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第四章 平穏な日常とドラゴンプリンセス
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冬です。
うちの一匹もとい‥‥‥竜嫁は。
コタツを占拠しています。
一人でコタツの中に潜りこみ、もくもくとみかんを食べている我が妻。
ドラゴンプリンセス、エミュネスタ。
時々、ピョコピョコと機嫌よさそうに尻尾がコタツ布団から抜け出してくる。
昨日は知らずにそれを踏んで、とても不機嫌なエミュネスタさん。
昨夜は、それをまだ根にもっていたのか夜は別々に寝ました。
彼女は24時間コタツを占拠しています。
どこの世界に、コタツでくつろぐドラゴンがいるんだよ!?
そう文句を言いたくなるんだけど。
尾を踏んだことが本当に気に入らなかったらしく、チロチロと舌先から小さな炎を出される始末。
「ね、ねえ、お前?」
と、問いかけても返事なし。
たまに尾が不機嫌な青に染まる程度。
母さんが食べなさいと、段ボールで箱買いしてきたみかんを黙々と補充する係になりつつある僕。
もう夫の威厳とかはどうでもいい。
この状況が二日も続くとさすがに、めんどくさくなってくる。
ああ、もういいや。
そう諦めて、エミュネスタのそばで一緒にテレビドラマを楽しむことにした。
妻はいま、イギリスの19世紀辺りの貴族社会を描いた連続ドラマにはまってるんだ。
「入るよ」
「だめです」
あれ、返事はしてくれるんだ。
「知らない。
僕のものでもあるんだから、入るよ」
「だから、駄目です。
エミュネスタはまだ怒っております!」
そうテレビから目を離さずに言う、我がドラゴンプリンセス。
せめて、肩肘を立てての腕枕はやめないかなー?
なんだか、世間的に誤訳されてる方の、亭主関白ならぬ、家内関白ぽく見えてしまいそうで怖い。
まあ、でも。可愛いんだけどね、この仕草も。
さて、どうするか。
「だんな様」
と、エミュネスタから声がかかる?
「なっ、なんだい!?」
「尻尾に触ったら、本当に火を吐きますからね」
と、先手を打たれてしまった。
前回のように、うまいこと操縦して操ろうとしたのに。
本当に、どこに目がついているのかわからないな、うちの嫁は。
こういう時はどうするべきか。
僕は決めていた。
「そう。
まあ、コタツにははいるけど。
君が当ててこなければ、僕は触らないよ。
踏んだこともちゃんと謝ったからね。
もう何度もは謝罪はしないよ」
そう、冷たく接することにしようと。
いや、冷たくっていうのは変だな。
やることはしたから、あとは君が決めて下さい。
そういう感覚かもしれない。
あれ、でもなぜエミュネスタの尾は赤くなるんだろう?
ドラマが面白いからかな?
まあ、不遇だった主人公が、冷遇してきた相手に復讐するシーンだからスカっとする展開だけど。
エミュネスタ、こんなシーン好きだったかな?
どうもよく分からない。みかんと一つ向いて食べ始めると‥‥‥
なんとなくこちらを見ていないんだけど、視線を感じだ。
うーん?
なんなんだろう。女性は難しい。
試しに、みかんをむいて、彼女の嫌いな白い筋を全部のけて、はい、と口元に運んでみる。
火で焼かれたらやけどじゃすまないなーと思いつつの行動だった。
あれ?
なんで食べるのエミュネスタさん?
尾が赤くなって揺れてますよ?
まるで、お殿様が、うむ、くるしゅうない、なんて言ってような感じだ。
「まだ食べる?」
そう聞くと、尾で返事が返ってきた。
もうこの際、尻尾を捕まえてやろうかな。
そうも思ったけど、本気で火を吐かれたら間違いなく即死コースだ。
もう少し、様子を見ようと思った。
「そういえば、高木さんとこで買った着物だけどさ。
もう、袖は通したの?
僕は着付けできないけど、母さんに頼めばしてもらえるよ?
