキを殺した犯人だからだろう」
「え!?」
「そ、それって本当なの……?」
「ああ。元に戻したタカキ本人に聞いたんだから間違いない。あいつがタカキを殺してしまったんだ……」
俺が簡潔に、タカキが殺害された理由について簡潔に説明すると、ハルナとマヤはその隠された過去に驚愕しつつも、二人に対して同情の念を抱くのだった。
「……なるほど。ミツヤくんがタカキくんを解放しに行くって言ったから、殺したことがバレると思っていなくなっちゃったわけか」
「思えば、タカキの霊を鎮めに行くって言ったときのあいつ、ちょっと変だったもんな。普通だったら解放してやってほしいって気持ちになるだろうに」
霊を解放し、話せるようになってしまったら……死者に罪を告発されてしまう。
そうなればもう、言い逃れなど出来はしない。
死者の告発……罪人にとって、それはどれほど恐ろしいことだろう。
「とにかく、急いであいつを探そう。いつ悪霊に襲われるとも限らないんだから」
「そ、そうだね……!」
俺たちは四人で固まって、いなくなったサツキを探すことにした。
あいつが霊にやられてしまう前に、必ず見つけて連れ帰らなければ。
それが、タカキとの誓いなのだから。
「ナツノちゃんの記憶……かな」
地下室から地上階へと戻る道中。
俺たちの脳内に、突如として意識のようなものが流れ込んできた。
あれは、ハルナとナツノが雑談をしている場面だ。
時期的に、俺が引っ越しをした後のことだろう。
「留美さんの記憶が流れ込んできたときに、別の声が混じって聞こえてきたが……あれもナツノちゃんの記憶だったのかもな」
「この場を支配する霊になってるってことなら、そうなんだろう」
まやくん、という声。
あれは間違いなくナツノのものだ。
「あっミツヤくん、ソウシくん!」
「……ん?」
階段を上がりきったところで、廊下の先から声が聞こえてきた。
声の方へ顔を向けると、玄関ホール側からマヤとハルナが歩いてきていた。
……もう一人、サツキがいない。
「おいおい、今度はどうしたんだよ。なんでサツキがいないんだ?」
「そ、それが……私たちがちょっと油断した隙に、いなくなっちゃって」
「何だって!?」
三人は食堂でじっと待機していたらしい。しかし、長時間緊張しっぱなしなこともあって、ぼうっとしてしまっていると、いつの間にやらサツキが姿を消していたのだという。
「どうしていなくなっちゃったんだろう……霊に襲われたら、殺されちゃうかもしれないのに」
「本当だよ。僕たち全員で生き残ろうって励ましあってたのに」
二人はこの状況にすっかり困惑しきっていた。三人で大人しく待っていると約束したばかりなのにこうなってしまったのだから、困惑するのも無理はない。
「サツキが二人と離れちまったのは、あいつがタツマ……いや、タカキを殺した犯人だからだろう」
「え!?」
「そ、それって本当なの……?」
「ああ。元に戻したタカキ本人に聞いたんだから間違いない。あいつがタカキを殺してしまったんだ……」
俺が簡潔に、タカキが殺害された理由について簡潔に説明すると、ハルナとマヤはその隠された過去に驚愕しつつも、二人に対して同情の念を抱くのだった。
「……なるほど。ミツヤくんがタカキくんを解放しに行くって言ったから、殺したことがバレると思っていなくなっちゃったわけか」
「思えば、タカキの霊を鎮めに行くって言ったときのあいつ、ちょっと変だったもんな。普通だったら解放してやってほしいって気持ちになるだろうに」
霊を解放し、話せるようになってしまったら……死者に罪を告発されてしまう。
そうなればもう、言い逃れなど出来はしない。
死者の告発……罪人にとって、それはどれほど恐ろしいことだろう。
「とにかく、急いであいつを探そう。いつ悪霊に襲われるとも限らないんだから」
「そ、そうだね……!」
俺たちは四人で固まって、いなくなったサツキを探すことにした。
あいつが霊にやられてしまう前に、必ず見つけて連れ帰らなければ。
それが、タカキとの誓いなのだから。
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