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第八章 エイジスの蒼い髪
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「えっ!?」
ナターシャは不意を突かれたような声を上げてしまった。
どうしたい?
それは自分で決めろということ?
自身の未来を?
そんな勝手なこと、許されるはずがない。
「それは、無理よ」
「どうして無理なんだい?」
答えは簡単だ。
自分は――
「わたしは罪人だから。
自分で決めるなんてことできない」
「じゃあ、どうしていま生きているの?
ここで俺と話をしているの?」
ナターシャはうつむいて小声で言った。
「死にたくなかったから」
と。
「そっか。
なら、それも自分で決めているんじゃないか?」
「そうだけど‥‥‥なら、アルフレッドはどうしてここに居てくれるの?」
「なんでだろね?
竜王様一人じゃなんだか怪しかったし、ああ、こう言うと怒られるな。
現代を知らない竜王様だけでは、逆に揉め事が増えるって思った。
それに助けを――求められたからかな?」
ナターシャはその言葉に嘘を見つけていた。
「あなたには求めていないわ。
最初は無理だよってそう言ったじゃない。
ちゃんと覚えているもの」
「でもその後は?
俺はー‥‥‥そうだな。
確かに下心もあった。
君を好きになったし、側にいたいというのもあった。
最後には流れで竜王様に無理矢理参加させられたけど、いまでは感謝しているくらいだよ」
「ありがとう。
でもね、アルフレッド。
わたしはあの亡霊たちとの契約もあったし、それを言い訳にして逃げて来たの。
自分の罪と向き合うことから。
もう、亡霊たちはいないし、後は竜王様たちがどうにかすると思うわ。
わたしは正式な裁判を受けるべきかもしれない」
ああ、本当に頑固で融通が利かない。
そのやり方がすでに教会の好きなように扱われてるって理解していない。
じゃあ、とアルフレッドはナターシャに問い返す。
「年末や新年の祭り、春の感謝祭、夏の朔月祭ーー王国にあるかはわからないけど。
男性は女性の恰好をして仮装する祭りは王国には無いのかい?」
「あるわよ?」
あまりにもあっさりとした返事に、アルフレッドは拍子抜けしてしまう。
「あるなら、その逆が罪になるなんておかしいって思わないの?」
え?
そりゃ、エルウィンと何度か訪れた歌劇場でもそのような演目は存在した。
あの学院の創立祭の劇でも、誰かが演じると聞いた覚えもある。
でもそれは男性だから許される。
「アル、女は家のもの。
そして、男性に従いそれが幸せなになるの。
それが、貴族の常識。
上が下の恰好をしても怒られない。
でも、例えば奴隷が主人の服を着れば鞭うたれる。
そういうことだと思う」
「ああ、そう?
じゃあ、君は自分は奴隷並みでもの扱いされてそれでも文句を言いながらナイフを出して俺を脅すけど、命令されたら上の人間には従うんだ?
この場で抱かせろ、そう言われたら納得して従うわけ?」
「本当に意地悪な人!」
だって、とアルフレッドはナターシャにあるものを取り出して見せた。
それはナターシャがあの小屋にいた時に、いや潜んでいて竜王と顔合わせをするまでの間に、アルフレッドが一次的に預かり、中を調べた時に見つけたものだ。
「なにかな、これ?
えーとっ?
レー‥‥‥ああ、わかった。
レーゼン・シェイブ・オーウェン公爵だ」
「ちょっと、それ!!」
ナターシャが驚くのも無理はない。
それはあの処刑場の守衛室で自分が偽造した偽の‥‥‥第二の身分証明書だったのだから。
「でもこれ、表記が間違っているね?」
「え、うそ!?」
本当だよ、そういうとアルフレッドは新たに彼とナターシャの身分証明書を取り出す。
「これ書く場合は、レーゼン公爵シェイブ・オーウェンだ。
シェイブは家名でもないし、単に間の名前だから省いても良い。
これ見せてたら、あっけなく捕まっていたね、レーゼン・シェイブ・オーウェン公爵殿?」
悪戯っぽく言うアルフレッドの手からそれを取り返そうとナターシャは試みるが、それはあっさりと彼の手によって遮られた。
それどころか、腕を引かれてアルフレッドの膝上にうつぶせに倒れこんでしまう。
「あのさ、ナターシャは知らないんだよね?」
よっと、声を出して彼女を片腕で押さえつけるともう片方の手で腰のナイフを引き抜き、見えるように喉元にそっと押し付けた。
「ひっ!?