日曜日だし、たまには二人で出かけたいんだけどーー」
と振ってみた。
あれ、だめだ。
赤いのが少し薄くなる。
出歩きたいわけではないらしい。
うーん???
「ねえ、お前」
この、言葉には本人が反応した。
僕たちのねえ、は二種類だけ。
問いかけと、もう一つは、僕の膝上においで。
それだけだ。
ああ、こっちだったのか。
案の定、こたつの中をもぞもぞと這い位置を変えて。
僕の足元から顔をだした。
僕はあぐらをかいていたから、顎を太ももに載せたまま、視線はまだテレビに向いている。
まるで、犬だな。ドラゴンじゃなくて。
エミュネスタは額から側頭部に向かって、銀色の三本の角をそれぞれ、頭部についたような形で生やしている。
これの一番根元。耳上に位置する三本目。
そこを撫でられるのが好きらしいと気づいたのは、最近のことだ。
怒るかな?
そう思い撫でてみると、くすぐったいらしく甘い声を出して笑いだす。
尻尾もさっきよりは赤みを増していて、まあまあ、上機嫌ぽい。
ぼくは身体の位置をずらして、そっと妻の斜め上から彼女の顔に近付いて見る。
案の定、エミュネスタはいたずらが見つかったように笑っていた。
「可愛いね、僕だけの竜姫様はーー」
普段は滅多にしないんだけど。
母さんもルシアン義兄さんもいない、この好機を逃す手はない。
僕らは夫婦らしく、久しぶりに長い時間をかけてキスを交わした。
「もうコタツを占拠するドラゴンプリンセスはやめるのかい?」
意地悪くそう聞いて見る。
「だって、由樹がわたしの大事な尾を踏むからいけないんです」
そうエミュネスタはむくれて言う。
「でもお前。
普段は隠してるからさ。
学校でも、家の中でも。
踏んだのは悪かったけれど、まさか、出しているとは、ね?
思わなかったんだよ?」
ごめんね、と謝りながら、もう一度、軽くキス。
妻はこんな夫婦の語らいが普段少ないから、かなり照れていた。
「いいです、もう許してあげます。
でも、痛かった」
あー、やっぱり急所なんだね。
ごめんね、と頭を撫でてやる。
「由樹のあれを噛んでもいいなら、許してあげてもいいです」
おっと? それはまた挑戦的だね、我が妻よ。
「そんな発言が飛び出すなんて、どこで覚えてきたの?
また高木さんたちから借りた本?
普通の女子はそんな言葉使わないよ?」
優しく間違いを但しつつ、高木さんには明日会ったら文句を言おうと決める僕。
「でも、だんな様?」
おや、まだ言い足りない様子。
「なんだい?」
「わたしたち、結婚してからもう3か月以上経ちますけど。
まだ、子づくーー」
あーもううるさいと思い、そこで僕は手でエミュネスタの口をふさいだ。
「だめです。
最初に、18歳というか。
高校でるまではしないって約束しただろ?」
しかし、その口の蓋はあっさりと外されてしまった。
「他の氏族でエミュネスタと同じ年齢の者たちの中には、すでに子を成しているといいますか‥‥‥。
父上や兄上からも、時間は短いのだから。
早く励むようにと、言われております」
顔を真っ赤にしながら妻は力説する。
時間が短いって、それは君たちの基準であってだね。
僕の基準だと、まだまだ長いんだけどなあ。
まあ、ホルブ王と義兄さんの言いたいこともわかるけど。
実際に、妊娠した場合、どうやって産まれてくるのかすら、資料もない世界。
実験台第一号は、是非とも他のカップルにお任せしたいところ。
「だめだよ。
そういう約束だからね。
でも、まあーー」
「なんですか、由樹?」
「肌を合わせたいって気持ちはがずっとあるのは嘘じゃない。
僕だって毎晩毎朝、こんな大好きな女性がいてくれたら、ね?
