王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第三章 薄幸の兄妹たち

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「グレアム卿、どうですか、教え子の成果は?」
 アルバートはため息交じりにその場にいた、アシュリーが弟子入りしたと喜んでいた武術師範に声をかける。
 見ての通りだ。
 彼は二人を手のひらで指すようにしておどけてみせた。
 魔法を封じたのか?
 そうだろうな、多分‥‥‥天眼を開かなくても普段使える魔眼の一つでその程度は判断できる。
 数瞬先。五分先くらいの危険を察知できる、避別の瞳。
 それを使い、その場の流れている魔素を逆に戻せばいいのだから。
 そして驚いたのはアルバートだったーー
「グレアム卿!?
 まさか、なにもしないまま‥‥‥?!」
 聖騎士はニヤリと意地悪そうに笑った。
「聖騎士見習いなら、たかだか竜族に引けを取って貰っては困るんでな?」
 たかだか、そう言うかこの方は。
「それは・・・・・・確かに青龍王神教会の聖騎士ならば竜族とも互角に渡り合う方もいるでしょう‥‥‥。
 弟は‥‥‥まだ、見習い以下だーー」
 そうかな?
 グレアム卿は周りを見てみた前、アルバート王子。
 そういうように辺りに視線をやる。
 グレアム卿以下数十人の聖騎士に、魔導師、神官、賢者までが不足の事態に対応するためにその場にいながらも二人の人間と竜族との戦いを黙ってみていた。
 それはつまりーー
「水を差したのは、僕だということですか。
 まったくー‥‥‥」
 誰もがアシュリーを愚かだと、身体が不自由な王子だと相哀れむ中、講師たちは信じていたのだ。
 アシュリーのこの十年の努力を。
 そして、自分たちの代理人として、竜族との均衡を破れることを証明したかったのだろう。
「まあ、そういうことだね、第一王子。 
 もう少しいけば、いいところだったんだが?」
 グレアム卿は笑いながらさあ、どうする?
 まだやるかい?
 そう、二人の闘士に声をかける。
 擬態を解かないまま人間の姿とはいえ、イゼア竜公子はその拳も蹴りも竜のままの強さのはずだ。
 妙な手加減をしていなければの話だが‥‥‥
 どうするかな。
 話の持って行き方一つで全てが変わる気がする。
「イゼア竜公子、すまなかった。
 不注意は僕の責任だ。
 アシュリー‥‥‥すまない」
 この一言で流れが変わるか?
 しかしーー現実はそう甘くはないようだ。
「いやー‥‥‥あれはわたしにも問題があった。
 すまない、アルバート。
 動けるならー何よりだ‥‥‥」
 イゼアがまだ不服だ。
 そんな顔をして返事をかえす。
 彼の獰猛な獲物を狙う視線はアシュリーから離れることはなかった。
 そしてアシュリーもまた、
「兄さんー‥‥‥すまない。
 行けなくて。
 だけどいまは引っ込んでてくれないか」
 まだ、始末がついてないんだ。
 僕らのね。
 アシュリーはそう言い、再度のファイティングポーズを取る。
 人間ごときに負ける可能性を知るがいい、この竜族め。
 そんな怒気を孕んだ、行為だった。
 アルバートは収まりがつかなさそうな血まみれの二人を見て理由を知る。
「アシュリー‥‥‥まさか、話したのか!?」
 その言葉に驚き、そしてーー
「そうか、お前もか、第一王子。
 シェスは王国ぐるみで我が妹を侮辱したのか‥‥‥!!?」
 それは静かな死の宣告のようにも思えた。
 侮辱した、と来たか。
 なるほどな。
 被害者のリベイエ王国とオルゲート竜公国。
 加害者のシェス王国。
 それに被害者を擁護するブランシェ辺境国。
 いい顔合わせだ。
「侮辱、か。
 そうだね、さてーどうだろうな、イゼア竜公子?
 アシュリー、近づけるなよ?」
「おいっ、待てーー!?
 どこに行く気だ!!??」
 イゼアの雄たけびも制止も無視してアルバートは問題の渦中にいる人物。
 エリス竜公女の側に歩み寄る。
 同じ竜族が周りを固める中、アルバートは静かに言い放つ。
「どけ‥‥‥妻に夫がよるのを邪魔するのが竜公国の礼儀か?」
 と。
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