王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第三章 薄幸の兄妹たち

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 ふん‥‥‥お前らはそうやって騒いでいるがいい。
 僕には時間がないんだ。
 アルバートはエリス竜公女に再度、向き直る。
 その手を差し出す、どうか受け止めて頂きたい、と。
「でも‥‥‥そんなーー」
「竜公女。
 自然の心で決めて下さい。
 シェスはいつでも、あなた様を受け入れます」
 魔石のことは気にするな。
 そういう意味の一言だった。
「アシュリーが好きなら、側にいてやって欲しい。
 これは本心です」
 どうか。
 三度目でようやくエリス竜公女はアルバートの手を取る。
「エリスーーーーー!!!!」
 イゼア竜公子が怒鳴り声を上げるがその前にはアシュリーが立ちふさがった。
「よるな、イゼア。
 僕の妻子だ。 
 邪魔をすればー‥‥‥竜に戻ったお前でも倒す自信はあるぞ」
 夫になったアシュリーは家族を守ろうと更に強さを増したようにエリスには見えた。
 イゼアはふん、おもしろい。
 そう鼻で笑ってやる。
「聖騎士とて、賢者の加護や聖剣が無ければ満足には戦えんのだぞ?
 それも下級の竜族の兵士相手にだ。
 お前が竜王に繋がるわたしにかなうだと?
 その骨まで焼き尽くしてくれようか?」
 アルバートはこの時、止めるべきだと思った。
 アシュリーはいまならまだ終われる。
 だが、竜そのものになったイゼアにかなうそんな能力はない。
 そう感じていたからだ。
 だが、アシュリーは違った。
 不敵に笑い、窓の外を指差す。
「なら‥‥‥試してみるか?
 愚鈍な竜公子殿下?」
 プライドの高い竜公子を怒らすにはこれでも十分か?
 そうアシュリーは思っていた。
「愚鈍、か。
 その愚鈍さに騙されたのはお前ではないか、兄にな?
 正式にここを出れば、相手をしてやる。
 待っていろー‥‥‥」
 周りにいた竜族たちに支えられてイゼアは去って行く。
「愚鈍、ね?
 兄上、そろそろもう隠すのをやめたらどうですか?
 こちらもつきあうのがしんどくなりましたよ」
 平然と。
 二本足で歩いてくる弟に驚いたのはアルバートとエリスだ。
 二人とも唖然としてそれを見ていた。
「そんな‥‥‥旦那様??」
「アシュリー‥‥‥お前ーー」
 だから、こっちも疲れた。
 そう言ったでしょう、兄上?
 アシュリーはやれやれ、そうため息交じりに言う。
「俺の魔眼は、物を任意に動かすもの。
 そして、細やかな微細なものを再構築するもの。
 意味はわかるでしょう?」
 グレアム卿がその横に立ち、残念そうに言った。
「なんだ、勝負にならずか。
 お前の足は十年もあれば神経も筋肉も再生され、何よりーー
 その不動の魔眼は、自在にものを動かす。
 言い換えれば、重さすら自在に操る。
 場の力ですら、な?
 あいつの炎を跳ね返してやれば良かったのだ。空を飛びながら‥‥‥」
 さっさと聖騎士に入りに来い。
 グレアム卿はそう笑って去って行った。
「なんて魔眼だよ‥‥‥」
 呆れていうアルバートにアシュリーは呆れて言い返す。
「兄さんい言われたくないよ。
 ああ、それとーーエリスには返してくれよ。
 今すぐに」
 知っていたのかー‥‥‥
 なぜ分かったんだ?
 いぶかしむアルバートにアシュリーは笑って言う。
「この微縫の瞳は神経だのなんだの。
 全部見れるんだよ。気づくだろ?
 戻さなきゃ、兄さんでもーー」
 殺すよ?
 そうアシュリーは目で語っていた。
「戻すさ、アシュリー。
 僕の負けだ‥‥‥」
 アルバートは降参だ、そう答えた。
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