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第一章 緑の水晶と山賊たち
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解体、しちゃうの‥‥‥?
茜はアッシュの向かう方向に視線を移してみる。
奥まったその場所は、大広間から近くそれでいて、一層深いところにある。
この国の不思議な点は、上下水道が完備されているところだ。
それも、故郷の日本並みに飲める水が存在する。
下水道もはるかに地下にだが存在していて、そこから――まあ、あまり大きな声で言えない商売をする連中も行き来すると聞いていた。
だが、感染症だの、ネズミだの。
何よりも、糞便の溜まりがないのだ。
そこに行きつくまでの間に、精霊だったり土の妖精のだったりして分解され、自然に近い水となって王都を還流している。
そんな高度な文明を築いているのに、彼等の文化はそうでもない。
とても近世とはいえない世界観で、奴隷もいるし貴族も、いま目の前で死に怯えている黒曜族の少女を担いで台所の奥へと階段を先に降りるアッシュもそうだ。
「不思議なものね‥‥‥」
「何がだ?
この国の存在がか?
それとも、この台所が地下にあることか?」
「いいえ、その前者であり、そうでないような。
数学や文字を読むなどの識字率やマナーは文明のレベルによって決定される、はずなの。
それなのに、この国には‥‥‥」
ああ、それな。
アッシュは天空を見上げるようにして、そこから視線を茜に降ろした。
「シワク、という家名はどこの国のものだ?
お前の世界にはあるのか?」
シワク?
珍しい名前。
茜はその問いかけに記憶を探る。
思い出すのは歴史の授業だ。
瀬戸内海に塩飽水軍という織田信長の時代から江戸時代後期、それどころか咸臨丸の操舵までする事に至った、海事に携わっていた一団が住んでいた諸島がある。
その名前がたしか、塩飽諸島。
そして、ある場所で知り合ったあの二人の女子高校生。
その片方も確か‥‥‥塩飽。
そんな、名前だったはずだ。
「そうね、旦那様のおっしゃるシワクが日本の塩飽なら。
学友にいたわ、一人。
弓羽‥‥‥元気かしら」
※(正しい魔眼の使い方(連載中)参照)
「ふうん、そうか‥‥‥。
では、マキナという名もお前の世界のものか?」
「マキナ?
うーん‥‥‥デウスエクスマキナなんて、はるか数百年前の劇作家の描いたキャラはいるけど。
まあ、いないこともないかなあ。
まきな、真希名?
しわく まきな、ならいるかもしれないし、いないかもしれないけど。
マキナそのものは、数百年の歴史があるからわからないわ」
そうか。
なら、仕方ないな。
アッシュは最後の階段を降り切ると、最後の扉を押し開けた。
「ほら、解体台だ。
ここでどれだけの鳥や豚や牛が解体されていったのかは知らんが。
黒曜族は初めてかもな?
覚悟はいいか?」
「-‥‥‥」
あら?
もう覚悟を決めた?
黒曜族の少女は解体台にその手前に広がる、数種類の包丁に、これは獣人を解体するようかなあ?
四方に手足をつないで固定するための鎖に‥‥‥
それらを見て、顔から血の気が失せていた。
茜はまあ、そうよねえ。
わたしなら、失神してるかも?
なんて、他人事ながら他人事のようにそれを眺めている始末。
助けようという気はさらさら出てこなかった。
「まあ、仕方ないわよ。
さんざん、人を殺したって聞いた後じゃね‥‥‥」
ゆっくり見物してあげるから、最後まで頑張りなさい。
何を頑張るのかわからないが、そう言うしかなかった。
彼女の生きざまを看取るのもまた、茜の役割のような気がしたからだ。
「黒曜族の肉って‥‥‥ねえ、アッシュ?
旦那様?
それって美味しいの?
鶏のように若鳥かな?
まだ柔らかい?
むね肉なら揚げたら、冷めても咥内に刺さらないし‥‥‥あなた、美味しい?」
「おい‥‥‥誰だ、食人癖があるなどとさんざん、俺をなじっておいて――」
「だって、食べるなら最後まで食べなきゃ失礼じゃない。
ねえ?