なにするの!!」
「枢軸連邦では、国境越えは死罪、知ってた?」
「そんなの、知るわけがないじゃない!!」
そりゃそうだ。
王国側の人間なんだから。
でも、いまは利用させてもらおう。
アルフレッドは楽しいと思いながら演技を続ける。
「じゃあ、いまこの場で‥‥‥レーゼン・シェイブ・オーウェン公爵令嬢ナターシャは俺に捕まったわけだ?」
「だから何よ!?
放して!!
なんでこんなこと!!」
「ナターシャ‥‥‥諦めが悪いよ?
捕まったら死罪って言わなかった?
一度目は見逃した。
あの神殿で助けに来てくれて、それでチャラだ。
でも、俺はこうして君の手伝いをして、新たな身分証明書を作ってさ。
理解している?
もし、君が俺の妻じゃなくて王国の罪人だってばれたら、俺まで死罪だってこと?
俺だけじゃない。
俺の家族も、アギスの旦那もだ。
みんなが、死ぬ可能性があるのにこうしてここで一緒にいる。
それなのになんだよ、ナターシャは?
罪人だ、自分には生きる権利はない、選ぶ権利はない」
本当に君は贅沢だ。
そう言うと、ナイフをテーブルに投げ捨てアルフレッドはナターシャを引き起こした。
座ると丁度同じか、彼女の方が視線が高い。
こんなに美しいのに、悲しませるエルウィン王子ってのはどんなやつだよ。
どうして‥‥‥彼女で我慢できないんだよ、エルウィン?
アルフレッドは本気で怒っていた。
この理不尽なことに振り回されて、現実をきちんと見れていない少女を神様では助けれない。
復讐や債務の取り立てはできるだろう。
でも、彼女の狂い始めている心のバランスは戻せない。
そして、いまそれを狂わせているのは自分の恋心だ。
そこまで理解できて、初めてアルフレッドはナターシャに告げる事があった。
「ナターシャ!!」
「はいっ!!
いきなり‥‥‥怒鳴らないで、恐いから。
あなただけなの、こんなふうに身近でずっといた男性は。
それに抱き上げられたのも、あんなふうにー‥‥‥」
「好きだって言われたのも、かい?」
「そうよ、本当に卑怯なんだからアルフレッド。
不意打ちもいいとこだわ‥‥‥」
ごめん、ごめん。
謝ると、少年は少女に悪いとは思ったが彼女を抱き上げて膝上に座らせみた。
「高いね。
綺麗で、背も高くて、頑固で一途で。
そして、心も優しい?
いや、それはないか。
あんな、ナイフを振り回すし、めんどくさい女だよねナターシャは?」
「‥‥‥好き勝手言うなら、もう降ろしてよ」
ナターシャ、真面目な話なんだ。
そう、アルフレッドは続けた。
「俺は君が好きだよ。
でもね、いまは恋愛どうこうは出来ない。
そう思ったから、エイジスで別れるって言ったんだ。
君はさ、大事なことを忘れてるよ。
第二の人生、生きるって決めたからここにいるんだってことを。
そうじゃなきゃ、あんな身分証明書を偽造したりしない。
竜王様も、亡霊も。
全部、おまけなんだよ?
自由に生きて良いんだ。
その為に、俺は君のきちんとした身分証明書を作って渡したんだから」
「アル、あなたなにを言いたいの?」
少年は自分の落ち度を謝っていた。
住所を同じにしたから、妻だという世間体になってしまったことを。
「でも、さ。
これで証明はあるんだから。
後は好きにエイジスで庇護を求めるべきなんだ。
で‥‥‥俺も言うことがころころ変わって済まない。
やっぱり、家族が大事なんだ。
国境を無断で破った罪人を迎え入れて、みんなを連座にするわけにはいかないんだ。
俺も全部を捨てて逃げる勇気がない。
それだけは謝っておくよ」
「行く‥‥‥つもり、なの??」
不安そうな声がナターシャの唇から漏れ聞こえてくる。
ごめん、アルフレッドはそう言って彼女を抱きしめていた。
ナターシャは不意を突かれたような声を上げてしまった。
どうしたい?
