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第五章 神々の山脈
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その夕方。
第二王子エルウィンは王城内の自室で呻いていた。
ナターシャの財産目録を請求してきたものがいる。
自分の子飼いの部下の文官が、そう報告して来たからだ。
「鮮血子爵めー‥‥‥!!!
まさか、ナターシャの実家の財産がどこに向かったなどとー」
おまけにあの男!
単なる処刑係の分際で、数百年に渡り王家や教会に歯向かってきた者たちを処分してきたあの塔を!!
「破壊するなどと!!
どこまで思いあがりおって‥‥‥!!
不浄の分際で――!!!」
くそっ、くそっ、くそっ!!
盛大に腰かけていたソファーを蹴り飛ばすがそれだけではこの苛立ちをおさめることができなかった。
このまま、あの血生臭い首切りゼイルード卿が黙って見過ごすとも思えない‥‥‥
そう、あのナターシャと、サーシャの件だ。
「まあ、いい――。
ふん、少々調べた程度で主が誰になったかなどわかるものか‥‥‥」
エルウィン王子は薄汚い、人殺しの笑みを浮かべてせせら笑っていた。
「あの二家どころか、処刑された貴族の財産は貴族院に接収される。
ふっ、探るだけ無駄というものだ。
あの二家の処分を命じておいて‥‥‥正解だったというもの――」
秘密は闇から闇に葬り去る。
これに限る、そうやってこの王国は繁栄してきたのだ。
さて、そうなると問題はあいつ、か。
あのエメラルド姫。
ナターシャだ。
「よもや、生きているかもしれんとは、な‥‥‥」
誰を向かわせたものか。
第二王子は思案する。
ゼイルード卿が動き出す前に始末する必要があるか?
それとも、放置しておいていいものか、と。
「あれがなにかをしでかせるとも思えん‥‥‥。
何より、あの旧国道を枢軸へと向かったのだとしたら――」
学院にいるあの連中に助けを求めてこの王都へと戻る可能性が高いな。
エルウィンはナターシャの思惑とはまったく別の方向へと視線が向かっていた。
ナターシャがもう貴族籍など捨てて、自由に生きることを望み逃走したなどとは夢にも思わなかった。
可能性があるとすれば、学友である枢軸や帝国、隣国の王子たちに助けを求めるだろう。
そう、考えたのだ。
この辺り、王族の世間知らずというか、浅慮というべきか。
まさか、ナターシャがこの国の王族や教会に殺された怨念たちと契約し、竜王に出会いその協力を得て王国から債権回収までを竜王に決意させていたなどとは‥‥‥知る由もなかった。
「網を張るなら、学院内、か‥‥‥。
まあ、見つければ仕留めればいいだけのこと。
さて、次は誰から頂くか。
そうだな、あれがいいかな。
紅の瞳の皇女‥‥‥アナスタシア。
上手くいけば帝国との縁戚ができる。
子を産ませたあとは始末するなり、地下に幽閉するなり‥‥‥」
女とは、いかにも都合よく遊べる道具に過ぎん。
さて、明日からまた策謀を巡らす楽しみが増えたな。
「まあ、ゼイルード卿だけはー‥‥‥」
遠方へと転籍でも命じることにしよう。
そう、あの大国の首都エイジス辺りがいい。
二度と、王国へは戻れないように、な。
第二王子は不敵に笑っていた。
その決断が、最後は己の首をゼイルード卿に刎ねさせるかもしれないとは思わずに。
第二王子エルウィンは王城内の自室で呻いていた。
ナターシャの財産目録を請求してきたものがいる。
自分の子飼いの部下の文官が、そう報告して来たからだ。
「鮮血子爵めー‥‥‥!!!
まさか、ナターシャの実家の財産がどこに向かったなどとー」
おまけにあの男!
単なる処刑係の分際で、数百年に渡り王家や教会に歯向かってきた者たちを処分してきたあの塔を!!
「破壊するなどと!!
どこまで思いあがりおって‥‥‥!!
不浄の分際で――!!!」
くそっ、くそっ、くそっ!!
盛大に腰かけていたソファーを蹴り飛ばすがそれだけではこの苛立ちをおさめることができなかった。
このまま、あの血生臭い首切りゼイルード卿が黙って見過ごすとも思えない‥‥‥
そう、あのナターシャと、サーシャの件だ。
「まあ、いい――。
ふん、少々調べた程度で主が誰になったかなどわかるものか‥‥‥」
エルウィン王子は薄汚い、人殺しの笑みを浮かべてせせら笑っていた。
「あの二家どころか、処刑された貴族の財産は貴族院に接収される。
ふっ、探るだけ無駄というものだ。
あの二家の処分を命じておいて‥‥‥正解だったというもの――」
秘密は闇から闇に葬り去る。
これに限る、そうやってこの王国は繁栄してきたのだ。
さて、そうなると問題はあいつ、か。
あのエメラルド姫。
ナターシャだ。
「よもや、生きているかもしれんとは、な‥‥‥」
誰を向かわせたものか。
第二王子は思案する。
ゼイルード卿が動き出す前に始末する必要があるか?
それとも、放置しておいていいものか、と。
「あれがなにかをしでかせるとも思えん‥‥‥。
何より、あの旧国道を枢軸へと向かったのだとしたら――」
学院にいるあの連中に助けを求めてこの王都へと戻る可能性が高いな。
エルウィンはナターシャの思惑とはまったく別の方向へと視線が向かっていた。
ナターシャがもう貴族籍など捨てて、自由に生きることを望み逃走したなどとは夢にも思わなかった。
可能性があるとすれば、学友である枢軸や帝国、隣国の王子たちに助けを求めるだろう。
そう、考えたのだ。
この辺り、王族の世間知らずというか、浅慮というべきか。
まさか、ナターシャがこの国の王族や教会に殺された怨念たちと契約し、竜王に出会いその協力を得て王国から債権回収までを竜王に決意させていたなどとは‥‥‥知る由もなかった。
「網を張るなら、学院内、か‥‥‥。
まあ、見つければ仕留めればいいだけのこと。
さて、次は誰から頂くか。
そうだな、あれがいいかな。
紅の瞳の皇女‥‥‥アナスタシア。
上手くいけば帝国との縁戚ができる。
子を産ませたあとは始末するなり、地下に幽閉するなり‥‥‥」
女とは、いかにも都合よく遊べる道具に過ぎん。
さて、明日からまた策謀を巡らす楽しみが増えたな。
「まあ、ゼイルード卿だけはー‥‥‥」
遠方へと転籍でも命じることにしよう。
そう、あの大国の首都エイジス辺りがいい。
二度と、王国へは戻れないように、な。
第二王子は不敵に笑っていた。
その決断が、最後は己の首をゼイルード卿に刎ねさせるかもしれないとは思わずに。
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