何か言いたい事ある?」
このやり取りは、ゴロン、と台の上に転がされて芋虫のようになりながらこっちもどうにか向き直った黒曜族の少女の自尊心を痛く傷つけたらしい。
彼女の瞳には怒りが生まれていた。
「ムウグっ!!??
フグっ!!
フウーー!!!
はあっー‥‥‥」
「あらら、押し込んでたの吐き出しちゃった。
ダメじゃん、それ咥えてなきゃ。
声が上まで漏れるでしょ?」
しょうがないなあ、なんて余裕をこいて近付いたのがまずかった。
口にその布を改めて押し込もうとした寸前、首を引かれて思いっきり茜は手首を噛まれてしまう。
「いった―いっ!!!
何すんのよ!!」
慌てて手を引くと、少女はこちらを睨みつけて不敵に笑っていた。
まるであれだ。
窮鼠猫を噛む‥‥‥
毒とかなきゃいいけど。
まあ、そうなれば解毒すればいいだけだし。
茜はまだ余裕があった。
少女に噛まれないように後ろに回って頭を抑えつける。
「ふうん、さっきまでここをさすられてあれだけ気持ちよくさせてもらった恩も忘れるんだ?」
「あっ!?
こら、やめっ‥‥‥て――わたしは、美味しくなんかない!!!
なんで一思いに殺さないのよ!!
獲物に恐怖なんて与えたまま殺したら、肉がーあああ‥‥‥だめ、そこはダメ‥‥‥」
ダメ、とか喘いでんじゃないわよ。
命がかかったこの場で何やってるんだか。
そう思いながら、弱いんだ、ここ。
へえ?
誰だっけ、わたしの手首噛んだの?
こうやって快楽与えて首でもはねたら肉も柔らかいって自分で教えてるのに気づかないの?
呆れた子。
茜はそうなじってやる。
「そんな――そんなあああ――――っ!!!
お願い、殺さないで、まだ子供も成してないの!!
もう、一族も少ないのに‥‥‥羽なら、水晶なら差し上げます!!
お願い‥‥‥殺さないで」
「子供?
ああ、そういえば――」
黒曜族の女は数が少ない。
そうアッシュが言っていたのを思い出し、茜はそこをさするのをやめた。
子供かあ。
それを言われたら、辛いな。
「あなた、まだ男性は知らないの?
子供もいないの?
結婚は?」
少女は顔を赤くして、覗き込む茜にぼそりと呟いた。
まだ、何も知らないの、と。
「そう‥‥‥子供、か。
それは――どうします、旦那様?
なぜ、さっきからずっと見てるの?」
アッシュは髪をかき上げて困った顔をしていた。
子供かあ。
うーん、と悩むように茜を見て、黒曜族の少女を見て。
そして、ふと、茜に問いかける。
「茜。
まさか、未婚ではないとか、出産経験があるとか‥‥‥?」
「ねえ、アッシュ。
この流れでその質問、意味が分かりませんわ、旦那様。
未婚です。
日本では十六歳から結婚できるけど。
そんなの稀だわ。
だいたい、二十歳を過ぎてよ。
死ぬのは八十から九十歳だし‥‥‥急ぐことないの。
それに、出産もないわよ」
もしあったら何か不都合でもあるの?
妾にするのに?
逆に問いかけられてアッシュは言葉に詰まる。
もし、子供がいたとしてもそれはこの世界に来る前のことだろう。
何より――
「ねえ、旦那様。
マールが子供を授かると思っているの?
もしそうなら、これまで来た誰かが‥‥‥産んでいるでしょ?」
わたしたちの身体は不老不死で、時間が止まっているようで、故に子供なんて出来ませんよ?
茜は懇切丁寧にそう説いてやる。
「むしろ、子供を望むならこの子に産ませたらどう?
あなたも、高家の血筋の子供なら‥‥‥黒曜族の迫害も止むかもよ?」
「え‥‥‥。
だって、そんな貴族様がわたしたちを抱くなんてー‥‥‥ありえない」
「それを決めるのは旦那様。
あなたじゃないわ。
それにあなただって、あの男たちに指揮していたからにはそれなりの地位の父親がいるんじゃないの?」
そう、あそこにいた黒曜族の男たちは彼女の指揮に従順に従っていた。
それを思えば、この娘だって低い地位とは限らない。
もしかすれば、族長?
