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最終部【伍横町幻想 ―Until the day we meet again―】
二十八話 「変われる気がしたんだ」
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「……で、マヤはどこにいるんだ?」
町内の歩道を走りながら、ミツヤは訊ねる。
既に伍横町には悪霊たちが何体も漂っており、見つかれば襲い掛かってこられるような危険に満ちていた。
ミツヤたちとは違い、滑るように移動しながらソウシは答える。
「あいつが助けたアキノって子の家にいる。そこで手当てをされてるはずだ」
「わ、分かった。家は知ってるし、まあ行ってみましょ」
ハルナは三神院事件でミオたちの協力をしており、遠野家や光井家、それに黒木家の場所も知っていた。
少々方向音痴気味なのが気にかかるが、ソウシもいるし大丈夫だろうとミツヤは頷く。
「よし、急ごう」
時間は止まっていても、事態は刻々と変化する。
マヤやアキノが更なる危険に遭遇しない内にと、彼らは急いだ。
霧夏邸は、町の中でも北方に位置しており、光井家とはそれなりに距離がある。
十分以上をかけて、三人は――正確には二人だけは、息を切らしながらもやっと光井家に到着した。
マヤはリビングにいるとのことで、ミツヤたちはさっさと玄関を上がり、リビングの扉を開く。
そこには、アキノに応急処置をしてもらっているマヤがいた。
「……マヤ」
「あ……ミツヤ、ハルナちゃん。……久しぶり、だね」
何ともシュールな再会の図に、三人とも上手い台詞が見つからず、しばらく黙り込む。
その沈黙に耐えられなかったのはハルナで、
「ちょっとマヤくん、なんで怪我しちゃったのよ」
と、腕組みをしながらマヤを叱りつけた。
「あ、あの……怒らないであげてください。この人、私を助けてくれたんです」
ガーゼを貼り終えたアキノがマヤを庇う。本人にそう言われては、流石に信じないわけにもいかない。
「やっぱり、本当のことなのか。お前が人助けをするだなんて、予想外のことだぜ、ったく……」
「……どうしてそんなことを?」
マヤの行動を二人は素直に受け取れず、彼に問いかける。彼自身も、自分が信用されていないことはよく理解しているので、拗ねたりはしなかった。
「あはは、やっぱり僕がそういうことするの、変だよね……僕も訳が分からなかったよ」
死にたくないって震えてたくらいなのにね。マヤはそんな風に呟く。
「でも、あの男……黒木と出会ってさ。復讐のために生きるとか、言ってるのを聞いて……止めなきゃと思ってたんだよ。三年前のハルナちゃんのようにね……」
「……私の?」
マヤはこくりと頷く。
三年前。ミツヤの暴走を止めたハルナのようになりたいと、マヤは憧れていたのだ。
「それが出来たら、僕はようやく変われる気がしたんだ。ただの人殺しである自分から、ようやくね――」
町内の歩道を走りながら、ミツヤは訊ねる。
既に伍横町には悪霊たちが何体も漂っており、見つかれば襲い掛かってこられるような危険に満ちていた。
ミツヤたちとは違い、滑るように移動しながらソウシは答える。
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「わ、分かった。家は知ってるし、まあ行ってみましょ」
ハルナは三神院事件でミオたちの協力をしており、遠野家や光井家、それに黒木家の場所も知っていた。
少々方向音痴気味なのが気にかかるが、ソウシもいるし大丈夫だろうとミツヤは頷く。
「よし、急ごう」
時間は止まっていても、事態は刻々と変化する。
マヤやアキノが更なる危険に遭遇しない内にと、彼らは急いだ。
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十分以上をかけて、三人は――正確には二人だけは、息を切らしながらもやっと光井家に到着した。
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「あ……ミツヤ、ハルナちゃん。……久しぶり、だね」
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「ちょっとマヤくん、なんで怪我しちゃったのよ」
と、腕組みをしながらマヤを叱りつけた。
「あ、あの……怒らないであげてください。この人、私を助けてくれたんです」
ガーゼを貼り終えたアキノがマヤを庇う。本人にそう言われては、流石に信じないわけにもいかない。
「やっぱり、本当のことなのか。お前が人助けをするだなんて、予想外のことだぜ、ったく……」
「……どうしてそんなことを?」
マヤの行動を二人は素直に受け取れず、彼に問いかける。彼自身も、自分が信用されていないことはよく理解しているので、拗ねたりはしなかった。
「あはは、やっぱり僕がそういうことするの、変だよね……僕も訳が分からなかったよ」
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「でも、あの男……黒木と出会ってさ。復讐のために生きるとか、言ってるのを聞いて……止めなきゃと思ってたんだよ。三年前のハルナちゃんのようにね……」
「……私の?」
マヤはこくりと頷く。
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「それが出来たら、僕はようやく変われる気がしたんだ。ただの人殺しである自分から、ようやくね――」
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