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第二章 暗黒神の地下神殿へ
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陽が完全に隠れてしまい、あたりにあるのは漆黒のとばりが降り始めた頃だ。
さすがに北国に近い地方なだけあって、陽もくれればうすら寒くもなる。
アリスティアは亜人で寒さにも強いが、アルバートは人間だ。
その点も不安になってきた。
「こんなに待たせるなんて。
どうしようかなー迎えに行こうかな?」
わたしが狩りをした方が早いかしら?
でもそれだと、アルバートの努力が無意味になるし恥をかいたと思うだろう。
なるべく、夫は立ててあげたかった。
いかに年下とはいえ、彼にもプライドはあるだろうから。
「うーん、でもそんなものにはこだわらない気もするけど。
どっちなのかしら。
アルバートはー‥‥‥プライドより、そうね。
彼はずっと自分を捨てて過ごしてきたからあれなのかもしれないわね」
周りを優先してきたからこそ、彼には愛する誰かにだけの感情表現が苦手なのかもしれない。
そう考えると、あの不器用さも納得できる気がしてきた。
ふと、後ろにある神殿を見上げてアリスティアは、リアルエルムがくれた灰狼族の記憶だの知識の片鱗を思い出してみる。
伝説では太陽神アギトと聖者サユキが、暗黒神ゲフェトと真紅の魔女ミレイアと戦ったとされている。
でも内実はそうではなかったとその知識は教えていた。
「ゲフェトは地下で大陸が割れるのを止め、アギトは地上で火山の噴火を止め、大地震を鎮めた。
その際に、地下から噴き出した異様な量の魔素をミレイアが利用した、か。
でも、ミレイアもミレイアで魔族から魔女となり、魔族のためだけの国を作ろうとしたのよね。
聖者サユキ派と魔族至上主義のミレイア派に別れてしまい大戦争。
結果として、人類が八割だった地上世界には魔王が乱立し、勇者召喚が頻繁に行われてー」
そして、魔族は地下世界へと移住し、亜人は北のこのゲフェトの神殿より向こうにある土地へと逃れて現在のような分布にまで広がった。
亜人は繁殖能力が高い。
「結局、亜人や魔族の神はゲフェト様なのよね。
アギト神信仰はすでに廃れてるし、いまは青龍王神だもの。
めんどくさいわね、本当に」
そう言いながら、まだ来ない、まだ来ないと尾は不機嫌に揺れ出した。
「可愛い年下の夫の支援なら、したいかな?」
アリスティアはもう待ちきれないと手近な大木に飛び上がり、辺りを観察する。
その鋭敏な聴力も嗅覚も、人間の数万倍のものがある。
さて、愛しい旦那様。
彼はどこにいるのだろう?
探ること数分。
「いるけど‥‥‥何してるのかしら?」
どうやら、歩いて一時間ほどの距離の盆地に彼はいるようだ。
一人黙々と何かをしているようにもうっすらと見えるがー
「まさか‥‥‥」
あの日、エンバス卿に話していた内容を盗み聞きしていたアリスティアはそれを思い返してみる。
ーーあるとしたら、目の前にある食材をどう調理すればいいか。
そんな理王の瞳。
いろいろな薬草や毒性のあるものを見分けられる、薬事の瞳。
あとはあれかな?
数瞬先。五分先くらいの危険を察知できる、避別の瞳。
まあ、それくらいだよ。
なんの役にも立たない。
まだあった。古代の文字を訳せる、知識の瞳。
それと、すこしだけの距離や、空間にものをいれて運べる、扉の瞳ーー
「理王の瞳の使い方はもっと複雑な方法があったけど。
あの人、それを使って山菜とか探してるんじゃ‥‥‥」
こんな北の国で、そんなに多くの食べれる植物があるわけないじゃない、アルバート!!!
なんとなく遅い理由を理解して、新妻は夫の元へと向かった。
さすがに北国に近い地方なだけあって、陽もくれればうすら寒くもなる。
アリスティアは亜人で寒さにも強いが、アルバートは人間だ。
その点も不安になってきた。
「こんなに待たせるなんて。
どうしようかなー迎えに行こうかな?」
わたしが狩りをした方が早いかしら?
でもそれだと、アルバートの努力が無意味になるし恥をかいたと思うだろう。
なるべく、夫は立ててあげたかった。
いかに年下とはいえ、彼にもプライドはあるだろうから。
「うーん、でもそんなものにはこだわらない気もするけど。
どっちなのかしら。
アルバートはー‥‥‥プライドより、そうね。
彼はずっと自分を捨てて過ごしてきたからあれなのかもしれないわね」
周りを優先してきたからこそ、彼には愛する誰かにだけの感情表現が苦手なのかもしれない。
そう考えると、あの不器用さも納得できる気がしてきた。
ふと、後ろにある神殿を見上げてアリスティアは、リアルエルムがくれた灰狼族の記憶だの知識の片鱗を思い出してみる。
伝説では太陽神アギトと聖者サユキが、暗黒神ゲフェトと真紅の魔女ミレイアと戦ったとされている。
でも内実はそうではなかったとその知識は教えていた。
「ゲフェトは地下で大陸が割れるのを止め、アギトは地上で火山の噴火を止め、大地震を鎮めた。
その際に、地下から噴き出した異様な量の魔素をミレイアが利用した、か。
でも、ミレイアもミレイアで魔族から魔女となり、魔族のためだけの国を作ろうとしたのよね。
聖者サユキ派と魔族至上主義のミレイア派に別れてしまい大戦争。
結果として、人類が八割だった地上世界には魔王が乱立し、勇者召喚が頻繁に行われてー」
そして、魔族は地下世界へと移住し、亜人は北のこのゲフェトの神殿より向こうにある土地へと逃れて現在のような分布にまで広がった。
亜人は繁殖能力が高い。
「結局、亜人や魔族の神はゲフェト様なのよね。
アギト神信仰はすでに廃れてるし、いまは青龍王神だもの。
めんどくさいわね、本当に」
そう言いながら、まだ来ない、まだ来ないと尾は不機嫌に揺れ出した。
「可愛い年下の夫の支援なら、したいかな?」
アリスティアはもう待ちきれないと手近な大木に飛び上がり、辺りを観察する。
その鋭敏な聴力も嗅覚も、人間の数万倍のものがある。
さて、愛しい旦那様。
彼はどこにいるのだろう?
探ること数分。
「いるけど‥‥‥何してるのかしら?」
どうやら、歩いて一時間ほどの距離の盆地に彼はいるようだ。
一人黙々と何かをしているようにもうっすらと見えるがー
「まさか‥‥‥」
あの日、エンバス卿に話していた内容を盗み聞きしていたアリスティアはそれを思い返してみる。
ーーあるとしたら、目の前にある食材をどう調理すればいいか。
そんな理王の瞳。
いろいろな薬草や毒性のあるものを見分けられる、薬事の瞳。
あとはあれかな?
数瞬先。五分先くらいの危険を察知できる、避別の瞳。
まあ、それくらいだよ。
なんの役にも立たない。
まだあった。古代の文字を訳せる、知識の瞳。
それと、すこしだけの距離や、空間にものをいれて運べる、扉の瞳ーー
「理王の瞳の使い方はもっと複雑な方法があったけど。
あの人、それを使って山菜とか探してるんじゃ‥‥‥」
こんな北の国で、そんなに多くの食べれる植物があるわけないじゃない、アルバート!!!
なんとなく遅い理由を理解して、新妻は夫の元へと向かった。
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