王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第二章 暗黒神の地下神殿へ

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 そこにたどり着いた時、まず出たのはため息だった。
 それも呆れたものではない。
 仕方ないなあ、この人は。
 そんな愛情を交えたため息だった。
「ねえ、王太子殿下?
 そろそろ、お目当てのものは見つかりましたか?」
 気づいてはいるのだろうけど、地面を熱心に探し、丹念にそれを集めている夫にそっと声をかけてみる。
 彼はその作業に夢中になっていたのだろう。
 はっ、と顔を上げて迎えに来た妻を見返した。
「あ、あれー‥‥‥うん。
 まあ、なんとかーー」
 そんな上着を抜いでまで、食べれる山菜だの植物を抱えるほどの量を採らなくてもいいのに。
 この子が元王子だということを忘れていたわ。
 アリスティアは優しく微笑んだ。
「ねえ、アルバート。
 それだけあると、三日はもちそうだけど?
 どうやって食べるのかな?」
 アリスティアには理王の瞳も薬膳の瞳もない。
 ただ、その鋭敏な嗅覚で毒ではないだろう。
 それが分かる程度だ。
 アルバートは一掴み持つと、アリスティアの側にやってきてそれを見せてくれた。
「オウム草と言うんだよ。
 見た目が、似てるだろ?」
 確かに。
 その草は、あの言葉を返す鳥のオウムによく似ていた。
「数種類あってね。
 緑のは駄目なんだ。
 でも暗くてよく見えなくてね。
 赤と青は、美味しいんだよ。
 アリスティアには見えるかい?」
「ええ、見えますけど。
 でもなぜ天眼でそれを見ないの?」
 不思議そうな顔をするアリスティアにアルバートは困った顔をする。
「実はね、リアルエルムが彼女の持つ二つの魔石の一つを僕にくれたようなんだ‥‥‥。
 それで開くとあまりにも魔力が大きすぎてさ。
 ほら、あれー」
 指差す先には、数体の狼やイノシシの下位の言葉などを話さない魔獣が死んだように転がっていた。
 まさか、魔獣を呼び寄せるなんて。
 そんなことは思いも至らなかったアリスティアは少しだけ反省していた。
 アルバートはこれらとの格闘で遅くなっていたのだと。
「でも、どうするのこれ?
 全部、死んでいるの?」
 魔獣たちを指差すアリスティア。
 アルバートはまさか、と否定した。
「雷で痺れされて、失神しているだけだよ。
 かといって放置すると他の魔獣に襲われるだろうし。
 どうしたものか、悩んでいたんだ」
「ふーん、そうなんだ‥‥‥。
 魔獣の心配はしても、妻の心配はしないのねー‥‥‥」
 つい、その一言が出てしまっていた。
 あ、しまった。
 そう思った時にはアルバートは申し訳なさそうな顔で、
「ごめんね、アリスティア。
 アリスティアなら、あの結界の中にいれば安全かな、と‥‥‥」
 頭を下げる夫にまあ、いいですけど。
 そう彼女は言うと、
「これとこれは食べれるわね。
 これは駄目。
 で、どうやって食べるの?」
 見た目がオウムのままのそれをかぶりつくのは少し気が引けた。
「ああ、下からね。
 こう、引き抜くんだよ」 
 足の部分をつかみ、頭を持つとアルバートはえい、と中身を引き抜いてしまう。
 その光景は少しだけ‥‥‥えぐかった。
「それ、生のままで食べれるのかな、アルバート???」
 焼かなくて大丈夫なの?
 そんな心配が先にたってしまう。
「ああ、大丈夫だよ。
 この外皮の部分だけ毒性があるけど。
 中は焼いた肉のような味がするから」
 え、この血がしたたるようなものをそのまま食べろ、と?
 遠慮したくなるがアルバートが先にそれにかぶりついているのを見てしまうとーー
「うーん‥‥‥えいっ」 
 パクリ、と一口噛みついてみたらこれがなかなかにジューシーでそれでいて生臭くない。
「へえ‥‥‥こんな植物もあるのね。
 でも、こんな名前聞いたことが無いんだけど。
 なぜ、ここにはたくさん自生しているの?」
 ふと、不思議になり質問してアリスティアは後悔することになる。
「ああ、それはね。
 これが大量に自生しているところには、ロブの縄張りだから」
 ロブとは狼の数倍大きい、牛並みの巨体を持つ純粋な魔族である。
 知恵もあり、言葉も話す。
 狩りも得意であり‥‥‥数十頭の群れで暮らす‥‥‥
「アルバート。
 逃げるわよーーー!!!」
 アリスティアは後ろに近づいてくる数体の魔物の気配を察知すると、慌てて上着にくるんだオウム草を抱えたアルバートを抱き上げて大木の上へと飛び上がった!

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