45 / 79
Ninth Chapter...7/27
雨が止んで
しおりを挟む
世界史と化学の二科目が終了し、十時三十五分には終礼の挨拶となる。色々とあり過ぎて、正直なところ問題を解ける自信が無くなってきていたのだが、案外授業で聞いたこと、ノートに書きとったことは、記憶の奥に、ちゃんとしまい込まれているものだ。とりあえず、六十点を下回ることはなさそうで、一安心だった。
これで試験の週は終わり、月曜日に試験結果と通知表が渡されて、一学期が終了する。他所よりは長いけれど、その長さを感じさせない学校生活だった。
「何だか試験の週は、皆との時間が減っちゃって寂しいな。来週の月曜日が学期末で、しばらく夏休みに入っちゃうし」
終礼の後、満雀ちゃんは僕と龍美に向かって、そんな思いを吐露してきた。病弱で、僕たち以上に安静が必要な彼女にとって、僕たちと他愛のない話をしていられる時間は、とても貴重なものなのだ。無論、その気持ちは僕たちも同じだけれど。
「……ねえ、玄人。外見てよ」
「ん?」
龍美に促され、僕は窓の方に目を向ける。
「ああ……雨、止んだんだね」
「そうみたい」
まだ、灰色の雨雲は空の上に留まっていて、いつまた振り出してしまうかは分からないけれど。久しぶりに、雨は止んでいた。
「……ね。せっかくだから、満雀ちゃんを連れて、秘密基地に行きましょうよ。学校、もう閉めちゃうみたいだし、どうせなら基地で話をしながら、ムーンスパローの調整もしておきたいわ」
「まあ、そうしてもいいかもね。この前ムーンスパローを試しに行ったの、六日前くらいだし。あれを作るようになってからは、大体四日に一回は基地に行ってたから、むしろ間が開いちゃったくらいかな」
「うんうん。秘密の話をするなら、あっちの方がいい気がするし」
……それは、あくまで個人の感想ってやつだと思うけど。
「うゆ、内緒話?」
「ああ、いや。ほら、丁度雨が止んだから、秘密基地に行こうかなーって相談してたんだ」
「本当? 私も行きたい」
「そう言うと思ったわ。でも、双太さんに遊んでいいって許可をもらってからにしないとね。それに、お昼までにしておきましょう」
「うん、分かった。多分問題ないと思う」
無邪気な笑顔で、満雀ちゃんは答える。それからほどなくして双太さんが現れたので、
「双太さん、双太さん」
「おっと、どうしたんだい、満雀ちゃん」
「お昼ご飯の時間まで、龍美ちゃんたちと遊んでてもいいかな」
「……そうだね。ここしばらく、気分も塞いでるだろうし。全然構わないよ。でも、疲れない程度にね」
「おっけーだよ。ありがと、双太さん」
この天使のような笑顔には、双太さんも弱いらしい。彼はほんの少し顔を赤らめて、
「僕にお礼なんて言わなくても。……二人とも、ありがとうね」
「いえいえ、僕らだって、満雀ちゃんと遊べなきゃ寂しいですから」
「その通りっ。だから、双太さんも気にする必要はないですよ」
「ははは。いつも、頼りにしてるよ」
純粋にそう思ってくれているのが伝わってくるので、何だか照れ臭くなる。僕も龍美も、自然と口元がにやけてしまった。
「じゃあ、二人とも。早く行こー」
満雀ちゃんが、待ちきれないと言った様子で、僕と龍美の服の袖を引っ張る。その愛らしい仕草にもにやけつつ、
「よし、それじゃ行きますか。双太さん、後は任せてくださいな」
「ああ、よろしくお願い。また雨が降ってくるかもしれないから、そのときはすぐに帰るんだよ」
「心得てます」
「任せてくださいな」
そう答えて二人で頷き合うと、僕たちは満雀ちゃんの手を取り、双太さんに別れを告げて、学校を出た。
双太さんは、僕たちが敷地を出るまで、優しい笑顔で見送ってくれていた。
これで試験の週は終わり、月曜日に試験結果と通知表が渡されて、一学期が終了する。他所よりは長いけれど、その長さを感じさせない学校生活だった。
「何だか試験の週は、皆との時間が減っちゃって寂しいな。来週の月曜日が学期末で、しばらく夏休みに入っちゃうし」
