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第三章 スレイプニール峡谷
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ナターシャが塔の幽閉から抜け出してオルバイル山の奥深くへと姿を消した数日後。
歌劇場でサーシャと共に歌劇を楽しんでいるエルウィン王子にある報告が届いていた。
たった数事だが言葉を交わして戻るその人物は、あの男。
ナターシャの前で三人の囚人の首を跳ねた子爵だった。
彼はその場を去る際に、一言だけ王子に言い残していく。
「あの衆人には裁判を受ける権利があります。
二週間の後に、確認に参ります」
そう短くだけだが、職務に忠実な貴族は一礼をして去って行く。
王子は面白くなさそうに、彼から漂ってきた血の臭いに顔をしかめた。
「ふん、二週間など‥‥‥」
もっと早くに削いでおくべきだろう?
不安要素など。
なあ?
エルウィンはサーシャにそう語り掛ける。
「王子様はどこまでも‥‥‥」
「そう言うな、慎重に慎重を来たすことは何も悪いことではない。
まあ、逃れれはせんだろうがな……」
あの場にいた者たちをそのままにしておくのもあとあとの面倒ごとにつながるか?
「問題の場面を見た観客は少ない方がいいな‥‥‥」
しかし、そうなるとこの女も口の軽さだけは素晴らしいものがある。
フラン公爵も多くの荘園を抱えていたな。
あの峡谷周りの土地も豊かな農園が広がっていたはずだ。
国境付近というのは考えものだが、確か、飛び地で王国の西側にも広大な牧草地と馬を数百頭飼育していたはずだ。
資産というものはいくら有ってもいい。
「一夜に二人、というのもまあ、悪くないな」
笑顔で見つめてくるエルウィンにサーシャはどうかしましたか?
そう聞き返す。
「うん、そうだな‥‥‥。
あの、王子の衣装だが。
もう必要ないとは思わないか?
あの女が袖を通したものなど、もう僕には必要がないものだ」
「ええ、そうですわね。
あの意匠も古い時代のもの。
そろそろ、新しい風が入って来てもいい頃ですね」
うん、いい返事だ。
「では、サーシャ。
一つ、僕のために人形になってみないか?」
人形‥‥‥???
「なんでしょうか?
人形、とは?」
不思議そうにサーシャは聞き返す。
王子はなに、新しい衣装を確かめたいだけだ。
王妃のものも用意しなくてはならないからな?
そう伝えると、サーシャは納得したようにうなづいた。
「それは素晴らしいですわ、わたしは青い色のドレスが好きなんです」
嬉しそうに、眼下に見える歌劇の主演女優が着るドレスと同じ色を少女は思い描いて顔を輝かせる。
「そうか、ならば‥‥‥用意させよう。
すぐにでも、な?」
そして数時間後ーー
エルムンド学院が誇る二本の尖塔の片方の上に一組の男女がいた。
その後ろには数名の男たちが控えている。
まるでそこから後には引かせない。
そうとでもいうかのように、彼らはその入り口を固めていた。
「お、王子様ーー!!??
なぜー‥‥‥なぜーーっ!?」
天空には闇夜に三日月が。
眼下には激しく渦巻く風に吹かれている王都が見え、サーシャの足元には数歩分の幅しかない。
「なかなかいい光景だな、サーシャ?
その衣装も似合いではないか‥‥‥王妃の衣装ではなかったがな?」
全てはお前が画策した‥‥‥なかなかいい演目だ。
悪くない、とても良い光景だ。
「さあ、サーシャ?
父上の立場も大事なものではないか?
その衣装、とてもいいぞ‥‥‥あのナターシャが着た衣装をお前が着ている。
ナターシャに着るように周囲を煽ったのはわたしです、と。
そう書きおきを僕に残してお前は天使になるのだから
魔女がこれで、二人。いい眺めだな?」
エルウィンは歩を歩めると、サーシャ?
