王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第一章 天空大陸の主

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「やっぱり、天才王子でもまだ子供ね。
 冒険心だけではなさそうだけど、やらないといけないことがありそう。
 それ、ちゃんと話してくれたら付き合います。
 まあ、それでも条件次第、かな?」
「子供ねって‥‥‥まるで、僕より年上のような言い方をするんだね?
 条件って?」
 いぶかしむアルバートにアリスティアは、あバレた?
 そんな悪戯が見つかったような顔をした。
「条件は、話の内容によるわ。
 長い年月がかかるなら、二、三月。 
 この辺りで暮らせる準備をして子供とあなたを待ちます。
 短いなら、一緒にいくかな?」
「こ‥‥‥子供??」
 何言ってるの、アルバート?
 そうアリスティアは言う。
「もう灰色狼のメスはわたしも含めて四人だけよ?
 子供が欲しいのは当然じゃない。灰狼の子供は四年で成人するわ。
 十年も潜って、帰ってくるころには、大家族になってるかもね?」
 いきなりの告白にアルバートはたじろんでしまう。
「大家族って‥‥‥!?」
「だって、年に二回、灰狼は発情期があるし、一度に四人は産むわ。
 その子供たち同士で子を成せば、十年もすれば百人は越える。
 一つの国だって築けるわよ?
 ルケード大公国が、なぜ母上様を未亡人にしてわたしをあの学院に行かせたかわかる?
 妹たちを残したかも」
 理由は、まあいまの返事の通りだろう。
「その繁殖力、かい?」
「まあ、それもあるけど。
 能力にも拠るわ」
「能力?」
 そこまでは理解が出来てないよ、アリスティア?
 アルバートの脳裏には疑問符だらけだ。
 さすがの天眼も歴史に埋もれたはるかな太古のことまでは教えてくれない。
 君はなにを知ったんだい、あのリアルエルムから与えられた記憶から。
 それはアルバートにとって羨ましくも、少しばかり恐怖をはらんでいた。
「エイシャ様の黒狼も灰狼も魔王の家系。
 契約を交わした人間に不老不死を与えれる。
 黒狼は影を自在にあやつり、灰狼は光と影の双方にそれほど深くないけど干渉できる。
 ルケード大公国が最後の黒狼のメスだったエイシャ様を殺したかったのはその能力の覚醒を恐れてよ」
 そんな裏事情、誰も気づけないよアリスティア‥‥‥
「影を自在にってことはまさか‥‥‥」
 ルシアードの能力を更に強化したもの。
 ルケード大公国が恐れるのも無理はない話だ。
「まあ、リアルエルム様から頂いた記憶だと時間と空間に支配されない虚無を行き来できるようね。
 最高の暗殺者になるわ。さすが、ルケード大公国。
 エイシャ様の一族をあの手この手で滅ぼしてきただけのことはあるわね‥‥‥」
 しまった。
 エンバス卿に託したあのメモの内容はまったくの見当違いだ。
 エイシャ様がその能力に覚醒すれば‥‥‥ルシアードは本物の暴君になる。
 戻らなくては!?
 アルバートの決心は早かった。
 しかしーー
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