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第三部【流刻園幻想 ―Omnia fert aetas―】
十話 空洞
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清めの水。校内探索の危険度を下げるためにも、対悪霊用の武器は必要だ。
怪物と対峙したとき、ただ逃げることしか出来ないという事態にならないよう、まずは水を手に入れることに決めた。
そして一階の用具室へと向かいながら、オレとミオさんは音楽室の少女について、そして彼女から聞いた七不思議についてあれこれ思案していた。
「……ううん、オレが前に聞いた七不思議とまた少し変わってたな。二度目の首吊り事件なんてなかった筈だし……やっぱり七不思議はころころと変わるもんなんでしょうね」
「かもしれないね。実際、ありもしないことならいくらでも挿げ替えられるんだろうし」
ミイちゃんから七不思議のことを最後に聞いたのは一ヶ月ほど前。そこからオレの知らないところで、七不思議は更新されていたようだ。
そもそもあのときは、六つしか不思議はなかった筈なのだし。
「よし、用具室に到着だ」
プレートに用具室と記された場所。スライドドアを開いた先は、名前の通りごちゃごちゃと色んな道具がしまいこまれていた。
他の教室より、部屋面積も狭い。だから余計に物で溢れかえっているように見えるのだ。
「ここのどこかに、異界へ続くとかいう扉があるんでしょうかね。そういえば、時間は今何時なんだろう……」
「まあ、時間は関係ないと思うけどね。きっと四が並んでると怖いとかいうだけでさ。怪しいところをとりあえず調べてみるべきかな……」
言いながら、ミオさんはポケットから何か四角いものを取り出し、それを見つめてすぐに戻した。時計のようなものをポケットに入れているのかもしれない。
その顔を見る限り、時間は四時四十四分とはまるで違っているようだ。
時刻については置いておくとして、オレとミオさんは手分けして抜け道を探すことにした。これだけ物で埋め尽くされていると調査も一苦労だが、その分抜け道が存在することの信憑性も高い気がする。
黒板消しなどの小物のほか、ホワイトボードやパイプ椅子に文化祭で使われた看板まで。様々なものがここに詰め込まれていて、最早用具室ではなく物置だ。
その一番奥、細長いロッカーが何となく怪しい感じがして、オレは足の踏み場もない中を何とか歩き、ロッカーの前まで辿り着く。
ロッカーの中は普通にホウキなどの掃除道具だったが、違和感はまだ拭えない。
……そうだ。このロッカーの隣にだけ、他の物が置かれていないのだ。
「ミオさん、このロッカー……怪しいですよね?」
「うん。僕も、ユウサクくんが気にしてるのを見て思ったよ。……ほら、床を見て。動かした跡がある」
「ですね。よく今まで誰も気付かなかったなと思うけど……まあ、普段ここに立ち入る人はいないか」
生徒だけでなく先生だって、恐らくこの場所に長居はしないだろう。
物を取るか置くかして、すぐに立ち去るだけだ。室内を詳しく見て回ったりすることなんてない。
気付かないのも仕方がない……か。
「じゃあ、ちょっと肉体労働に励もうかな」
ミオさんが言い、オレは頷く。肉体労働とは言っても、これくらいのロッカーならホウキが何本か入っていたって、軽々動かせる筈。
案の定、ミオさんに手伝ってもらわなくても、オレ一人でロッカーをずらすことはできた。
……そして。
「……これは……」
「こんなものが、ね……」
オレたちは、二人して驚く。
ロッカーをずらすと、向こう側にはポッカリと空洞が開いていたのだ。
なるほど、用具室の壁の向こうは外だけれど、ロッカーの後ろは柱部分になっていて、壁が厚い。
その下部に穴を開け、下り階段を作りあげたようだ。
「……何が待ってるか分からない。注意しながら進もう」
「ええ、分かりました」
冷たく、淀んだ空気の流れる地下へ向け。
オレたちは一歩、足を踏み出した。
怪物と対峙したとき、ただ逃げることしか出来ないという事態にならないよう、まずは水を手に入れることに決めた。
そして一階の用具室へと向かいながら、オレとミオさんは音楽室の少女について、そして彼女から聞いた七不思議についてあれこれ思案していた。
「……ううん、オレが前に聞いた七不思議とまた少し変わってたな。二度目の首吊り事件なんてなかった筈だし……やっぱり七不思議はころころと変わるもんなんでしょうね」
「かもしれないね。実際、ありもしないことならいくらでも挿げ替えられるんだろうし」
ミイちゃんから七不思議のことを最後に聞いたのは一ヶ月ほど前。そこからオレの知らないところで、七不思議は更新されていたようだ。
そもそもあのときは、六つしか不思議はなかった筈なのだし。
「よし、用具室に到着だ」
プレートに用具室と記された場所。スライドドアを開いた先は、名前の通りごちゃごちゃと色んな道具がしまいこまれていた。
他の教室より、部屋面積も狭い。だから余計に物で溢れかえっているように見えるのだ。
「ここのどこかに、異界へ続くとかいう扉があるんでしょうかね。そういえば、時間は今何時なんだろう……」
「まあ、時間は関係ないと思うけどね。きっと四が並んでると怖いとかいうだけでさ。怪しいところをとりあえず調べてみるべきかな……」
言いながら、ミオさんはポケットから何か四角いものを取り出し、それを見つめてすぐに戻した。時計のようなものをポケットに入れているのかもしれない。
その顔を見る限り、時間は四時四十四分とはまるで違っているようだ。
時刻については置いておくとして、オレとミオさんは手分けして抜け道を探すことにした。これだけ物で埋め尽くされていると調査も一苦労だが、その分抜け道が存在することの信憑性も高い気がする。
黒板消しなどの小物のほか、ホワイトボードやパイプ椅子に文化祭で使われた看板まで。様々なものがここに詰め込まれていて、最早用具室ではなく物置だ。
その一番奥、細長いロッカーが何となく怪しい感じがして、オレは足の踏み場もない中を何とか歩き、ロッカーの前まで辿り着く。
ロッカーの中は普通にホウキなどの掃除道具だったが、違和感はまだ拭えない。
……そうだ。このロッカーの隣にだけ、他の物が置かれていないのだ。
「ミオさん、このロッカー……怪しいですよね?」
「うん。僕も、ユウサクくんが気にしてるのを見て思ったよ。……ほら、床を見て。動かした跡がある」
「ですね。よく今まで誰も気付かなかったなと思うけど……まあ、普段ここに立ち入る人はいないか」
生徒だけでなく先生だって、恐らくこの場所に長居はしないだろう。
物を取るか置くかして、すぐに立ち去るだけだ。室内を詳しく見て回ったりすることなんてない。
気付かないのも仕方がない……か。
「じゃあ、ちょっと肉体労働に励もうかな」
ミオさんが言い、オレは頷く。肉体労働とは言っても、これくらいのロッカーならホウキが何本か入っていたって、軽々動かせる筈。
案の定、ミオさんに手伝ってもらわなくても、オレ一人でロッカーをずらすことはできた。
……そして。
「……これは……」
「こんなものが、ね……」
オレたちは、二人して驚く。
ロッカーをずらすと、向こう側にはポッカリと空洞が開いていたのだ。
なるほど、用具室の壁の向こうは外だけれど、ロッカーの後ろは柱部分になっていて、壁が厚い。
その下部に穴を開け、下り階段を作りあげたようだ。
「……何が待ってるか分からない。注意しながら進もう」
「ええ、分かりました」
冷たく、淀んだ空気の流れる地下へ向け。
オレたちは一歩、足を踏み出した。
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