我慢できなくなるときだってあるよ?」
そういうと挑戦的な目つきになるエミュネスタさん。
「じゃあ、我慢しなければいいではありませんか?!」
いや、そういう問題じゃないでしょ!?
何がしたいんだ、うちの嫁は!?
「だ、だから」
「だから、なんですか。
由樹は亭主関白になると宣言した割に、自分のしたいことは一つも言わないじゃないですか。
まるで、エミュネスタがわがままを言っているような気になる時だってあります!」
ああ、そういうことか。
「いやだって、お前。
それが本当の亭主関白だもの」
ここできょとんとするエミュネスタ。
「それはおかしいです。
辞書には、夫が家庭内でわがままにふるまう様を亭主関白と呼ぶ、と。
どの本にも書いてありました!!」
わたしが日本文化に疎いような物言いをしないでくださいと怒るエミュネスタ。
しかし、その顎は僕の太ももに乗ってて。
身体を曲げてるのは僕なんだけど。
「それはね、現代風の解釈でしょ?
本来の亭主関白っていうのは、家の外のこと。
例えば、法事や結婚式とか。そういうことを指図するよだけど、家の中のことは全部妻に任せるよ。
そういう意味なんだよ? だから現代風の解釈は根本が間違ってるの。
だから、ルシアン義兄さんの結婚のお祝いも、まずお前の。
竜族の常識を聞いたでしょ?」
「それは、まあ、そうですけど」
うーん、理解できてないようだからもう少し説明してみよう。
「あれはなぜ聞いたかっていえば。
日本では男性を立てるって言うけど。それは家の外での話だよ。
中、つまり家の内部の家族だけの話はエミュネスタ。
お前が決めていいってこと。
外に関しては、まず、エミュネスタに聞いて。
それが、エミュネスタに関することなら、あの贈り物にしたってそうだけど。
僕は確かに偉そうにこうしなさい、とは言ったけど。
きちんと君の顔を立てたはずだよ?」
「確かに‥‥‥。
そう、ですね。
それはお父様もほめていらっしゃいました。
なかなか、外交を理解している、と」
あの王様、気分屋のような気もするから怖いけど。
その評価はありがたくもらっておくよ、エミュネスタ。
「では、由樹はもし、お兄様でなければ贈り物はどうされたのですか?」
「それは簡単。
少しだけ、多めに包むか。
まったく別の氏族なら、竜族の慣例に従うよ?
大事なのは、僕の竜姫様の立場と、実家の立場でしょ?」
うーん、と不満気なエミュネスタ。
尾が不機嫌に揺れている。
「エミュネスタは由樹の希望を。
由樹の考えを知りたいのです、だんな様」
「だからそれは察してと‥‥‥」
「わかりません!!
エミュネスタは純粋な日本人ではありません!
だんな様!!」
「はっ、はい」
あ、なんかエミュネスタが戦闘モードに移行しつつあるような気がしてきた。
「分かれ、ではなく、分かるように伝えて下さい。
それも殿方の度量ではありませんか?」
うん、そうだね。
わかったよ、押し付けてた側面は否めない。
でも、何となく僕も負けたくなかったから言い返してみた。
「それは一理あるけどね。
亭主関白でもいいって言ったのはエミュネスタだろ?
なら、分かる努力ー‥‥‥はしてくれてるよね、ごめん。
もうやめないか、この話。
もっと、僕もエミュネスタに伝わるように、自分のことを話すから。
だめかな?」
僕は泣きそうな妻の顔を見たら、何も言えなくなってしまった。
押し付けは、だめだね。お互いに理解しあわないと。
艦長に会わせる顔がないよ。
テレビに視線をやると、いつの間にか始まったスタートレックの新番組、ピカードが目に入る。
艦長、もう老人だ。
僕はいつまで君と一緒にいれるのかな、我が竜姫様と。
そう思って静かに妻を抱きしめた僕だった。
この後、子造り論争が再燃してしまい。
エミュネスタは再び、コタツに籠城してしまった。
なぜか、尾は赤く上機嫌だったけどね。
うちの一匹もとい‥‥‥竜嫁は。
コタツを占拠しています。
一人でコタツの中に潜りこみ、もくもくとみかんを食べている我が妻。
ドラゴンプリンセス、エミュネスタ。
時々、ピョコピョコと機嫌よさそうに尻尾がコタツ布団から抜け出してくる。
昨日は知らずにそれを踏んで、とても不機嫌なエミュネスタさん。
昨夜は、それをまだ根にもっていたのか夜は別々に寝ました。
彼女は24時間コタツを占拠しています。
どこの世界に、コタツでくつろぐドラゴンがいるんだよ!?
