王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第二章 暗黒神の地下神殿へ

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「ああ、そういうことなら」
 お任せください、お姫様。
 そう言い、アルバートはその場を後に森林へと分け入っていく。
 あまりにも自信満々な素振りに、アリスティアはそれを見て不安を覚えたほどだった。
「本当に良かったのかな?
 まあ、求婚云々はもういいんだけどね‥‥‥」
 左手に光る指輪が、彼女のこころを表していた。
 ふふふ、そう嬉しそうに微笑んでひとりだれもいない時間の中で微笑むアリスティア。
 自分を大事にしてくれる存在にようやく出会えた。
 たった一人の、愛するよ。
 そう言ってくれて、言い返したい年下で可愛い夫がそこにはいる。
 シェス王国に家族を保護してもらった代価。
 そう言われればそうかもしれない.
 「あとはそう後ろ指を指されても良い様に、彼を支える女になれるかどうか、かな……」
 アリスティアはすでに闇が支配を始めた辺りを見回してまだ燐光の放たれている神殿の方がいい。
 そう思い近付いてしげしげと観察した。
「変な物ね。
 これだけの隠匿物があれば、それなりに力のある魔導士や竜族、魔族や冒険者なら気づくものなのに。
 どれほどの長い時間をここで過ごしてきたのかしら、この神殿は」
 信者が見れば罰当たり、そう言われそうな気がしながらその爪先で神殿の階段を切り裂こうと試みるがーー
「痛ったーい!!
 なによこれ、鉄よりも硬いの?
 こんなただの大理石のようなものが?!」
 さすが太陽神アギトと並び称された二大古代神の神殿だ。
 血は出ていない、でも爪先は大きくかけてしまっていた。
「まったく。
 まえにアルバートに全部綺麗に根元から折られたからまた生やさないといけないなんて。
 あの時の旦那様、エイシャ様を自力で戦って敗北させたのかしら?
 その割には、いろんな魔眼を使っていそうだし‥‥‥。
 あの数分先を見れる魔眼は厄介ね。
 リアルエルム様に封印して頂くべきだったわ。
 先々のことまで知られていたんじゃ、何もできないじゃない。
 まるでわたしの意思がないみたいーー」
 そう思うとなんだか腹立たしくなってきてしまい、アリスティアは不機嫌になる。
 これまでの会話にしても、愛のささやきにしても彼はその数分先を見て行動したきたのかしら?
 猜疑心がムクムクと心に、入道雲のように湧き出してきてそれは止まるところを知らないように心を覆いつくしてしまう。
 ただそれを晴らす、一片の光も存在した。
 ありとあらゆるものの未来は決定してはいない。
 同じくあの魔眼を持つ友人がそう言っていたからだ。
 どれほど優秀な魔眼を持つ人間でも、神の用意した複数の道筋の数本しか見てとることはできない。
 選ぶのは己自身で、その後に結果がでる。
 そして、一粒の光がアリスティアの心に誕生する。 
「彼の行動と理性を信じてついていくと信じたんだから。
 騙されていても、それは自業自得。
 愛している、ね。
 あんな大空で求婚されて、魔王に会う恐怖を感じてもーー」
 あの言葉はまだ甘い感覚で心に残っている。 
 神殿の入り口に腰をかけてふと、もの思いにふけってしまう。
 王子を誘拐した?
 色仕掛けで主人を裏切り正妃の座に収まった?
 周囲の国家群からしてみれば、彼はまだのんびりとした風情のある王子という印象が強いだろう。
 元々、奴隷になる決心であの取引をしたのだ。
 彼は全てを背負ってシェスを守り姿を消した。
 なら、次は自分がそうしてみよう。
 アリスティアはそう決心する。
「それにしても遅いわねえ‥‥‥」
 あの新米の夫はどこで何をしているのか。
 山菜やそこいらの野鳥でいいのに。
 ふと一抹の不安がアリスティアの心をよぎった。
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