王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第二章 暗黒神の地下神殿へ

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 君のその行動の早さと言うか、情緒の変化の激しさというか、僕は生涯振り回されそうで怖いよアリスティア。
 そんなことはおくびにも出さずに、アルバートはアリスティアの尾を注意深く観察する。
 いまは垂れてもおらず、かといって膨れてもいない。
 機嫌がいい時には左右に触れるのだが、どうにも反応が読めない。
 避別の瞳で数分後には仲の良い会話をしている姿が見えるが、これはあくまで予想される未来の姿の一つを投影したに過ぎない。
 そして、その爪先はまだ終われないままだ。
 呆れ半分、喜び半分?
 いや、未来への期待感とうまく言わされたことへの怒りが混じっているようにも見える。
 もう少し、女性の扱いになれておくべきだったな。
 恋人などという存在ができるのは、アリスティアが初めてなのだ。
 その上、勢いと風情で結婚まで口走る?
 いや、あれは本気だった。
 彼女を命がけで守る、その意思も本物だ。
 足りないのは、勇気だろう。
 アルバートはそう思う。
 幼少から誰も信じれないことが多々あった。
 アシュリーと母親だけが、信じあえる家族だった。
 いまはアリスティアがその代わりだ。
 信じれる勇気を持つんだ、アルバート!
 彼は自分自身を叱咤激励する。
 数年待ち続け、憧れ続けた女性が年長なのは少しばかり戸惑いを与えたがーー
「そうか、年上だから惚れたんだ‥‥‥」
「え?」
 思いがけない呟きに、アルバートもアリスティアも同時に驚いていた。
「ああ、いや。
 違うけど、それだけではないよ。
 ただ、包まれたいと思う時にいつも心にいたのは君なんだ、アリスティア。
 ずっとね‥‥‥」
「あのねえ、アルバート。
 わたし、お母さんじゃないのよ?」
 まったく、年寄り扱いされてるようだわ。
 アリスティアはそうぼやいてしまう。
「さっきはおおきな息子がいるって言ってたのは誰だっけ?」 
 年下の夫のからかいに年上の妻は、爪先を持ちだした。
「その発言をした女が、年上だったと見抜けなかったのはどこのだれかしら?」
 うーん、それは痛い発言だ。
 アルバートはしてやられた。
 そんな顔をした。
「しかし、不思議だね。
 なぜ、天眼でもわからなかったんだろうか?
 まあ、それはエイシャ様も同じだったけど」
 そうねえ、アリスティアは考えて一つの結論にたどり着いた。
「種族の古さじゃないかしら?
 でもそれなら‥‥‥人間の年齢がわからないのもおかしいわね。
 種族によってはその成長速度も変わるからかな?」
「それはあり得るね。
 元々は、いまのイゼアなどの竜を使役するための道具に過ぎないから。
 他種族のことまでは正確にわからなくても仕方ないのかもしれない」
 ふーん、まあいいけど。
 女性の年齢を知るのは命取りになるわよ旦那様?
 灰狼の妻は笑顔でそう言い、二人の後ろにそびえる岩山とその神殿の入り口を見上げた。
「ねえ、アルバート。
 なぜ、ここには誰も、そう百年以上も来た気配が無いの?
 まるで忘れ去られたように見えるわ」
 二人が立つ神殿の入り口から百エダほど手前。
 その後ろの大樹の森には野生動物やモンスターの行き来した後があるのに、神殿の入り口付近には誰も近寄った形跡がまるでない。
「見えない壁にでも守られているようにも思えるし、どうなっているのかしら‥‥‥」
 ふと思いつき、足元にあったこぶし大の岩を手にするとアリスティアはそれを放り投げてみた。
 そこは二人が先程、頂点まで登った大樹よりもはるかに向こうにある何かに触れて落ちてしまう。
「壁?
 遮断壁でもあるの?
 入ることも出ることもできない?」
 ねえ、帰りはどうするの!!??
 アリスティアは夫に心配と不安で詰め寄ってしまう。
「あ、あのねえ。
 リアルエルムがここまで転送したということは、ある程度の高位の存在でなければ出入りできないんだよ。
 意味が分かるかな?」
 ほら、おいで。
 そう言い、アルバートはアリスティアと共に先程の岩が落ちた部分を通過して向こう側に抜けてしまう。
「嘘!?
 なんでこんなことができるの!?」
「まあ、次は戻ろうか?」
 今度も同じくなにも抵抗するものがなく、すっとそこを通り抜けることができた。
「不思議ね‥‥‥まるで歓迎する者とそうでない者に別れているみたい」
「そうだね、ある程度の魔力、それに血や持ち物。
 君の灰狼の血とか、この神剣とか。
 あとは、魔王からの許可もあるんじゃないかな?
 リアルエルムはそれをくれたと思うよ?」
 アルバートはでは、行きましょうかお姫様?
 そう言い、手を出すがアリスティアはそれをはたいて返した。
「え、なんでさ?」
 不思議そうな少年に、年上の妻はそろそろご立腹だった。
「ねえ、正式にきちんとした求婚と、今夜の簡易的な宿と、食事。
 用意してきなさいな旦那様?」
 男性の務めでしょ?
 その笑顔はなかなかに怖いものだった。
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