そう文句を言いたくなるんだけど。
尾を踏んだことが本当に気に入らなかったらしく、チロチロと舌先から小さな炎を出される始末。
「ね、ねえ、お前?」
と、問いかけても返事なし。
たまに尾が不機嫌な青に染まる程度。
母さんが食べなさいと、段ボールで箱買いしてきたみかんを黙々と補充する係になりつつある僕。
もう夫の威厳とかはどうでもいい。
この状況が二日も続くとさすがに、めんどくさくなってくる。
ああ、もういいや。
そう諦めて、エミュネスタのそばで一緒にテレビドラマを楽しむことにした。
妻はいま、イギリスの19世紀辺りの貴族社会を描いた連続ドラマにはまってるんだ。
「入るよ」
「だめです」
あれ、返事はしてくれるんだ。
「知らない。
僕のものでもあるんだから、入るよ」
「だから、駄目です。
エミュネスタはまだ怒っております!」
そうテレビから目を離さずに言う、我がドラゴンプリンセス。
せめて、肩肘を立てての腕枕はやめないかなー?
なんだか、世間的に誤訳されてる方の、亭主関白ならぬ、家内関白ぽく見えてしまいそうで怖い。
まあ、でも。可愛いんだけどね、この仕草も。
さて、どうするか。
「だんな様」
と、エミュネスタから声がかかる?
「なっ、なんだい!?」
「尻尾に触ったら、本当に火を吐きますからね」
と、先手を打たれてしまった。
前回のように、うまいこと操縦して操ろうとしたのに。
本当に、どこに目がついているのかわからないな、うちの嫁は。
こういう時はどうするべきか。
僕は決めていた。
「そう。
まあ、コタツにははいるけど。
君が当ててこなければ、僕は触らないよ。
踏んだこともちゃんと謝ったからね。
もう何度もは謝罪はしないよ」
そう、冷たく接することにしようと。
いや、冷たくっていうのは変だな。
やることはしたから、あとは君が決めて下さい。
そういう感覚かもしれない。
あれ、でもなぜエミュネスタの尾は赤くなるんだろう?
ドラマが面白いからかな?
まあ、不遇だった主人公が、冷遇してきた相手に復讐するシーンだからスカっとする展開だけど。
エミュネスタ、こんなシーン好きだったかな?
どうもよく分からない。みかんと一つ向いて食べ始めると‥‥‥
なんとなくこちらを見ていないんだけど、視線を感じだ。
うーん?
なんなんだろう。女性は難しい。
試しに、みかんをむいて、彼女の嫌いな白い筋を全部のけて、はい、と口元に運んでみる。
火で焼かれたらやけどじゃすまないなーと思いつつの行動だった。
あれ?
なんで食べるのエミュネスタさん?
尾が赤くなって揺れてますよ?
まるで、お殿様が、うむ、くるしゅうない、なんて言ってような感じだ。
「まだ食べる?」
そう聞くと、尾で返事が返ってきた。
もうこの際、尻尾を捕まえてやろうかな。
そうも思ったけど、本気で火を吐かれたら間違いなく即死コースだ。
もう少し、様子を見ようと思った。
「そういえば、高木さんとこで買った着物だけどさ。
もう、袖は通したの?
僕は着付けできないけど、母さんに頼めばしてもらえるよ?
