王太子殿下はモブさえいればいい

星ふくろう

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第四章 真紅の魔女ミレイアとの邂逅

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「さーあ、行きましょ、アルバート。
 年下だけど、勇ましい旦那様になってね?
 世界一の冒険者にもなってね?
 今日はあなたが誰よりも偉大で輝いて見えるわ、アルバート?」
 そんな誇らしげな言葉を、同じく誇らしげな顔をして年上の新妻はかけてくれる。
 今朝も辛い料理だねぇ、アリスティア?
 文句の一つでも言おうものなら、
「あら、なにを言っているの?
 世界一の旦那様は妻の手料理に文句なんてつけないわよ?」
 などと言われるに違いない。
 かといってまだ初夜すらも終えてないなんて言おうものなら――
 待っているのは‥‥‥去勢かもしれない。
 事実、昨夜はそんなことを言っていた。
 快楽の波の狭間で彼女が告げた言葉。
「浮気したら‥‥‥全部を食べてやる――」
 あの冷酷で最も残酷で、なによりに愛に満ちた一言。
 何があろうとも言ってはならない。
 
 ‥‥‥君はまだ処女だよ、だなんて。
  
 言えば、待っているのは――鮮血の嵐だ。
 間違いない。
 今も上機嫌ながら、その爪先は少しばかり出入りを繰り返している。
(間違いない。
 彼女は自分ではそれとして気づいていないだけだ。
 アリスティアの人格は破綻している。
 あの時、弟を殺して食べた時から――)
 アルバートは昨夜そっと、彼女の寝言から聞いた過去を聞いて察していた。
 アリスティアの精神は、非常に危ういところで正常を保っている。
 でも、それは彼女だけではない。
「僕も、だよね。
 うん、美味しいよアリスティアの手料理。
 死がふたりを分かつまで食べたいね?」
 死?
 その言葉に、アリスティアはピクリと反応する。
 おや、何か気に障ったかな?
 その言葉がダメだったか?
 アルバートの予測は少しばかり外れて、戻って来た。
「‥‥‥なさい」
「え?
 どうしたのさ?」
「ごめんなさい、アルバート」
 いや、いきなり謝るなんて君らしくないね、アリスティア?
 アルバートは怪訝そうな顔をする。
「なんで謝るのさ、アリスティア?
 君はなにも悪くない」
 うんー‥‥‥少女は、いや、年上の妻は押し黙ってしまう。
「寿命かい?
 人間と魔族の寿命の話かな?」
「うん‥‥‥。
 わたし、多分、千年近くは生きると思う――」
「それは長命で何よりじゃない。
 アリスティア、忘れていない?
 僕はもう、人間じゃないんだよ?
 リアルエルムの魔石をこの身に宿した時から‥‥‥似たようなものだよ、二人とも」
 そして、彼女は。
 妻は顔を明るくする。
 この子の感情表現?
 いや、起伏の激しさも管理しないとダメかな?
 いまは食事時。
 話は後にしよう――

「ねえ、アリスティア。
 少し、いいかな?」
 育児をしろと言われたなら、練習も必要。
 家事程度、出来るようにするさ。
 そう言い、アルバートは台所で後片付けをしようとする妻を手伝い共に休憩する。
「なあに、アルバート?
 なにか不満でも?
 ねえ、この後はダンジョン攻略よね?
 どこから入るの?
 もう目算は立ててあるの?」
 妻は矢継ぎ早に質問をたてつづけに出してくる。
「不満はないよ。
 ダンジョン攻略は少し休んで行こうね?
 君はまだ、疲れているようだし。
 どこから入るか、それも決めてあるよ。
 あのロブのボスが最後に言った、この神殿は深い。
 つまり、魔族で神殿の結界に入れる存在は多くいる。
 そして、入り口も完備されている。
 そういうことだと思うよ」
 ただ、その前に――
「僕はきみを全部、食べてしまいたい。
 まずは、お風呂から再現しようか?
 君の知らない君を、僕の知らない君を見せてよ。
 妻なら、嫌とは言わないよね?」
 その心に張った闇があるなら、全部、取っ払うよ僕がね。
 数百年かけてもさ。
 さあ、奥様。
 夫婦の始まりを始めようか?
 アルバートは拒否と抵抗を試みるアリスティアを抱えあげると、そのまま甘い朝の事情へと向かった。
 このあと、散々、噛まれ、引っ掛かれ、あんなに痛いなんてひどい!!!
 と、叱られて妻が不機嫌だったのは言うまでもない‥‥‥

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