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星ふくろう

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ゆきの過去

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 数日後。
 オークション会場に繋がるいくつかの車輌専用の入り口から、ゆき専用に与えられた見えない駐車場。
 ある壁奥に作られたというか、入り口を偽装されたそのガレージはあまりにも広すぎた。
「無駄よねえ、これ。
 天井はまあ、構造もあるから文句ないけど、どうよリオ。
 この横幅。大型ドラックだって入れる」
 車を降りながらあきれたようにゆきが呟いた。
「元々、そういった荷物の搬入場を改装したのでは?」
 そうそう、そうなのよねえ。
「あ、あんたはそのままでいいわよ」
「え、でも御主人様。
 いいの、よっと」
 ゆきはリオを助手席から軽々と片手で抱き上げる。
「え……恐れ多いです」
「いいのよ、この方が話通しやすいから」
「話‥‥‥?」
 認識用というよりは奴隷としての自覚からだろう。 
 当たり前のように首輪をしようとするその手を止める。
「新しいものを頂けるんですか?」
 いましているのは以前の飼い主がくれたものだ。
 思い出としては以っておきたかったが、つけるのはゆきに気兼ねしていたリオだった。
「欲しいの?」
「はい、リオはゆき様から頂きたいです」
 まあ、いきなりは、無理か。
「わかった。
 どこで買うのあんなの?」
「あの……会場で販売するブースがあります」
「あー……。
 あそこそれ系のどころかほとんど置いてるもんね。
 家具から兵器まで。
 警察とか入ったら戦争できるくらいあるし。
「ただねーあそこの武器、中古過ぎてまともに撃てるのか。
 あたしなら買わないけど。
 白石も場所貸す相手はもう少し選ぶべきよね‥‥‥」
「武器‥‥‥?」
 普段のゆきからは出てこない単語が、今夜は溢れ出てくる。
 知らない主人の側面をたくさん知れることは、他の奴隷よりもよリオは優位になれた気になれた。
 同時に知れば知るほど、処分される可能性が高まることもこの幼い奴隷は理解していた。
 途端、抱き上げられているリオが、ゆきの背中に回している両手に力が入る。
「調べても処分なんてしないわよ。ばか」
 リオにだけ聞こえるようにゆきはささやいてやる。
「ずっとですか?」
「あんたがいたいだけ、ここにいなさい。
 いまいる場所にね」
 あーもう、あんたたち遅い。
 この建物入る前から分かってるでしょーー?
 ゆきの所有物ではない名を名乗ることも許されないそんな単なる商品というよりは、来客の出迎えように白石が置いているメス犬たちが入り口の両サイドに列をなして伏せのポーズで頭を下げている。
「お帰りなさいませ、御主人様」
「まあ、その声を揃えていうのだけはまともに教育されてるけど‥‥‥」
 慌てて出迎えにきた警備の黒服たちがゆきにほら、と手で合図され懐からムチを取り出す。
 乗馬用などだと皮膚の痛みが激しいから、もう少し素材を柔らかくしたものだ。
「ほら、伏せだけしない。
 挨拶、チンチンくらいしなさいよ。
 その程度の自由は与えられてるでしょー??」
「あ、いや先生、こいつらは顔を上げることすら許可がないと‥‥‥」
 黒服が慌てて報告する。
「ふーん‥‥‥ならほら、やりなさいすぐに!」
 女王様も真っ青?
 いやいやとんでもない。
 やらなきぃ処分するわよ。
 命がけの命令がそこには含まれていた。
 思わず、リオもそれに習おうとするほどだ。
「あんたがしてどうすんのよ。
 ここにいなさい。命令」
「でもーーはい、ゆき様」
「そうよ、それでいいの。
 ほら、もっと腰突き出す。
 なによこれ、胸が見えないでしょ?
 手は乳房の下。
 もっと指先のばす、横があいてるんだからさっさと股広げる!
 背筋崩すなメス豚!」
「先生ーーこれでもこいつらはこれ専用に‥‥‥。
 あんまりいじめないでやって下さいよ」
 黒服が両サイド総勢十数頭が何か言われては鞭打たれ悦びよりもそのプライドが崩れていくのが目に見えて擁護に入る。
「はあ?
 これは商品。人間じゃないの、ただの動く肉の塊。
 躾けたら濡らす、犬が人間の女の形してるだけよ?
 違うの?」
「いや、その通りですがーー」
「じゃあ、教育が悪いだけじゃない。
 この子たちが悪いとは言ってないわ。これで処分とかしたら許さないわよ?
 罰を下すなら、教えた上の人間にしなさいね?
 分かった?
 一頭でも肉にしたとか、その理由が例えいきなりの心臓停止でも‥‥‥」
「わかりましたよ。
 そこまで言うなら、先生のとこで買えばいいじゃないですか‥‥‥」
 ふうん、ゆきは意地悪く言ってやる。
「この組織ごと買い上げてやろうか?」
「冗談がーー」
「白石に聞いてみなさいよ、あたしがそれを出来るかどうか。
 命が惜しくないなら、ね」
 黒服にも意地がある。丁重にもてなすようには指示は受けているがこれは度が過ぎている。
「先生こそ、ここがどこだか‥‥‥やり過ぎたら」
「そうねえ、ならあんたはどう思う?」
 黒服たちのまとめ役。
 オークショニアにもなることのある十数名の幹部の一人。
 仮面がその身分の証になる男にゆきは視線をやる。
「大変申し訳ございません、ロード」
「うん、わかればいいのよ。
 あ、こいつには何もしないようにね?
 だめよ? いい?」
「かしこまりました。
 よかったな、命を頂けて」
「そん、な‥‥‥」
 唖然とする黒服を邪魔、と蹴とばすとゆきは怯えて自分を見るリオの視線を感じた。
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