終礼の後、満雀ちゃんは僕と龍美に向かって、そんな思いを吐露してきた。病弱で、僕たち以上に安静が必要な彼女にとって、僕たちと他愛のない話をしていられる時間は、とても貴重なものなのだ。無論、その気持ちは僕たちも同じだけれど。
「……ねえ、玄人。外見てよ」
「ん?」
龍美に促され、僕は窓の方に目を向ける。
「ああ……雨、止んだんだね」
「そうみたい」
まだ、灰色の雨雲は空の上に留まっていて、いつまた振り出してしまうかは分からないけれど。久しぶりに、雨は止んでいた。
「……ね。せっかくだから、満雀ちゃんを連れて、秘密基地に行きましょうよ。学校、もう閉めちゃうみたいだし、どうせなら基地で話をしながら、ムーンスパローの調整もしておきたいわ」
「まあ、そうしてもいいかもね。この前ムーンスパローを試しに行ったの、六日前くらいだし。あれを作るようになってからは、大体四日に一回は基地に行ってたから、むしろ間が開いちゃったくらいかな」
「うんうん。秘密の話をするなら、あっちの方がいい気がするし」
……それは、あくまで個人の感想ってやつだと思うけど。
「うゆ、内緒話?」
「ああ、いや。ほら、丁度雨が止んだから、秘密基地に行こうかなーって相談してたんだ」
「本当? 私も行きたい」
「そう言うと思ったわ。でも、双太さんに遊んでいいって許可をもらってからにしないとね。それに、お昼までにしておきましょう」
「うん、分かった。多分問題ないと思う」
無邪気な笑顔で、満雀ちゃんは答える。それからほどなくして双太さんが現れたので、
「双太さん、双太さん」
「おっと、どうしたんだい、満雀ちゃん」
「お昼ご飯の時間まで、龍美ちゃんたちと遊んでてもいいかな」
「……そうだね。ここしばらく、気分も塞いでるだろうし。全然構わないよ。でも、疲れない程度にね」
「おっけーだよ。ありがと、双太さん」
この天使のような笑顔には、双太さんも弱いらしい。彼はほんの少し顔を赤らめて、
「僕にお礼なんて言わなくても。……二人とも、ありがとうね」
「いえいえ、僕らだって、満雀ちゃんと遊べなきゃ寂しいですから」
「その通りっ。だから、双太さんも気にする必要はないですよ」
「ははは。いつも、頼りにしてるよ」
純粋にそう思ってくれているのが伝わってくるので、何だか照れ臭くなる。僕も龍美も、自然と口元がにやけてしまった。
「じゃあ、二人とも。早く行こー」
満雀ちゃんが、待ちきれないと言った様子で、僕と龍美の服の袖を引っ張る。その愛らしい仕草にもにやけつつ、
「よし、それじゃ行きますか。双太さん、後は任せてくださいな」
「ああ、よろしくお願い。また雨が降ってくるかもしれないから、そのときはすぐに帰るんだよ」
「心得てます」
「任せてくださいな」
そう答えて二人で頷き合うと、僕たちは満雀ちゃんの手を取り、双太さんに別れを告げて、学校を出た。
双太さんは、僕たちが敷地を出るまで、優しい笑顔で見送ってくれていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助
蔵屋
歴史・時代
わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。
何故、甲斐国なのか?
それは、日本を象徴する富士山があるからだ。
さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。
そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。
なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。
それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。
読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる