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第五章 真実の物語
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「まずは、そこからか。
そうだな‥‥‥この今いる宇宙が丸く繋がっているのはご存知かな?」
「それは、聞いたことはありますけど。
本当かどうかは、分かりません」
「では、こう考えてくれ。幾つもの大きさも形も違う泡があるとする。
これの1つを界。そう言う。界は物理法則でもある。
界の中にあるのが、この宇宙だ」
「つまり、異世界は同じ界の中の‥‥‥別の惑星文明?」
そうだ、いいぞ。
彼は嬉しそうに、そう言ってエミュネスタの顔で笑っているけど。
なんで、婿殿。なんだろう?
エミュネスタの両親はホルブ王と王妃ーー
「それは違うぞ、婿殿。
わしが、まあ、いまは娘の形を借りているがな。
このフェイヴエスタークが、エミュネスタの実の父でもあり、母でもある」
いきなりなにを言い出すんだ、この人は‥‥‥???
「そうだ、皇帝と名乗り、宇宙のある文明で人類と戦い、そして滅んだ。
その一族の愚かな王よ」
「滅んだって、いまそこにいるじゃないですか、フェイブーー」
「フェイブで構わん。
そなたは?」
ああ、そうだ。そう言われて、僕は名乗るのを忘れていた。
礼儀知らずにも程がある。
まあ、闖入者に名乗る義理もないけど、エミュネスタの実父と言うのが本当なら。
話は別だ。
「由樹です。
新竹 由樹です。フェイブさん」
さあ、どう出てくるか。
正直、予測が付かなかった。それに、なんで寝てるんだ、エミュネスタ。
僕より、お前の方が気配に気づくはず‥‥‥。
「ああ、それは無理だ、由樹殿。
娘はいまは眠らせてある。
その子は、我の‥‥‥そう、最後の子よ」
「最後の子‥‥‥?」
「簡単な昔話をしよう。
ある星で、王が8人いた。
我はその末子として産まれた。
親は、文明を創造した存在でな。これは、界の中で異世界を産み、壊し、また産む。
そんな役割の存在のことだ。まあ、力あるものの階級で言えば、我が両親は第二位かな。
我は第三位か、四位。その辺りの存在だ」
「え、いえ、ちょっといいですか?
それって、高位すぎません??
それに、第一位は‥‥‥?」
そう、それは余りにも都合が良すぎる話だった‥‥‥。
しかし、フェイブスタークは平然として言い放つ。
「まあ、そう生まれついたのだから仕方ないであろ?
一位は破壊する者と、創造の存在だともいうかな?
界を産み出せる存在。そして最後に死ぬ存在。
いまは、そうだな‥‥‥この世界は分岐している。
ルシールめ、この惑星の時間軸を分岐させおったな。
あれも、いまは創始の存在に近い力を得た、そういうことか‥‥‥」
僕には全く、理解ができなかった。
「あの‥‥‥ルシールって誰ですか?」
「由樹殿の言う、ルシアンだ。
そして、そのーー言いにくいが。
エミュネスタの夫にして、我が皇帝の座を譲った元女英雄よ」
この時。なぜだろう?
僕はとても救われた気がしたんだ。
エミュネスタを苦しめている何か、それがあるように感じていたから。
もう、妻を心のどこかで責めずに済む。
そう、心の底から思えた。
「不思議だな、怒らんのか?
騙されていたと知ったのに。
いや、それより、なぜ我の話を疑いもせずに聞き入れる?
おい、お主‥‥‥」
ああ、見られちゃった。
情けないな、僕は‥‥‥。
「だって、そうじゃないですか。
フェイブ、あなたなら僕の記憶を読むことくらいもうしてるでしょ?
僕は‥‥‥僕は持ってないんですよ、遺伝子を。
妻を利用してそれを手にしようとした竜族は嫌いだけど。
でも、何も利用価値がないのに。ただ、婚姻をしたからという理由だけで。
彼女の心を偽らせてまで、ここに縛り付けている僕は自分自身が許せない‥‥‥!」
本当に情けない男だなあ、僕は。
のしつけて返せば済む話なのに。
もう、ここまで、彼女を愛してるなんて。
こんな人間の都合勝手な理由で、この子を縛り付ける自分が、僕は、大嫌いだ。
フェイブは僕をしばらく黙って見ていてくれた。
涙を拭き終えるまで。
「なあ、婿殿。
エミュネスタのその角な。
それは角ではない」
「え‥‥‥?」
「それは、我の授けた王の証。
王として、竜族を率い、その力を継承していくための王冠だ」
「どう‥‥‥いう???」
「我とルシール、そしてエミュネスタのいた惑星ではーー
竜族は滅んだ。理由は剣士や英雄たち、つまり竜を滅ぼすものたちに他の王が異文明の道具を与えたからだ」
「だって、それ、何の関係が??」
彼はなにを言いたいのだろう。異文明の道具が僕の妻となんの関係が‥‥‥???
「まあ、聞け。
我とルシール、そしてエミュネスタ。
この三人が同じ異文明の武器で滅びそうになった。
他の惑星の武器英雄に持たせるのは、あの世界ではルール違反。
竜族と英雄の戦争は、種族の数の調整。
惑星が生命を養える制限内で治めるための、ゲームだったのだよ、わかるかい、婿殿」
「ひどい、話、です‥‥‥ね。
生産量調整みたいだ。まるで、牧場みたい」
「まあ、そんな感じだな。
そのルール違反を我は父上に訴えた。父上は少々、そそっかしい方でな。
我らの魂を、異文明の武器ごと一つにまとめてしまったのだ。
根は一つだが、3つに分岐した自我あると思えばいい」
ああ、なるほど。
なんとなく、落ち着いてきたら理解できてきた。
「そこで、我は最後の力で別の惑星に我らの精神体を飛ばした。
そこは、英雄はいるが食糧にされる異常な世界でな。
その世界では英雄はほぼ、不老不死に近いよう設計されていた。
母親の胎内からではなく、果実の実のように生まれてくるのだ。
各種族の長が住む土地の中に英雄の肉体を産み出す樹があってな。
数百年に一度、その樹には実がなる」
「それが、その世界の英雄‥‥‥」
「そうだ。
ルシールは当時、女の英雄だった。
ある王族の果実の樹に、なぜか、男女。二つの実が成ってな。
ルシールはその男の方に、自らを入れた。
女の方は、先に産まれていたのでな。入れなかったのだ」
「じゃあ、その女性の方に、エミュネスタの精神体が?」
「まあ、そうではないが、その子は竜でもあり精神を操ることにも長けていた。
いまは当時よりはるかに大きな力を持っているがな。
まあ、ようは心を操った。そして、各地の英雄を解放し、その戦いが凄まじくてな。
惑星は一度、滅びかけた。仕方なく、その二人はある装置を作ってな。
力を溜めることにしたのだ。数千年の時をかけて、惑星が元に戻った時に元の世界に戻るためにな。
復讐というつまらん、大義を掲げてだ」
「あなたは、何をしていたんですか、フェイブ?」
「我か?
我は力を失い、ほれ。
その王冠の中で眠っていたのよ。
元の能力を取り戻すまで、な」
ああ、なるほど。
だから、その情景を語れるんだ。
「ある時だ。
あと少しで、力が溜まり切る。そんなときに、客人がルシールとエミュネスタの元を訪れた。
三人の亜人と、一人の人間。この惑星から飛ばされ、異界から来た先程話した第一位のな。
創意の存在が与えた力を持つ娘だ。年齢はそう、婿殿と変わらん。
まあ、産まれるのはもう少し先だが」
「え?
でも、時間軸的におかしくないですか?」
「まあ、聞きなさい。
その時な、我に力が戻っていれば良かったのだが。
虚無の存在を、溜め込んだ力が呼び寄せてしまったのだ。
ルシールもエミュネスタもその時は弱くてな。
手が出せなかった。まあ、虚無の存在というのは、そうだな。
第四位か三位か。その辺りの滅ぼし、喰らう精神生命体のことだ。
はるかな異界へと数万年前においやったのだがな‥‥‥。
あやつら、戻ろうとして来てな。で、その娘が身を挺して守ってくれた我らをな」
「じゃあ、その子はもう、死んだ‥‥‥?」
「ああ、そうだ。
もう少しだけ、聞いてくれるかな?
どうも、我は目覚めはした。力も戻った。しかし、ここは異界。
おまけにルシールめ、時間を分岐させたものだから我も長くは起きてはおれぬようだ。
異界の力を極力排除しようとしおってあの者は‥‥‥」
できるなら、全部聞きたいですよ、フェイブ。
僕はそう叫びたかった。妻たちに何があったのかを、知りたかったからだ。
「ありがとう、由樹。
これから数年先だが、別の異界より創意の存在が未来から過去へと来られる。
正確には、この世界の数百年先の未来にまず降り立たれ、そこから過去へと来られる。
彼はそこで、ある異界を作ろうとなさった。しかし事故が起きてな。
それは12個の欠片に分かたれた。時間も、界も異なる場所にそれらは飛び散り、世界を産んだ。
我はその欠片の一つの世界、こことは別の異界の存在だ。
12個の欠片は2人の人間の男女により集められた。最後の12個目。
それが、エミュネスタとルシールと我がいた惑星にあった。
先程話した、虚無の物だがな。まあ、世界も界も違うが、それぞれの場所で三位から一位の創意の存在。
そういった力あるものたちが、はるかな過去へ。すべてが始まる前の無の世界に封じた戦いがあってな。
我もそこに参加していた。中には虚無でありながら、喰らうものを嫌い、参加したものもいたな。
この惑星にもいまおるようだ。ああ、どこか。
婿殿たちが言う、中央アジアの高山地帯の地下でおられるようだな。
ああ、話が横道に逸れた、すまんな」
「いえ、いいんですけど。その虚無の喰らうものと、欠片がどう繋がるんですか??」
「うむ、そこだ。
欠片はある意味良かったのだ。
多くの異世界、異界に散逸したおかげで、封じたものたちが戻ってくる時期を知ることができた。
まあ、それははるかな未来で知るのだが、こういった高位なものになると時間。
その壁を越えるものも多くてな、で、彼らは用意していた。
虚無の帰還に備えての、新たなる武器」
「武器?
剣とか槍とか???」
「いいや、新たな創意の存在の創造だよ、婿殿」
「新たな、新たな創意の存在‥‥‥???」
「これまで、第一位の創意の存在でも界を作れればそれが限界だった。
では、界を越え、無の向こうから来る存在すらも超える。
そんな存在がいたとしたら、どうする?」
「それは・・・・・・。ゲーム、ああ、つまり。
想像の世界で遊ぶものですけど。
そういった中で言えば、最強でしょう、ね」
「であろ?
それを我らは作ることにした。
数万年かけてな。その者は最初は単なる人だ」
「人間!?」
「まあ、そう驚くな。
たまたまそうなるだけの話だ。
目覚めた後に多くの異界や異世界に我らが残した知識や能力を求めて歩き、その全てを知る。
そういうようにしたのだ。
ただ、なあ……」
なぜか、フェイブは大きくため息をついた。
なんでだろ???
「あの世界。ルシールやエミュネスタがその娘と出会った場所に、その一つがあるとは。
我も調べる力が当時は残ってなかった。
この世にはその全てを記録した本のようなものがあってな。
異界の事も、異世界のこともその全てが記されているものだ。
これはある程度の地位になれば、見れるようになる。
その本の裏に隠されたというよりは、隠した、が正しいか。
虚無の封じ方を記した本を開く鍵があってな。
その娘はその鍵を探しに来ていた。12個目の欠片と鍵。
これは、まったく、誰かがまあ、時の風を操る種族辺りの差し金だろうが」
「あったんですね、その場所に。
同じ時間軸で。同じ世界に。
そしてその子は鍵を、目覚める創造神の下へと持ち帰ろうとしていた?」
「おお、よくわかるな。
なぜ、わかった???」
「ああ、まあ、あのあれです。
そういった、創作を書き連ねた本が、この時代にはたくさんありまして。
僕はそれを多く読んでいるので‥‥‥」
「人の想像とは、なかなか素晴らしいものだな」
「まあ、読む側ですけど、ね‥‥‥」
「書いてみるがいい、今、話した物語を。
ああ、そうだ。また横道に逸れていたな。
その12個目の欠片だがな。戦いで粉々に砕けた」
「ええ!?」
「ただ、鍵を使い、復元する方法を少女は知ったのだ。
瀕死の状態でな、それを戻してくれた。
あの時、本人が回復するまで、欠片の回復は余裕がなくてな。
彼女はルシールとエミュネスタに頼んだのだ。この鍵を、この世界のある時間軸にいる。
ある人物に、渡してくれ、とな」
「だから、二人は界も違うこの世界に来たんですか?
でもあの多くの竜族は…‥???」
「多くは、その子の宿した子だよ、婿殿。
ルシールとの間のな。もっとも、ある時から二人の心は離れてしまった」
「え、なんで?
だってそれだけ長くいたのに???」
「12個目の欠片だがな。
それも、渡す人物は決まっていた。先程、話した人間の男女だ。
彼らと出会った時に、ルシールたちはまだ弱かった。溜め込んだ力を使い、進化を果たしてもなお。
虚無の喰らうものとは対等ではなかった。
ルシールたちに、界を渡り、喰らうものを滅ぼす方法を伝えたのはその二人だ。
12個目の欠片を渡す見返りではないが。
まあ、似たような感じで貰った土産ではあった。
あの時も、喰らうものと戦い、エミュネスタは疲れ果て、竜族か?