とかそんな上位の存在かもしれないからだ。
「わたしは‥‥‥そんなに上ではない。
でも、氏族の長の娘ではある。
わたしたちだって、あんな非道な真似をしたかったわけじゃない。
それにー‥‥‥。
外堀のさらに外にある豪農だのを襲ったのも、商家を襲ったのもわたしたちではない!!」
そう、顔を上げて?
頑張って力説する彼女だが、茜もアッシュもそれを聞き入れるほどお人好しではない。
アッシュはいい加減にしろ。
そう怒鳴りそうになっていた。
「なら聞くが、昨夜はなぜあの場にいた?
誰の指示だ‥‥‥?」
少女は顔を伏せる。
言えば、誰かが責めを負わされる。
そういう雰囲気だった。
だが、言わないと自分は殺されるだろう。
高家の者なら仲間も救ってくれるかもしれない――
言うべきか?
迷いながら、少女は口を開いた。
「依頼‥‥‥されたんだ。
わたしたちもまともに生きてはいない。
オルバイル山の一部で山賊まがいのことをしているけど‥‥‥命までは奪ったりはしない。
あの商家を襲え、と。
そう依頼されたんだー‥‥‥」
「依頼?
わざわざオルバイル山から?
あんな南の高地から行商人でも襲っていた山賊がこの王都へ?
誰から依頼されたんだ?
その内容は?」
言えば、仲間の釈放にもかけあえるかもしれんな?
アッシュはほとんどそんな望みはない一言をかける。
だが、黒曜族の少女はそれを聞き、話す気になったようだ。
「あいつらだ。
王国の権利を守るとか‥‥‥そう言って来たんだ。
やれば、別の氏族の姫様を預かってるのを返す。そういう約束だった‥‥‥ダル・エール」
その単語にアッシュの顔に大きな動揺が走ったのを、茜は見逃さなかった。
茜はアッシュの向かう方向に視線を移してみる。
奥まったその場所は、大広間から近くそれでいて、一層深いところにある。
この国の不思議な点は、上下水道が完備されているところだ。
それも、故郷の日本並みに飲める水が存在する。
下水道もはるかに地下にだが存在していて、そこから――まあ、あまり大きな声で言えない商売をする連中も行き来すると聞いていた。
だが、感染症だの、ネズミだの。
何よりも、糞便の溜まりがないのだ。
そこに行きつくまでの間に、精霊だったり土の妖精のだったりして分解され、自然に近い水となって王都を還流している。
そんな高度な文明を築いているのに、彼等の文化はそうでもない。
とても近世とはいえない世界観で、奴隷もいるし貴族も、いま目の前で死に怯えている黒曜族の少女を担いで台所の奥へと階段を先に降りるアッシュもそうだ。
「不思議なものね‥‥‥」
「何がだ?
この国の存在がか?
それとも、この台所が地下にあることか?」
「いいえ、その前者であり、そうでないような。
数学や文字を読むなどの識字率やマナーは文明のレベルによって決定される、はずなの。
それなのに、この国には‥‥‥」
ああ、それな。
アッシュは天空を見上げるようにして、そこから視線を茜に降ろした。
「シワク、という家名はどこの国のものだ?
お前の世界にはあるのか?」
シワク?
珍しい名前。
茜はその問いかけに記憶を探る。
思い出すのは歴史の授業だ。
瀬戸内海に塩飽水軍という織田信長の時代から江戸時代後期、それどころか咸臨丸の操舵までする事に至った、海事に携わっていた一団が住んでいた諸島がある。
その名前がたしか、塩飽諸島。
そして、ある場所で知り合ったあの二人の女子高校生。
その片方も確か‥‥‥塩飽。
そんな、名前だったはずだ。
「そうね、旦那様のおっしゃるシワクが日本の塩飽なら。
学友にいたわ、一人。
弓羽‥‥‥元気かしら」
※(正しい魔眼の使い方(連載中)参照)
「ふうん、そうか‥‥‥。
では、マキナという名もお前の世界のものか?」
「マキナ?