と一声かけてその身を外へと押し出す‥‥‥
「そんなー‥‥‥この、卑怯者っ!!!」
それでいいとも、さあ舞えサーシャ。
王子の腕が彼女を更に押し出し‥‥‥
己の身体が風と共に宙を浮いたことに気づく。
そしてーー足元が消えはるか地上へと招待されたことにもサーシャは気づいていた。
歌劇場でサーシャと共に歌劇を楽しんでいるエルウィン王子にある報告が届いていた。
たった数事だが言葉を交わして戻るその人物は、あの男。
ナターシャの前で三人の囚人の首を跳ねた子爵だった。
彼はその場を去る際に、一言だけ王子に言い残していく。
「あの衆人には裁判を受ける権利があります。
二週間の後に、確認に参ります」
そう短くだけだが、職務に忠実な貴族は一礼をして去って行く。
王子は面白くなさそうに、彼から漂ってきた血の臭いに顔をしかめた。
「ふん、二週間など‥‥‥」
もっと早くに削いでおくべきだろう?
不安要素など。
なあ?
エルウィンはサーシャにそう語り掛ける。
「王子様はどこまでも‥‥‥」
「そう言うな、慎重に慎重を来たすことは何も悪いことではない。
まあ、逃れれはせんだろうがな……」
あの場にいた者たちをそのままにしておくのもあとあとの面倒ごとにつながるか?
「問題の場面を見た観客は少ない方がいいな‥‥‥」
しかし、そうなるとこの女も口の軽さだけは素晴らしいものがある。
フラン公爵も多くの荘園を抱えていたな。
あの峡谷周りの土地も豊かな農園が広がっていたはずだ。
国境付近というのは考えものだが、確か、飛び地で王国の西側にも広大な牧草地と馬を数百頭飼育していたはずだ。
資産というものはいくら有ってもいい。
「一夜に二人、というのもまあ、悪くないな」
笑顔で見つめてくるエルウィンにサーシャはどうかしましたか?
そう聞き返す。
「うん、そうだな‥‥‥。
あの、王子の衣装だが。
もう必要ないとは思わないか?
あの女が袖を通したものなど、もう僕には必要がないものだ」
「ええ、そうですわね。
あの意匠も古い時代のもの。
そろそろ、新しい風が入って来てもいい頃ですね」
うん、いい返事だ。
「では、サーシャ。
一つ、僕のために人形になってみないか?」
人形‥‥‥???
「なんでしょうか?
人形、とは?」
不思議そうにサーシャは聞き返す。
王子はなに、新しい衣装を確かめたいだけだ。
王妃のものも用意しなくてはならないからな?
そう伝えると、サーシャは納得したようにうなづいた。
「それは素晴らしいですわ、わたしは青い色のドレスが好きなんです」
嬉しそうに、眼下に見える歌劇の主演女優が着るドレスと同じ色を少女は思い描いて顔を輝かせる。
「そうか、ならば‥‥‥用意させよう。
すぐにでも、な?」
そして数時間後ーー
エルムンド学院が誇る二本の尖塔の片方の上に一組の男女がいた。
その後ろには数名の男たちが控えている。
まるでそこから後には引かせない。
そうとでもいうかのように、彼らはその入り口を固めていた。
「お、王子様ーー!!??
なぜー‥‥‥なぜーーっ!?」
天空には闇夜に三日月が。
眼下には激しく渦巻く風に吹かれている王都が見え、サーシャの足元には数歩分の幅しかない。
「なかなかいい光景だな、サーシャ?
その衣装も似合いではないか‥‥‥王妃の衣装ではなかったがな?」
全てはお前が画策した‥‥‥なかなかいい演目だ。
悪くない、とても良い光景だ。
「さあ、サーシャ?
父上の立場も大事なものではないか?
その衣装、とてもいいぞ‥‥‥あのナターシャが着た衣装をお前が着ている。
ナターシャに着るように周囲を煽ったのはわたしです、と。
そう書きおきを僕に残してお前は天使になるのだから
魔女がこれで、二人。いい眺めだな?」
エルウィンは歩を歩めると、サーシャ?
と一声かけてその身を外へと押し出す‥‥‥
「そんなー‥‥‥この、卑怯者っ!!!」
それでいいとも、さあ舞えサーシャ。
王子の腕が彼女を更に押し出し‥‥‥
己の身体が風と共に宙を浮いたことに気づく。
そしてーー足元が消えはるか地上へと招待されたことにもサーシャは気づいていた。
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