日曜日だし、たまには二人で出かけたいんだけどーー」
と振ってみた。
あれ、だめだ。
赤いのが少し薄くなる。
出歩きたいわけではないらしい。
うーん???
「ねえ、お前」
この、言葉には本人が反応した。
僕たちのねえ、は二種類だけ。
問いかけと、もう一つは、僕の膝上においで。
それだけだ。
ああ、こっちだったのか。
案の定、こたつの中をもぞもぞと這い位置を変えて。
僕の足元から顔をだした。
僕はあぐらをかいていたから、顎を太ももに載せたまま、視線はまだテレビに向いている。
まるで、犬だな。ドラゴンじゃなくて。
エミュネスタは額から側頭部に向かって、銀色の三本の角をそれぞれ、頭部についたような形で生やしている。
これの一番根元。耳上に位置する三本目。
そこを撫でられるのが好きらしいと気づいたのは、最近のことだ。
怒るかな?
そう思い撫でてみると、くすぐったいらしく甘い声を出して笑いだす。
尻尾もさっきよりは赤みを増していて、まあまあ、上機嫌ぽい。
ぼくは身体の位置をずらして、そっと妻の斜め上から彼女の顔に近付いて見る。
案の定、エミュネスタはいたずらが見つかったように笑っていた。
「可愛いね、僕だけの竜姫様はーー」
普段は滅多にしないんだけど。
母さんもルシアン義兄さんもいない、この好機を逃す手はない。
僕らは夫婦らしく、久しぶりに長い時間をかけてキスを交わした。
「もうコタツを占拠するドラゴンプリンセスはやめるのかい?」
意地悪くそう聞いて見る。
「だって、由樹がわたしの大事な尾を踏むからいけないんです」
そうエミュネスタはむくれて言う。
「でもお前。
普段は隠してるからさ。
学校でも、家の中でも。
踏んだのは悪かったけれど、まさか、出しているとは、ね?
思わなかったんだよ?」
ごめんね、と謝りながら、もう一度、軽くキス。
妻はこんな夫婦の語らいが普段少ないから、かなり照れていた。
「いいです、もう許してあげます。
でも、痛かった」
あー、やっぱり急所なんだね。
ごめんね、と頭を撫でてやる。
「由樹のあれを噛んでもいいなら、許してあげてもいいです」
おっと? それはまた挑戦的だね、我が妻よ。
「そんな発言が飛び出すなんて、どこで覚えてきたの?
また高木さんたちから借りた本?
普通の女子はそんな言葉使わないよ?」
優しく間違いを但しつつ、高木さんには明日会ったら文句を言おうと決める僕。
「でも、だんな様?」
おや、まだ言い足りない様子。
「なんだい?」
「わたしたち、結婚してからもう3か月以上経ちますけど。
まだ、子づくーー」
あーもううるさいと思い、そこで僕は手でエミュネスタの口をふさいだ。
「だめです。
最初に、18歳というか。
高校でるまではしないって約束しただろ?」
しかし、その口の蓋はあっさりと外されてしまった。
「他の氏族でエミュネスタと同じ年齢の者たちの中には、すでに子を成しているといいますか‥‥‥。
父上や兄上からも、時間は短いのだから。
早く励むようにと、言われております」
顔を真っ赤にしながら妻は力説する。
時間が短いって、それは君たちの基準であってだね。
僕の基準だと、まだまだ長いんだけどなあ。
まあ、ホルブ王と義兄さんの言いたいこともわかるけど。
実際に、妊娠した場合、どうやって産まれてくるのかすら、資料もない世界。
実験台第一号は、是非とも他のカップルにお任せしたいところ。
「だめだよ。
そういう約束だからね。
でも、まあーー」
「なんですか、由樹?」
「肌を合わせたいって気持ちはがずっとあるのは嘘じゃない。
僕だって毎晩毎朝、こんな大好きな女性がいてくれたら、ね?
