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第一章 天空大陸の主
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背後を見返してその異様な光景にアリスティアは言葉を失った。
あまりにも怖かったのか、それとも驚きすぎたのか彼女は表情を無くした顔でアルバートを振り向いた。
あ、あ‥‥‥
と何かを言いたげにしながらも声にならない声を一度のみ込んで息を荒くしている。
こういうのを凍り付いたと言うのかな?
アルバートはそう思いながら、自分からは馴染みの深い相手が浮かび上がる様を見ていた。
アリスティアはアルバートがこれまでに見たことがないほどにその尾を膨張させて、アルバートに助けを求めるように叫んでしまう。
「‥‥‥旦那様?
なっ!?
なんですか‥‥‥あの、光るモンスターは?」
アルバートはにっこりと円満の笑みを浮かべる。
「嬉しいな、旦那様と呼んでくれるなんて。
こんな時だからこそ、本音が出ると思うんだよね。
僕のアリスティア」
おっと。
途端、鋭すぎる張り手が飛んできた。
「僕の!!
じゃないですよ!!
本当に‥‥‥爪で切裂きましょうか??」
あ、これはだめだ。
本気で怒ってる。
「ごめん、からかいすぎた。
あれはあのねー、ほら上に浮かんでる。あそこ」
アルバートが指差すのは天空大陸。
賢者の都ハグーンがある場所だ。
つい、一時間ほどまえまで、二人はあそこにいたのだから言われなくてもそれは分かる。
「あのハグーン島が何か?」
「うん、二世紀前まであれは海中にあっただろ?
でも海中に水没したのは一万年前ほどらしいよ。
彼はねーー」
アルバートが言い終わらないうちに、その赤く朱色に光り輝くモノは二人を観察するのに飽きたらしい。
緩やかに波間を騒がせることなく、小波の中を空高く浮かび上がりその長い首先を向けてきた。
「あのハグーン島の地下に眠っていた、太古の竜だよ。
アリスティア。
本物の、魔族さ」
「魔族‥‥‥!!??」
悲鳴を上げるようにアリスティアが叫ぶ。
混乱している?
君も魔族じゃないかとアルバートはその様を不思議そうに見るが、アリスティアは怯えるばかりだ。朱き竜は少年と少女に向かい声をかけた。
「久しいな、シェスのアルバート。
天眼とやらの力が消えつつあるようだが?
それよりも、同族に会うのはこれもまた懐かしいな‥‥‥ラードリーとやりあった灰狼の娘か。
混じりものがないときた、アルバート、紹介はないのか?」
どこから声を出しているのか分からないが、それは直接、脳裏に響いているのかもしれない。
少女は混じりものがないと言われたことと、ラードリーというその名を耳にして更に驚いていた。
あまりにも怖かったのか、それとも驚きすぎたのか彼女は表情を無くした顔でアルバートを振り向いた。
あ、あ‥‥‥
と何かを言いたげにしながらも声にならない声を一度のみ込んで息を荒くしている。
こういうのを凍り付いたと言うのかな?
アルバートはそう思いながら、自分からは馴染みの深い相手が浮かび上がる様を見ていた。
アリスティアはアルバートがこれまでに見たことがないほどにその尾を膨張させて、アルバートに助けを求めるように叫んでしまう。
「‥‥‥旦那様?
なっ!?
なんですか‥‥‥あの、光るモンスターは?」
アルバートはにっこりと円満の笑みを浮かべる。
「嬉しいな、旦那様と呼んでくれるなんて。
こんな時だからこそ、本音が出ると思うんだよね。
僕のアリスティア」
おっと。
途端、鋭すぎる張り手が飛んできた。
「僕の!!
じゃないですよ!!
本当に‥‥‥爪で切裂きましょうか??」
あ、これはだめだ。
本気で怒ってる。
「ごめん、からかいすぎた。
あれはあのねー、ほら上に浮かんでる。あそこ」
アルバートが指差すのは天空大陸。
賢者の都ハグーンがある場所だ。
つい、一時間ほどまえまで、二人はあそこにいたのだから言われなくてもそれは分かる。
「あのハグーン島が何か?」
「うん、二世紀前まであれは海中にあっただろ?
でも海中に水没したのは一万年前ほどらしいよ。
彼はねーー」
アルバートが言い終わらないうちに、その赤く朱色に光り輝くモノは二人を観察するのに飽きたらしい。
緩やかに波間を騒がせることなく、小波の中を空高く浮かび上がりその長い首先を向けてきた。
「あのハグーン島の地下に眠っていた、太古の竜だよ。
アリスティア。
本物の、魔族さ」
「魔族‥‥‥!!??」
悲鳴を上げるようにアリスティアが叫ぶ。
混乱している?
君も魔族じゃないかとアルバートはその様を不思議そうに見るが、アリスティアは怯えるばかりだ。朱き竜は少年と少女に向かい声をかけた。
「久しいな、シェスのアルバート。
天眼とやらの力が消えつつあるようだが?
それよりも、同族に会うのはこれもまた懐かしいな‥‥‥ラードリーとやりあった灰狼の娘か。
混じりものがないときた、アルバート、紹介はないのか?」
どこから声を出しているのか分からないが、それは直接、脳裏に響いているのかもしれない。
少女は混じりものがないと言われたことと、ラードリーというその名を耳にして更に驚いていた。
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