婚約破棄~二度目の人生を手にした侯爵令嬢は自由に生きることにしました!!

星ふくろう

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第四章 カヌークの番人

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 さて、どうしたものか。
 二人で悩みながら馬車で下り坂を降りている時だ。
「ねえ、旦那。
 うちの国のしてて、王国のしていない捧げものって何なんだい?
 俺の知る限りじゃここ数年、あの小屋で手伝いをしているけどそんな使者なんて来た事あったかな?
 上の管理所に来るのかい?」
 アルフレッドはその黒い瞳を好奇心で輝かせてアギスに尋いた。
「伝説にあるような生贄とか、黄金を欲しがるドラゴンとか、乙女を嫁に差し出すとか、そんな感じかい?」
 定番といえば定番すぎる質問にアギスは苦笑する。
 そんなことはないよ、と。
「あのな、竜王様とは言うが御本人が王だと名乗られたわけじゃないんだ。
 妖精の国には、竜族の王様もいるというしな。
 ただ、この付近の砂漠や峡谷地帯に最初に住まわれていただけだよ。
 俺たちや亜人、魔族や妖精なんかがみんなで王様、そう呼んでいるだけだ」
「へえー‥‥‥だからこの辺りは土地も肥えていて作物も取れるのは、土地を借りているからなんだ?」
「まあ、そういうことだな。
 で、その捧げものだが大したものじゃないんだ」
 大したものじゃない?
 その価値がよくわからないよ、そうアルフレッドは小首をかしげる。
「竜王様は普段はあの滝つぼの奥にいらしてな。
 聞いた話じゃ、あの底には隣の王国の城みたいな雄大な城があるらしい。
 ただ、竜王様は家臣が少なくてな。 
 退屈がお嫌いなのさ」
 王様なのに家臣が少ないんだ。
 変なの。
 アルフレッドはそう思った。
 王を名乗り、それほどの城があるなら王国のように数万の軍隊だの側室だのたくさんいると思うがそうではないらしい。
「で、なんなのさ、捧げものって」
 いい加減、しびれをきらしたアルフレッドは早く教えてくれよ、そう言いだした。
 アギスはふふん、と笑い、
「会って話すだけだよ。
 一年に会ったこと、その国で起こったこと。
 それを竜王様は知りたがるのさ」
「それだけ?
 だって自分の土地なら全部わかるんじゃないの?
 なんでそれを報告しにくるだけで土地を貸すのさ?」
 アルフレッドには竜王の考えが理解できない。アギスも最初は分からなかった。
 そうだよなあ、とアギスは苦笑して教えてやる。
「他人に貸した家の中に入る訳にはいかんだろ?」
「そりゃそうだけどさ。
 それだけの偉大な能力を持つ神様ならーー」
 信頼だよ、とアギスは言う。
「貸した土地がどう使われるかまでは文句を言わないのさ。
 余程、ひどいことが行われていない限りな。
 見ていられるよ、竜王様は。
 ただ、それがその通りか嘘かを報告しにくるだけで、その国との付き合い方も変わるだろ?」
 でも、とアルフレッドは引き下がらない。
「全部見ているなら、試していることになるじゃん。
 それって借りてる側からしたら信用されてないってのと同じじゃない?
 俺は好きじゃないなあ‥‥‥」
 こらこら、その声も届いてるんだぞ?
 アギスは困ってしまう。
 アルフレッドはまだ納得できないようだ。
「あのな、アルフレッドは小屋の中にいて外は見えないだろ?」
 なにをバカなことを言いだすんだい旦那。
 そんなの当たり前じゃないか。
 アルフレッドは呆れたように肩をすくめた。
 人間なんだから、と。
「そうだよな、人間だから分からない。
 でも、竜王様は竜なんだ。
 それも、すべての土地と繋がっていらっしゃる。
 見たくなくても見えることもあるんだよ。
 意味がわかるか?」
 あ、とアルフレッドは気付いた。
 本人がどうこうではなく、わかってしまうのなら。
 それはどうしようもないことだと。
「だから竜王様はなるべく見ないように、あの滝つぼの中でひっそりと少ない家臣と過ごしておられるのさ。
 その瞳を閉じて、知りえることを見ないようにされてるんだ。
 その代わりに、教えてくれよと言ってるのさ。
 自分が信じて土地を貸した人間を、信じたいから。
 それが竜王様のお考えなんだよ」
 さて、もうすぐで小屋に付くがー‥‥‥
 この時、アギスはなんとなく予感めいたものを感じていた。
 あの湖畔の主が、彼らが戻ってくることをいつものように小屋のテラスにあるイスに腰かけて待っている。
 そんなことがあるかもしれないと。
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