王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第一章 天空大陸の主

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「だめよ、アルバート。
 もう、歯車は回り始めた。あなたが回したの。
 いま戻れば、更に泥沼になるわ。
 ‥‥‥あなたを失いたくない。
 行かせないわ」
 それ以上の決意で、アリスティアは夫を止めに入った。

「アリスティア、しかしーールシアードを王にしようとしたのは僕なんだ」
 なら聞きますけど。
 アリスティアはアルバートを抱きしめて諭すように続ける。
「ルシアードは暗君なの?
 そんな男にあのエイシャ様は惚れると思う?
 いくら魔眼を利用したって、あれだけの貴族子弟子女からの信頼を勝ち取れる者があの学院にいた?
 アルバート、あなたの心には本当はまだ、王位への執着があるんじゃない?」
 それはー‥‥‥否定できない。
 自分でも理解しているからだ。
 何もかもを自分が差配できればシェスどころかーー
 この大陸に覇を唱える一大王国を短期間で作れると自負している自分がいる。
 その覇道に魅力を感じていないと言えば‥‥‥それは嘘になる。
「まるで、君はもっと年上の女性のように話すんだね。
 そう、子供でも育ててきたかのーー」
 まさか、それはないよね?
 アルバートはアリスティアを有りえないだろ?
 そんな目つきで見てしまう。
 少女は?
 いや、彼女はうーん‥‥‥と黙ってしまった。
「いるの、子供‥‥‥?」
 はは‥‥‥、どうしようかなー。
 そんな事を言い、アリスティアはアルバートを抱き上げた。
「ちょっ、どこからそんな力!?」
「あの記憶を貰ってからね、力の使い方を少しだけ知ったの。
 まあ、それはさておき。
 ここに大きな子供が一人いるわよ?
 戻って待ってるのは全員からの温かい家族の迎えだとでも?
 ねえ、アルバートはそう思うの?
 そんな天眼を常に開いていてもしなず、いまならイゼアとも互角以上に戦えるかもしれない。
 その上、覇道の魅力に取りつかれ、あまつさえ‥‥‥わたしまで物にして。
 戻れば、メアリージュン王女もエリスも、側室として迎えるつもり?
 わたしは二人を生かして置く気はないわよ、アルバート?
 側室なんて認めない!!」
 アリスティアはアルバートに強く宣言する。
「もう平民なのよ、わたしたち。
 平民は側室なんてもたないの。見るなら、わたしだけを見て欲しい。
 危険なことに飛び込むなら、まだダンジョン攻略の方がいい‥‥‥」
 そこまで呟き、アリスティアははっとなる。
 いまなんて言ったの、わたし!?
 ダンジョン攻略を……
「言わせたわね!?」
「あ‥‥‥ばれた?」
 なんて人なの!?
 どうも、この男性には一枚も二枚も上手すぎて勝てないらしい‥‥‥
「ふんっ」
 ポイっとものをほるように、アリスティアはアルバートを投げだした。
「子供はいません!!!
 まだ、そういう行為だってないわよ。
 ただ、年齢は四歳ほど上だけど。
 まだ二十歳ではないです。
 おばさんは嫌いですか、旦那様!?」
 返事次第では‥‥‥その爪先がなにをするかを物語っていた。
「い、いや。
 ない、よ。うん、ない。
 それでだね‥‥‥僕は年上の女性が向いているのかもしれない。
 足りない部分は導いてくれるかい?」
 まあ、そう言ってくれるのならば。
 側にいますわ、旦那様。
 アリスティアはアルバートにそう言い、そっと微笑んだ。
 爪先だけはしまわないままに。
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