それは自分で決めろということ?
自身の未来を?
そんな勝手なこと、許されるはずがない。
「それは、無理よ」
「どうして無理なんだい?」
答えは簡単だ。
自分は――
「わたしは罪人だから。
自分で決めるなんてことできない」
「じゃあ、どうしていま生きているの?
ここで俺と話をしているの?」
ナターシャはうつむいて小声で言った。
「死にたくなかったから」
と。
「そっか。
なら、それも自分で決めているんじゃないか?」
「そうだけど‥‥‥なら、アルフレッドはどうしてここに居てくれるの?」
「なんでだろね?
竜王様一人じゃなんだか怪しかったし、ああ、こう言うと怒られるな。
現代を知らない竜王様だけでは、逆に揉め事が増えるって思った。
それに助けを――求められたからかな?」
ナターシャはその言葉に嘘を見つけていた。
「あなたには求めていないわ。
最初は無理だよってそう言ったじゃない。
ちゃんと覚えているもの」
「でもその後は?
俺はー‥‥‥そうだな。
確かに下心もあった。
君を好きになったし、側にいたいというのもあった。
最後には流れで竜王様に無理矢理参加させられたけど、いまでは感謝しているくらいだよ」
「ありがとう。
でもね、アルフレッド。
わたしはあの亡霊たちとの契約もあったし、それを言い訳にして逃げて来たの。
自分の罪と向き合うことから。
もう、亡霊たちはいないし、後は竜王様たちがどうにかすると思うわ。
わたしは正式な裁判を受けるべきかもしれない」
ああ、本当に頑固で融通が利かない。
そのやり方がすでに教会の好きなように扱われてるって理解していない。
じゃあ、とアルフレッドはナターシャに問い返す。
「年末や新年の祭り、春の感謝祭、夏の朔月祭ーー王国にあるかはわからないけど。
男性は女性の恰好をして仮装する祭りは王国には無いのかい?」
「あるわよ?」
あまりにもあっさりとした返事に、アルフレッドは拍子抜けしてしまう。
「あるなら、その逆が罪になるなんておかしいって思わないの?」
え?
そりゃ、エルウィンと何度か訪れた歌劇場でもそのような演目は存在した。
あの学院の創立祭の劇でも、誰かが演じると聞いた覚えもある。
でもそれは男性だから許される。
「アル、女は家のもの。
そして、男性に従いそれが幸せなになるの。
それが、貴族の常識。
上が下の恰好をしても怒られない。
でも、例えば奴隷が主人の服を着れば鞭うたれる。
そういうことだと思う」
「ああ、そう?
じゃあ、君は自分は奴隷並みでもの扱いされてそれでも文句を言いながらナイフを出して俺を脅すけど、命令されたら上の人間には従うんだ?
この場で抱かせろ、そう言われたら納得して従うわけ?」
「本当に意地悪な人!」
だって、とアルフレッドはナターシャにあるものを取り出して見せた。
それはナターシャがあの小屋にいた時に、いや潜んでいて竜王と顔合わせをするまでの間に、アルフレッドが一次的に預かり、中を調べた時に見つけたものだ。
「なにかな、これ?
えーとっ?
レー‥‥‥ああ、わかった。
レーゼン・シェイブ・オーウェン公爵だ」
「ちょっと、それ!!」
ナターシャが驚くのも無理はない。
それはあの処刑場の守衛室で自分が偽造した偽の‥‥‥第二の身分証明書だったのだから。
「でもこれ、表記が間違っているね?」
「え、うそ!?」
本当だよ、そういうとアルフレッドは新たに彼とナターシャの身分証明書を取り出す。
「これ書く場合は、レーゼン公爵シェイブ・オーウェンだ。
シェイブは家名でもないし、単に間の名前だから省いても良い。
これ見せてたら、あっけなく捕まっていたね、レーゼン・シェイブ・オーウェン公爵殿?」
悪戯っぽく言うアルフレッドの手からそれを取り返そうとナターシャは試みるが、それはあっさりと彼の手によって遮られた。
それどころか、腕を引かれてアルフレッドの膝上にうつぶせに倒れこんでしまう。
「あのさ、ナターシャは知らないんだよね?」
よっと、声を出して彼女を片腕で押さえつけるともう片方の手で腰のナイフを引き抜き、見えるように喉元にそっと押し付けた。
「ひっ!?
