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第四章 カヌークの番人
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誰もが沈黙してしまいそうな雰囲気を破ったのは、やはりアルフレッドだった。
彼は持ち前の陽気さ、いや、天然ぶりを発揮してくれた。
「あーあ‥‥‥泣かせちゃったよ、竜王様ーー。
相手は俺と変わらないまだ子供なんですよ?
森の人で見た目がもっと上なら、それは違うかもしれないけど‥‥‥」
アルフレッドの物言いにアギスが真っ青になる。
「こら、お前!!
竜王様になんてこと!」
だって、とアルフレッドはアギスの拳をかわしながらナターシャを指差す。
「どう見たって、普通の心じゃないよ、ナターシャさ。
いま見てるだけでもわかるじゃん?
俺たちの分からない、そら恐ろしかった過去に追いかけられて逃げ場がない。
そんな顔してるんだぜ?」
可哀想でしょ?
そう言われてみると、アギスは言い返せなくなる。
ナターシャの怯えぶりも、悲しみ様も、何より、覚悟を決めたようなその死を受け入れる罪人のような表情も‥‥‥どれを見ても責めれるものではなかったからだ。
「いや、わたしはそんなつもりではー‥‥‥!?」
アルフレッドに言われた竜王は竜王でこれは困ったと頭を抱えてしまう。
「まったく、あのケルピー‥‥‥ルクナツァグめ。
これは困ったものを寄越してくれたものだ‥‥‥」
竜王はため息交じりにそう呟いた。
困ったもの?
来ては行けなかった?
あの亡者たちとの約束をわたしは‥‥‥
果たせないんだ。
そう、心のどこかで悟ると、
「あの、アルフレッド。
ごめんなさい、短剣をくれませんか?
あの死者たちとの約束が果たせないなら、死をもって償うと。
そう約束したので‥‥‥」
「はあ!?
いや、それはー死ぬこと考えるより、まだ誰も何も聞いてないよナターシャ?
それで死のうってするのは、早合点過ぎないか?」
だめだめ、そんなことの為には渡せないよ。
アルフレッドは荷物を奥へとやってしまう。
ナターシャは更に涙を流した。
「だって、いま竜王様は困ったものだと」
「それは言われたけど、話を聞かないとは言われてないよ。
ナターシャ、落ち着いてくれないかな?
死ぬなら、全部話してから死になよ。
ほら、あの滝つぼの中には竜王様のお城があるから。
そこに飛び込めば、少しは気晴らしになるだろ?」
「おい、小僧!?
なんてことを言うんだ、我が城を人の血で汚すなど!??」
思いがけないことを言われて竜王がとんでもない小僧だとアルフレッドを睨みつける。
「なら、竜王様はこの子の話を聞いてやってくれるんですよね?
そういう意味に捕えていいですか?
だって、ここまで涙流して死んでいった人間たちのために来たんですよ?
彼女の話を信じるなら、だけど。
追い返すのは‥‥‥ねえ?」
「それはまるでわたしがそう仕向けたような言い方をするのだな、小僧?
いや、アルフレッドか?」
「いえね、竜王様。
そうは言いませんけど、まずなんで怒られたかを教えてあげないと、ナターシャ。
多分、永遠に泣いてますよ?
何をそんなにお怒りだったんですか?」
きっかけを解決しないと何も始まらない。
それをアルフレッドに教えられて竜王ははっとなる。
そう言われれば、それはそうかもしれない。
あの剣を見た瞬間、人の身で受けるにはあまりにも強すぎる怒りの波動をあびせたのは‥‥‥自分なのだから。
「そう‥‥‥だな。
わかった。
話そう。
アギス、済まない。
来客の相手を頼めるかな?」
言われて見ると、次の貴族様方がこちらにこようとしてるらしい。
合図の旗が上がっていた。
「なら、二階で。
アルフレッド、ナターシャが寝ていた部屋にお連れしろ。
お前も一緒にいてやれ。
年齢も近そうだしな」
「はいよ、旦那」
こうして、ナターシャはフラフラと泣きながら歩き、二階へと移動することになった。
彼は持ち前の陽気さ、いや、天然ぶりを発揮してくれた。
「あーあ‥‥‥泣かせちゃったよ、竜王様ーー。
相手は俺と変わらないまだ子供なんですよ?