我慢できなくなるときだってあるよ?」
そういうと挑戦的な目つきになるエミュネスタさん。
「じゃあ、我慢しなければいいではありませんか?!」
いや、そういう問題じゃないでしょ!?
何がしたいんだ、うちの嫁は!?
「だ、だから」
「だから、なんですか。
由樹は亭主関白になると宣言した割に、自分のしたいことは一つも言わないじゃないですか。
まるで、エミュネスタがわがままを言っているような気になる時だってあります!」
ああ、そういうことか。
「いやだって、お前。
それが本当の亭主関白だもの」
ここできょとんとするエミュネスタ。
「それはおかしいです。
辞書には、夫が家庭内でわがままにふるまう様を亭主関白と呼ぶ、と。
どの本にも書いてありました!!」
わたしが日本文化に疎いような物言いをしないでくださいと怒るエミュネスタ。
しかし、その顎は僕の太ももに乗ってて。
身体を曲げてるのは僕なんだけど。
「それはね、現代風の解釈でしょ?
本来の亭主関白っていうのは、家の外のこと。
例えば、法事や結婚式とか。そういうことを指図するよだけど、家の中のことは全部妻に任せるよ。
そういう意味なんだよ? だから現代風の解釈は根本が間違ってるの。
だから、ルシアン義兄さんの結婚のお祝いも、まずお前の。
竜族の常識を聞いたでしょ?」
「それは、まあ、そうですけど」
うーん、理解できてないようだからもう少し説明してみよう。
「あれはなぜ聞いたかっていえば。
日本では男性を立てるって言うけど。それは家の外での話だよ。
中、つまり家の内部の家族だけの話はエミュネスタ。
お前が決めていいってこと。
外に関しては、まず、エミュネスタに聞いて。
それが、エミュネスタに関することなら、あの贈り物にしたってそうだけど。
僕は確かに偉そうにこうしなさい、とは言ったけど。
きちんと君の顔を立てたはずだよ?」
「確かに‥‥‥。
そう、ですね。
それはお父様もほめていらっしゃいました。
なかなか、外交を理解している、と」
あの王様、気分屋のような気もするから怖いけど。
その評価はありがたくもらっておくよ、エミュネスタ。
「では、由樹はもし、お兄様でなければ贈り物はどうされたのですか?」
「それは簡単。
少しだけ、多めに包むか。
まったく別の氏族なら、竜族の慣例に従うよ?
大事なのは、僕の竜姫様の立場と、実家の立場でしょ?」
うーん、と不満気なエミュネスタ。
尾が不機嫌に揺れている。
「エミュネスタは由樹の希望を。
由樹の考えを知りたいのです、だんな様」
「だからそれは察してと‥‥‥」
「わかりません!!
エミュネスタは純粋な日本人ではありません!
だんな様!!」
「はっ、はい」
あ、なんかエミュネスタが戦闘モードに移行しつつあるような気がしてきた。
「分かれ、ではなく、分かるように伝えて下さい。
それも殿方の度量ではありませんか?」
うん、そうだね。
わかったよ、押し付けてた側面は否めない。
でも、何となく僕も負けたくなかったから言い返してみた。
「それは一理あるけどね。
亭主関白でもいいって言ったのはエミュネスタだろ?
なら、分かる努力ー‥‥‥はしてくれてるよね、ごめん。
もうやめないか、この話。
もっと、僕もエミュネスタに伝わるように、自分のことを話すから。
だめかな?」
僕は泣きそうな妻の顔を見たら、何も言えなくなってしまった。
押し付けは、だめだね。お互いに理解しあわないと。
艦長に会わせる顔がないよ。
テレビに視線をやると、いつの間にか始まったスタートレックの新番組、ピカードが目に入る。
艦長、もう老人だ。
僕はいつまで君と一緒にいれるのかな、我が竜姫様と。
そう思って静かに妻を抱きしめた僕だった。
この後、子造り論争が再燃してしまい。
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なぜか、尾は赤く上機嫌だったけどね。
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