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第七章 闇の希望と炎の魔神
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「うーん‥‥‥この子達?
よね、アリア?
彼等を戻せばいいの?」
水の精霊女王アリアの第二の眷属にして、超古代文明の遺産たる最終破壊兵器。
そんな異名を持つ黒髪の炎の魔神イフリーテは、二人が呑み込まれたあの罠の付近で自分も襲われないかとビクビクしながら周囲を見渡していた。
危険がないようだと彼女の体内に在る探査機器がそう報告していた。
アリアからはそうよ、とだけ簡素に返事が戻ってくる。
単体でもアリアや竜王以上の能力を持つこの魔神に、余計な言葉は不要だった。
つまらない知識を与えると、この魔神はどこか抜けているせいで暴走する。
それもとんでもなく悪い方向に‥‥‥
「いいから、さっさと回収して戻りなさい!!」
隣でアリアが叫んでいるのを見て、竜王は軽いめまいを覚えていた。
あの魔神の引き起こしたこの長い時間の間の数々の珍事件を、改めて思いだしてしまったからだ。
(長編:えっ!? 聖女として命がけで国を守ってたのに婚約破棄&追放ですか!? 悲しみの聖女は精霊王の溺愛を受けてます!(エル・オルビスシリーズ)参照)
「さっさと戻ってくることを祈りたいものだ。
あれが関わるとロクなことにならん」
「まあ、エバーグリーン!?
あなたも似たようなものではありませんか!?
天界きっての遊び人の一人のあなたのお陰で、我が夫がどれだけ苦労したと‥‥‥」
従者を悪く言われてアリアは憤然とする。
そして、竜王はわたしの第一の眷属でしょう?
とも、付け加えていた。
最初に会ったあの日から、彼とはそういう建前の契約なのだから、と。
「わかった、わかったよ、アリア殿。
イフリーテを信じよう。
もうあの二人の存在は確認できているしー‥‥‥無事なのか?」
「ええ、竜王様。
イフリーテの見立てでは異常はない、と。
ただ、潜んでいたこの下にいる妖魔どもの気配が消えているのが不思議だともあれは申しております」
「妖魔がいない、か。
あの罠といい、この神殿の推移といい。
まったく、この世界には謎だらけだ。
少しばかり寝ている間に全てが変わっていく。
それも大体がー‥‥‥」
人によってだ。
その一言を竜王は呑み込んだ。
アリアもまた、元人間であり、故郷を失った一人だからだ。
その最後の言葉の意味をあらかじめ知っているかのように精霊女王アリアは寂しそうに笑っていた。
あの赤い月を見上げながら。
「はいはい、これでもこの数百年でまともにはなったと思うんですけどねー。
アリアも竜王も信頼してくれないんだからー‥‥‥」
目の前に横たわるアルフレッドを見、意識を取り戻してイフリーテを見つけ、アルフレッドを守ろうとして床に座ったまま、イフリーテをにらみつけているナターシャに心のなしか怖いものを感じていた。
「あのーねえ?
わたし、あなたと争うつもりはなんだけど‥‥‥その手にしたナイフ、終って下さらない?
上にはアリアと竜王がいるけど。
戻る?
それとも、二人だけでここで住む‥‥‥なわけないっか‥‥‥」
「アリア様、の?
ならあなたが炎の魔神様?!」
イフリーテはうーん、と困ったように小首を傾げていた。
それは古代の魔導帝国時代の呼び名であって、いまは炎の女神なんだけど、と。
寂しそうに告げる彼女に、ナターシャはなんてのんびりした女神様なだろうと呆れてしまう。毒気を抜かれてしまい、いつの間にか手にしていたナイフを鞘に納めた自分がいることにも驚いていた。
「上に‥‥‥」
「へ???」
「上に、運んでいただけますか、炎の女神様?
ここは危険だと、思います」
ナターシャの依頼をイフリーテは快諾する。
これで上の二人にも役立たずなどと言われずに済むからだ。
「では、行きましょうか?
太陽の元へ――」
三人が山頂で待つアリアと竜王に改めて合流するまで、それから数分とかからなかった。
よね、アリア?
彼等を戻せばいいの?」
水の精霊女王アリアの第二の眷属にして、超古代文明の遺産たる最終破壊兵器。
そんな異名を持つ黒髪の炎の魔神イフリーテは、二人が呑み込まれたあの罠の付近で自分も襲われないかとビクビクしながら周囲を見渡していた。
危険がないようだと彼女の体内に在る探査機器がそう報告していた。
アリアからはそうよ、とだけ簡素に返事が戻ってくる。
単体でもアリアや竜王以上の能力を持つこの魔神に、余計な言葉は不要だった。
つまらない知識を与えると、この魔神はどこか抜けているせいで暴走する。
それもとんでもなく悪い方向に‥‥‥
「いいから、さっさと回収して戻りなさい!!」
隣でアリアが叫んでいるのを見て、竜王は軽いめまいを覚えていた。
あの魔神の引き起こしたこの長い時間の間の数々の珍事件を、改めて思いだしてしまったからだ。
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あれが関わるとロクなことにならん」
「まあ、エバーグリーン!?
あなたも似たようなものではありませんか!?
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従者を悪く言われてアリアは憤然とする。
そして、竜王はわたしの第一の眷属でしょう?
とも、付け加えていた。
最初に会ったあの日から、彼とはそういう建前の契約なのだから、と。
「わかった、わかったよ、アリア殿。
イフリーテを信じよう。
もうあの二人の存在は確認できているしー‥‥‥無事なのか?」
「ええ、竜王様。
イフリーテの見立てでは異常はない、と。
ただ、潜んでいたこの下にいる妖魔どもの気配が消えているのが不思議だともあれは申しております」
「妖魔がいない、か。
あの罠といい、この神殿の推移といい。
まったく、この世界には謎だらけだ。
少しばかり寝ている間に全てが変わっていく。
それも大体がー‥‥‥」
人によってだ。
その一言を竜王は呑み込んだ。
アリアもまた、元人間であり、故郷を失った一人だからだ。
その最後の言葉の意味をあらかじめ知っているかのように精霊女王アリアは寂しそうに笑っていた。
あの赤い月を見上げながら。
「はいはい、これでもこの数百年でまともにはなったと思うんですけどねー。
アリアも竜王も信頼してくれないんだからー‥‥‥」
目の前に横たわるアルフレッドを見、意識を取り戻してイフリーテを見つけ、アルフレッドを守ろうとして床に座ったまま、イフリーテをにらみつけているナターシャに心のなしか怖いものを感じていた。
「あのーねえ?
わたし、あなたと争うつもりはなんだけど‥‥‥その手にしたナイフ、終って下さらない?
上にはアリアと竜王がいるけど。
戻る?
それとも、二人だけでここで住む‥‥‥なわけないっか‥‥‥」
「アリア様、の?
ならあなたが炎の魔神様?!」
イフリーテはうーん、と困ったように小首を傾げていた。
それは古代の魔導帝国時代の呼び名であって、いまは炎の女神なんだけど、と。
寂しそうに告げる彼女に、ナターシャはなんてのんびりした女神様なだろうと呆れてしまう。毒気を抜かれてしまい、いつの間にか手にしていたナイフを鞘に納めた自分がいることにも驚いていた。
「上に‥‥‥」
「へ???」
「上に、運んでいただけますか、炎の女神様?
ここは危険だと、思います」
ナターシャの依頼をイフリーテは快諾する。
これで上の二人にも役立たずなどと言われずに済むからだ。
「では、行きましょうか?
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