森の人で見た目がもっと上なら、それは違うかもしれないけど‥‥‥」
アルフレッドの物言いにアギスが真っ青になる。
「こら、お前!!
竜王様になんてこと!」
だって、とアルフレッドはアギスの拳をかわしながらナターシャを指差す。
「どう見たって、普通の心じゃないよ、ナターシャさ。
いま見てるだけでもわかるじゃん?
俺たちの分からない、そら恐ろしかった過去に追いかけられて逃げ場がない。
そんな顔してるんだぜ?」
可哀想でしょ?
そう言われてみると、アギスは言い返せなくなる。
ナターシャの怯えぶりも、悲しみ様も、何より、覚悟を決めたようなその死を受け入れる罪人のような表情も‥‥‥どれを見ても責めれるものではなかったからだ。
「いや、わたしはそんなつもりではー‥‥‥!?」
アルフレッドに言われた竜王は竜王でこれは困ったと頭を抱えてしまう。
「まったく、あのケルピー‥‥‥ルクナツァグめ。
これは困ったものを寄越してくれたものだ‥‥‥」
竜王はため息交じりにそう呟いた。
困ったもの?
来ては行けなかった?
あの亡者たちとの約束をわたしは‥‥‥
果たせないんだ。
そう、心のどこかで悟ると、
「あの、アルフレッド。
ごめんなさい、短剣をくれませんか?
あの死者たちとの約束が果たせないなら、死をもって償うと。
そう約束したので‥‥‥」
「はあ!?
いや、それはー死ぬこと考えるより、まだ誰も何も聞いてないよナターシャ?
それで死のうってするのは、早合点過ぎないか?」
だめだめ、そんなことの為には渡せないよ。
アルフレッドは荷物を奥へとやってしまう。
ナターシャは更に涙を流した。
「だって、いま竜王様は困ったものだと」
「それは言われたけど、話を聞かないとは言われてないよ。
ナターシャ、落ち着いてくれないかな?
死ぬなら、全部話してから死になよ。
ほら、あの滝つぼの中には竜王様のお城があるから。
そこに飛び込めば、少しは気晴らしになるだろ?」
「おい、小僧!?
なんてことを言うんだ、我が城を人の血で汚すなど!??」
思いがけないことを言われて竜王がとんでもない小僧だとアルフレッドを睨みつける。
「なら、竜王様はこの子の話を聞いてやってくれるんですよね?
そういう意味に捕えていいですか?
だって、ここまで涙流して死んでいった人間たちのために来たんですよ?
彼女の話を信じるなら、だけど。
追い返すのは‥‥‥ねえ?」
「それはまるでわたしがそう仕向けたような言い方をするのだな、小僧?
いや、アルフレッドか?」
「いえね、竜王様。
そうは言いませんけど、まずなんで怒られたかを教えてあげないと、ナターシャ。
多分、永遠に泣いてますよ?
何をそんなにお怒りだったんですか?」
きっかけを解決しないと何も始まらない。
それをアルフレッドに教えられて竜王ははっとなる。
そう言われれば、それはそうかもしれない。
あの剣を見た瞬間、人の身で受けるにはあまりにも強すぎる怒りの波動をあびせたのは‥‥‥自分なのだから。
「そう‥‥‥だな。
わかった。
話そう。
アギス、済まない。
来客の相手を頼めるかな?」
言われて見ると、次の貴族様方がこちらにこようとしてるらしい。
合図の旗が上がっていた。
「なら、二階で。
アルフレッド、ナターシャが寝ていた部屋にお連れしろ。
お前も一緒にいてやれ。
年齢も近そうだしな」
「はいよ、旦那」
こうして、ナターシャはフラフラと泣きながら歩き、二階へと移動することになった。
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