うーん‥‥‥デウスエクスマキナなんて、はるか数百年前の劇作家の描いたキャラはいるけど。
まあ、いないこともないかなあ。
まきな、真希名?
しわく まきな、ならいるかもしれないし、いないかもしれないけど。
マキナそのものは、数百年の歴史があるからわからないわ」
そうか。
なら、仕方ないな。
アッシュは最後の階段を降り切ると、最後の扉を押し開けた。
「ほら、解体台だ。
ここでどれだけの鳥や豚や牛が解体されていったのかは知らんが。
黒曜族は初めてかもな?
覚悟はいいか?」
「-‥‥‥」
あら?
もう覚悟を決めた?
黒曜族の少女は解体台にその手前に広がる、数種類の包丁に、これは獣人を解体するようかなあ?
四方に手足をつないで固定するための鎖に‥‥‥
それらを見て、顔から血の気が失せていた。
茜はまあ、そうよねえ。
わたしなら、失神してるかも?
なんて、他人事ながら他人事のようにそれを眺めている始末。
助けようという気はさらさら出てこなかった。
「まあ、仕方ないわよ。
さんざん、人を殺したって聞いた後じゃね‥‥‥」
ゆっくり見物してあげるから、最後まで頑張りなさい。
何を頑張るのかわからないが、そう言うしかなかった。
彼女の生きざまを看取るのもまた、茜の役割のような気がしたからだ。
「黒曜族の肉って‥‥‥ねえ、アッシュ?
旦那様?
それって美味しいの?
鶏のように若鳥かな?
まだ柔らかい?
むね肉なら揚げたら、冷めても咥内に刺さらないし‥‥‥あなた、美味しい?」
「おい‥‥‥誰だ、食人癖があるなどとさんざん、俺をなじっておいて――」
「だって、食べるなら最後まで食べなきゃ失礼じゃない。
ねえ?
何か言いたい事ある?」
このやり取りは、ゴロン、と台の上に転がされて芋虫のようになりながらこっちもどうにか向き直った黒曜族の少女の自尊心を痛く傷つけたらしい。
彼女の瞳には怒りが生まれていた。
「ムウグっ!!??
フグっ!!
フウーー!!!
はあっー‥‥‥」
「あらら、押し込んでたの吐き出しちゃった。
ダメじゃん、それ咥えてなきゃ。
声が上まで漏れるでしょ?」
しょうがないなあ、なんて余裕をこいて近付いたのがまずかった。
口にその布を改めて押し込もうとした寸前、首を引かれて思いっきり茜は手首を噛まれてしまう。
「いった―いっ!!!
何すんのよ!!」
慌てて手を引くと、少女はこちらを睨みつけて不敵に笑っていた。
まるであれだ。
窮鼠猫を噛む‥‥‥
毒とかなきゃいいけど。
まあ、そうなれば解毒すればいいだけだし。
茜はまだ余裕があった。
少女に噛まれないように後ろに回って頭を抑えつける。
「ふうん、さっきまでここをさすられてあれだけ気持ちよくさせてもらった恩も忘れるんだ?」
「あっ!?
こら、やめっ‥‥‥て――わたしは、美味しくなんかない!!!
なんで一思いに殺さないのよ!!
獲物に恐怖なんて与えたまま殺したら、肉がーあああ‥‥‥だめ、そこはダメ‥‥‥」
ダメ、とか喘いでんじゃないわよ。
命がかかったこの場で何やってるんだか。
そう思いながら、弱いんだ、ここ。
へえ?
誰だっけ、わたしの手首噛んだの?
こうやって快楽与えて首でもはねたら肉も柔らかいって自分で教えてるのに気づかないの?
呆れた子。
茜はそうなじってやる。
「そんな――そんなあああ――――っ!!!
お願い、殺さないで、まだ子供も成してないの!!
もう、一族も少ないのに‥‥‥羽なら、水晶なら差し上げます!!
お願い‥‥‥殺さないで」
「子供?