なにするの!!」
「枢軸連邦では、国境越えは死罪、知ってた?」
「そんなの、知るわけがないじゃない!!」
そりゃそうだ。
王国側の人間なんだから。
でも、いまは利用させてもらおう。
アルフレッドは楽しいと思いながら演技を続ける。
「じゃあ、いまこの場で‥‥‥レーゼン・シェイブ・オーウェン公爵令嬢ナターシャは俺に捕まったわけだ?」
「だから何よ!?
放して!!
なんでこんなこと!!」
「ナターシャ‥‥‥諦めが悪いよ?
捕まったら死罪って言わなかった?
一度目は見逃した。
あの神殿で助けに来てくれて、それでチャラだ。
でも、俺はこうして君の手伝いをして、新たな身分証明書を作ってさ。
理解している?
もし、君が俺の妻じゃなくて王国の罪人だってばれたら、俺まで死罪だってこと?
俺だけじゃない。
俺の家族も、アギスの旦那もだ。
みんなが、死ぬ可能性があるのにこうしてここで一緒にいる。
それなのになんだよ、ナターシャは?
罪人だ、自分には生きる権利はない、選ぶ権利はない」
本当に君は贅沢だ。
そう言うと、ナイフをテーブルに投げ捨てアルフレッドはナターシャを引き起こした。
座ると丁度同じか、彼女の方が視線が高い。
こんなに美しいのに、悲しませるエルウィン王子ってのはどんなやつだよ。
どうして‥‥‥彼女で我慢できないんだよ、エルウィン?
アルフレッドは本気で怒っていた。
この理不尽なことに振り回されて、現実をきちんと見れていない少女を神様では助けれない。
復讐や債務の取り立てはできるだろう。
でも、彼女の狂い始めている心のバランスは戻せない。
そして、いまそれを狂わせているのは自分の恋心だ。
そこまで理解できて、初めてアルフレッドはナターシャに告げる事があった。
「ナターシャ!!」
「はいっ!!
いきなり‥‥‥怒鳴らないで、恐いから。
あなただけなの、こんなふうに身近でずっといた男性は。
それに抱き上げられたのも、あんなふうにー‥‥‥」
「好きだって言われたのも、かい?」
「そうよ、本当に卑怯なんだからアルフレッド。
不意打ちもいいとこだわ‥‥‥」
ごめん、ごめん。
謝ると、少年は少女に悪いとは思ったが彼女を抱き上げて膝上に座らせみた。
「高いね。
綺麗で、背も高くて、頑固で一途で。
そして、心も優しい?
いや、それはないか。
あんな、ナイフを振り回すし、めんどくさい女だよねナターシャは?」
「‥‥‥好き勝手言うなら、もう降ろしてよ」
ナターシャ、真面目な話なんだ。
そう、アルフレッドは続けた。
「俺は君が好きだよ。
でもね、いまは恋愛どうこうは出来ない。
そう思ったから、エイジスで別れるって言ったんだ。
君はさ、大事なことを忘れてるよ。
第二の人生、生きるって決めたからここにいるんだってことを。
そうじゃなきゃ、あんな身分証明書を偽造したりしない。
竜王様も、亡霊も。
全部、おまけなんだよ?
自由に生きて良いんだ。
その為に、俺は君のきちんとした身分証明書を作って渡したんだから」
「アル、あなたなにを言いたいの?」
少年は自分の落ち度を謝っていた。
住所を同じにしたから、妻だという世間体になってしまったことを。
「でも、さ。
これで証明はあるんだから。
後は好きにエイジスで庇護を求めるべきなんだ。
で‥‥‥俺も言うことがころころ変わって済まない。
やっぱり、家族が大事なんだ。
国境を無断で破った罪人を迎え入れて、みんなを連座にするわけにはいかないんだ。
俺も全部を捨てて逃げる勇気がない。
それだけは謝っておくよ」
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