【連作ホラー】伍横町幻想 —Until the day we meet again—

至堂文斗

文字の大きさ
70 / 176
第二部【三神院幻想 ―Dawn comes to the girl―】

十九話 真実を映す鏡(記憶世界)

しおりを挟む
 最後の扉を抜けると、長い階段があった。
 黒き影に追われたのとは逆に、今度は上り階段だった。
 段差はそれほど急でなく、かなりの距離をかけて上っていく感じだ。
 果ては見えない。

「……この先に」

 答えがある。
 不思議と、そんな確信があった。
 取り戻すための前提は、もう既に越えていて。
 後は決定的な答えを、知らしめられるだけなのだ。

 ――そう。

 頭の中で、幾つもの言葉がリフレインする。

 ――ふふ、ツキノには届かないでしょ?

 届かない本棚。

 ――お姉ちゃんにもらったぬいぐるみ、もう結構ボロボロになっちゃったなあ……。

 しまわれたぬいぐるみ。
 切り取られた世界の中で。
 抜け落ちた私にはめ込まれたのは。
 階段に一歩、足をかけ。
 私は、真実へと上り始める。

 …………

 ……





 ――謝ることしかできない。

 ふわりと、その足を地上へと降ろして。
 私は、静かに彼女を見上げていた。

 ――私には、謝ることしかできないよ。

 そう、それだけが許されることなのだと。
 自分でもう、理解していたのだ。
 あなたをいつも悲しませていたことを、私は申し訳なく思っている。
 振り返ってみれば、いつだってあなたはそうだった。
 あなたはいつも、罪のない不幸を背負っていた。
 私と   お姉ちゃんのせいで。
 お守りのときだってそう。一度渡したお守りを、やっぱり■■■お姉ちゃんの色がいいと私は泣いた。
 そのときあなたは、必死に私を慰めてくれた。
 私たちが同じものを取り合ってケンカしたとき、あなたはいつも、間に入ってくれたよね。
 ……ありがとう。
 そして、ごめんなさい。
 嘘つきな私を……許してください。

 ――お姉ちゃん。





「……そういうことだったんだね」

 階段を上り終えた先。
 私を待っていたのは、一枚の鏡だった。
 姿見だ。
 この記憶世界で、これまで目にすることのなかった鏡。
 部屋を再現したならあって然るべきなのに、存在しなかった鏡……。
 もしも最初から鏡があって。
 自分の姿を映していたのなら。
 きっと、もっと早くに理解していた筈なのだ。
 だって、それは決定的なことで。
 一目見るだけで、それが真実になるというのに。

「私は……光井月乃みついつきの

 三姉妹の……次女。

「決して、陽乃お姉ちゃんじゃない」

 あの明るい、太陽のような姉じゃあない。

「私は……」

 それでも、多分佇まいだけはどこか似ていたから。

「私はあの日、――」

 残酷な真実を、鏡は無機質に映し出していた。

 …………

 ……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】探さないでください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。 貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。 あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。 冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。 複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。 無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。 風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。 だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。 今、私は幸せを感じている。 貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。 だから、、、 もう、、、 私を、、、 探さないでください。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 
恋愛
「わ……私と結婚してください!」と叫んだのは、男爵令嬢ミーナ プロポーズされたのは第一騎士団の団長、アークフリード・フェリックス・ブランドン公爵 アークフリードには、13年前に守りたいと思っていた紫の髪に紫の瞳をもつエリザベスを守ることができず死なせてしまったという辛い初恋の思い出があった。 そんなアークフリードの前に現れたのは、赤い髪に緑の瞳をもつミーナ 運命はふたりに不思議なめぐりあいの舞台を用意した。 ⁂がついている章は性的な場面がありますので、ご注意ください。 「なろう」でも公開しておりますが、そちらではまだ改稿が進んでおりませんので、よろしければこちらでご覧ください。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

立花家へようこそ!

由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・―――― これは、内気な私が成長していく物語。 親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。

男装官吏と花散る後宮〜禹国謎解き物語〜

春日あざみ
キャラ文芸
<第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。応援ありがとうございました!> 宮廷で史書編纂事業が立ち上がると聞き、居ても立ってもいられなくなった歴史オタクの柳羅刹(りゅうらせつ)。男と偽り官吏登用試験、科挙を受験し、見事第一等の成績で官吏となった彼女だったが。珍妙な仮面の貴人、雲嵐に女であることがバレてしまう。皇帝の食客であるという彼は、羅刹の秘密を守る代わり、後宮の悪霊によるとされる妃嬪の連続不審死事件の調査を命じる。 しかたなく羅刹は、悪霊について調べ始めるが——? 「歴女×仮面の貴人(奇人?)」が紡ぐ、中華風世界を舞台にしたミステリ開幕!

処理中です...