王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第一章 天空大陸の主

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「な、なんだろうね、アリスティア??」
 たじろぐ少年はまだまだ自分のした結婚に対する認識が甘かったことを思い知らされることになる。
「なんだろうね、ではありません。
 いいですか、もう王子ではないのです。
 わたしも準男爵令嬢なんてものは捨てました。
 いまは単なる平民。アルバートとアリスティアです。
 物になれと言ったのも、求婚したのもあなたから。
 ならば、夫が妻を養うべき家は?
 食事は?
 寝るべき場所は?
 なにもかもなくても最初はかまいません。まずは働くべきでしょう?
 人前にでるのが問題があるのであれば、この山奥でその天眼なり、二人で協力して‥‥‥」
 途端、勢いを無くすアリスティアは尻尾を下げてうなだれてしまう。
「あのリアルエルム様が言われたようにどこかで田舎で過ごしませんか?
 冒険をしたい気持ちはわかります。
 男性ですから、それを支えてあげたいと思うのも本当。
 でも、アルバート。
 あなた、リアルエルムがいなければ‥‥‥すでにわたしは未亡人よ。
 いま天眼を開いて無事なのだってリアルエルムがくれたあの力のおかげじゃない」
 すぐに返事は‥‥‥でないわよね。
 でも、それをしなければ夫婦として続かないような気もする。
 急に虚しくなり、アリスティアはアルバートに背を向けた。
 もう降りましょう、寂し気にそう言いアリスティアは大樹の中へとその身をひるがえしていく。
「あ、おいーーアリスティア‥‥‥」
 機を失ったアルバートは先に大地に降り立った少女の隣に、静かに降りていく。
「アリスティアーー」 
 どう声をかけたものか。
 抱き寄せようとすると、少女はそれを跳ねのけて首を振る。
「ねえ、アルバートはどうしたいの?
 多分だけど、リアルエルム様がくれたこの記憶などを使えばわたしもそれなりに魔族として戦えるわ。
 あのイゼア竜公子並みにはーーでも、それでいいの?」
 アリスティアはうなだれたまま、アルバートの胸にその頭を埋めてくる。
「わかる?
 わたしが言いたいこと。
 あなたは王位争奪戦だの、幼少時のことを平気で語るけど。
 わたしにしてみれば、家族を救ってくれた恩人だし。
 何もかもその命令に従ってもいいと思ってもいる。
 でも、もういいんじゃない?」
 休んでも。
 その側にはわたしがいるからとそう、アリスティアは告げた。
「休んでも、か。
 だけど、いや、こういう発言は駄目なんだけど。
 行かないといけないことは無いんだ、ただーー」
 はあ‥‥‥そうアリスティアは大きくため息をついてしまう。
 この元王子はどこまでもダンジョン攻略を目指したいらしい。
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