ああ、そういえば――」
黒曜族の女は数が少ない。
そうアッシュが言っていたのを思い出し、茜はそこをさするのをやめた。
子供かあ。
それを言われたら、辛いな。
「あなた、まだ男性は知らないの?
子供もいないの?
結婚は?」
少女は顔を赤くして、覗き込む茜にぼそりと呟いた。
まだ、何も知らないの、と。
「そう‥‥‥子供、か。
それは――どうします、旦那様?
なぜ、さっきからずっと見てるの?」
アッシュは髪をかき上げて困った顔をしていた。
子供かあ。
うーん、と悩むように茜を見て、黒曜族の少女を見て。
そして、ふと、茜に問いかける。
「茜。
まさか、未婚ではないとか、出産経験があるとか‥‥‥?」
「ねえ、アッシュ。
この流れでその質問、意味が分かりませんわ、旦那様。
未婚です。
日本では十六歳から結婚できるけど。
そんなの稀だわ。
だいたい、二十歳を過ぎてよ。
死ぬのは八十から九十歳だし‥‥‥急ぐことないの。
それに、出産もないわよ」
もしあったら何か不都合でもあるの?
妾にするのに?
逆に問いかけられてアッシュは言葉に詰まる。
もし、子供がいたとしてもそれはこの世界に来る前のことだろう。
何より――
「ねえ、旦那様。
マールが子供を授かると思っているの?
もしそうなら、これまで来た誰かが‥‥‥産んでいるでしょ?」
わたしたちの身体は不老不死で、時間が止まっているようで、故に子供なんて出来ませんよ?
茜は懇切丁寧にそう説いてやる。
「むしろ、子供を望むならこの子に産ませたらどう?
あなたも、高家の血筋の子供なら‥‥‥黒曜族の迫害も止むかもよ?」
「え‥‥‥。
だって、そんな貴族様がわたしたちを抱くなんてー‥‥‥ありえない」
「それを決めるのは旦那様。
あなたじゃないわ。
それにあなただって、あの男たちに指揮していたからにはそれなりの地位の父親がいるんじゃないの?」
そう、あそこにいた黒曜族の男たちは彼女の指揮に従順に従っていた。
それを思えば、この娘だって低い地位とは限らない。
もしかすれば、族長?
とかそんな上位の存在かもしれないからだ。
「わたしは‥‥‥そんなに上ではない。
でも、氏族の長の娘ではある。
わたしたちだって、あんな非道な真似をしたかったわけじゃない。
それにー‥‥‥。
外堀のさらに外にある豪農だのを襲ったのも、商家を襲ったのもわたしたちではない!!」
そう、顔を上げて?
頑張って力説する彼女だが、茜もアッシュもそれを聞き入れるほどお人好しではない。
アッシュはいい加減にしろ。
そう怒鳴りそうになっていた。
「なら聞くが、昨夜はなぜあの場にいた?
誰の指示だ‥‥‥?」
少女は顔を伏せる。
言えば、誰かが責めを負わされる。
そういう雰囲気だった。
だが、言わないと自分は殺されるだろう。
高家の者なら仲間も救ってくれるかもしれない――
言うべきか?
迷いながら、少女は口を開いた。
「依頼‥‥‥されたんだ。
わたしたちもまともに生きてはいない。
オルバイル山の一部で山賊まがいのことをしているけど‥‥‥命までは奪ったりはしない。
あの商家を襲え、と。
そう依頼されたんだー‥‥‥」
「依頼?
わざわざオルバイル山から?
あんな南の高地から行商人でも襲っていた山賊がこの王都へ?
誰から依頼されたんだ?
その内容は?」
言えば、仲間の釈放にもかけあえるかもしれんな?
アッシュはほとんどそんな望みはない一言をかける。
だが、黒曜族の少女はそれを聞き、話す気になったようだ。
「あいつらだ。
王国の権利を守るとか‥‥‥そう言って来たんだ。
やれば、別の氏族の姫様を預かってるのを返す。そういう約束だった‥‥‥ダル・エール」
その単語にアッシュの顔に大きな動揺が走ったのを、茜は見逃さなかった。
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