婚約破棄~二度目の人生を手にした侯爵令嬢は自由に生きることにしました!!

星ふくろう

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第一章 自由への渇望

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 ザサッーー

 生き延びた‥‥‥?
 どこまでもつのる不信と不安感。
 誰かがいるかもしれない。
 月をみた瞬間の自由を得た感触は、普段の生活をしていれば気にしない程度の鳥の羽ばたきの音ですらーー
 その心を豹変させていた。
「だめ‥‥‥。
 まだ怖いわーなんなのよ、もう‥‥‥」
 ムクドリか何かは分からないが何かが、空を飛び、木々の間を飛翔したらしい。
 こんなつまらないことで怯えて身体がすくむなんて‥‥‥
「寒い、どうしようー‥‥‥」
 こんなところにまともに暖が取れるものがあるはずがない。
 誰かは来るだろうがさっさと引き上げていくような処刑場だ。
 衣類など、望む方がどうかしているわ。
 そうナターシャは思った。
 民家を探すか、どこかで暖を取る方法を考えるしかない。
 どうすればいいだろ‥‥‥
 思いつくのはーー
 はあー、そうナターシャは思いため息をついた。
 あれしかない。
「やるしか、無いわね‥‥‥」
 そう呟くと彼女はここに連れられてきた時に通ったはずの道を思い出し、そちらへと歩を進めようとする。
 ふと、空を見上げると月がだいぶ天頂からそれていた。
 深夜まではまだ時間があるはず。
 明け方までは、まだ数時間。
 少なくとも、六、七時間はかかるだろう。
 さまよいあるくわけにはいかない。
 あの細道をどうにか滑り落ちないように行かなけれなだめね。
 でも、心細い。
 何かないかしらーー
 そう思い、辺りを見渡した時だ。
 ふと、鈍い光るものをナターシャはその視界の隅に見てとめた。
「何だろう?
 この手足にかかってる枷と同じなら嫌ね‥‥‥」
 情けなく笑いそれがある方に足を踏み出す。
 数歩歩み寄ると、そこだけの地面が違うことにナターシャは気付いた。
「何これ、柔らかい?」
 先程までの人工的な硬さのあるものではない自然な土壌。
 それのなかでも、腐葉土が溜まったようなそんな感触だ。
「ここから先は自然のまま、そういうことかしら?」
 鈍い月明かりのなかでその地面は褐色に見えた。
 まるで汚泥のような?
 このまま進んで大丈夫?
 その辺りにあった木の枝を試しにその地面に突き刺してみる。
 ズブズブと埋まればどうしようかと思ったが、そんなことはなかった。
「そっか‥‥‥ここはあれが作られるまえの土を掘り出した後なんだわ」
 あの深さの穴を掘ったのだ。
 それはどこかに土を捨てたはずだ。
 多分、その場所がここなのだろう。
 ナターシャは素足のまま、そっとどうか崩れ落ちませんように。
 そう願い、ゆっくりと歩を進めて行く。
 でも、なんでこんなに古い地層のところに光を放つものが?
 なにかの金属片か。
 この枷を外せる何かであればいいのに。
 そんな淡い期待も、その場に行ってみればもろくも崩れ去った。
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