それは半数まで減っていた。ルシールは竜族だが、完全ではない。
エミュネスタもまた、竜族ではあるが完全ではない。
互いに子を成す必要があったが、エミュネスタを心配したあやつは‥‥‥」
「別の妻を迎えた、それで、心が離れた。
そんな感じですか?」
フェイブは良い読みだ、そんな感じに僕に笑いかけて来る。
「そうだ。
だから、エミュネスタや。
まだ寝ておるか、まあいい。
その子の心は婿殿。そなたに向いている。
これは本当の事だ」
ひどいなあ。
あなたは。
僕に最後まで面倒を見させる気なんですね。
まったく‥‥‥
そうだな‥‥‥この今いる宇宙が丸く繋がっているのはご存知かな?」
「それは、聞いたことはありますけど。
本当かどうかは、分かりません」
「では、こう考えてくれ。幾つもの大きさも形も違う泡があるとする。
これの1つを界。そう言う。界は物理法則でもある。
界の中にあるのが、この宇宙だ」
「つまり、異世界は同じ界の中の‥‥‥別の惑星文明?」
そうだ、いいぞ。
彼は嬉しそうに、そう言ってエミュネスタの顔で笑っているけど。
なんで、婿殿。なんだろう?
エミュネスタの両親はホルブ王と王妃ーー
「それは違うぞ、婿殿。
わしが、まあ、いまは娘の形を借りているがな。
このフェイヴエスタークが、エミュネスタの実の父でもあり、母でもある」
いきなりなにを言い出すんだ、この人は‥‥‥???
「そうだ、皇帝と名乗り、宇宙のある文明で人類と戦い、そして滅んだ。
その一族の愚かな王よ」
「滅んだって、いまそこにいるじゃないですか、フェイブーー」
「フェイブで構わん。
そなたは?」
ああ、そうだ。そう言われて、僕は名乗るのを忘れていた。
礼儀知らずにも程がある。
まあ、闖入者に名乗る義理もないけど、エミュネスタの実父と言うのが本当なら。
話は別だ。
「由樹です。
新竹 由樹です。フェイブさん」
さあ、どう出てくるか。
正直、予測が付かなかった。それに、なんで寝てるんだ、エミュネスタ。
僕より、お前の方が気配に気づくはず‥‥‥。
「ああ、それは無理だ、由樹殿。
娘はいまは眠らせてある。
その子は、我の‥‥‥そう、最後の子よ」
「最後の子‥‥‥?」
「簡単な昔話をしよう。
ある星で、王が8人いた。
我はその末子として産まれた。
親は、文明を創造した存在でな。これは、界の中で異世界を産み、壊し、また産む。
そんな役割の存在のことだ。まあ、力あるものの階級で言えば、我が両親は第二位かな。
我は第三位か、四位。その辺りの存在だ」
「え、いえ、ちょっといいですか?
それって、高位すぎません??
それに、第一位は‥‥‥?」
そう、それは余りにも都合が良すぎる話だった‥‥‥。
しかし、フェイブスタークは平然として言い放つ。
「まあ、そう生まれついたのだから仕方ないであろ?
一位は破壊する者と、創造の存在だともいうかな?
界を産み出せる存在。そして最後に死ぬ存在。
いまは、そうだな‥‥‥この世界は分岐している。
ルシールめ、この惑星の時間軸を分岐させおったな。
あれも、いまは創始の存在に近い力を得た、そういうことか‥‥‥」
僕には全く、理解ができなかった。
「あの‥‥‥ルシールって誰ですか?」
「由樹殿の言う、ルシアンだ。
そして、そのーー言いにくいが。
エミュネスタの夫にして、我が皇帝の座を譲った元女英雄よ」
この時。なぜだろう?
僕はとても救われた気がしたんだ。
エミュネスタを苦しめている何か、それがあるように感じていたから。
もう、妻を心のどこかで責めずに済む。
そう、心の底から思えた。
「不思議だな、怒らんのか?
騙されていたと知ったのに。
いや、それより、なぜ我の話を疑いもせずに聞き入れる?
おい、お主‥‥‥」
ああ、見られちゃった。
情けないな、僕は‥‥‥。
「だって、そうじゃないですか。
フェイブ、あなたなら僕の記憶を読むことくらいもうしてるでしょ?
僕は‥‥‥僕は持ってないんですよ、遺伝子を。
妻を利用してそれを手にしようとした竜族は嫌いだけど。
でも、何も利用価値がないのに。ただ、婚姻をしたからという理由だけで。
彼女の心を偽らせてまで、ここに縛り付けている僕は自分自身が許せない‥‥‥!」
本当に情けない男だなあ、僕は。
のしつけて返せば済む話なのに。
もう、ここまで、彼女を愛してるなんて。
こんな人間の都合勝手な理由で、この子を縛り付ける自分が、僕は、大嫌いだ。
フェイブは僕をしばらく黙って見ていてくれた。
涙を拭き終えるまで。
「なあ、婿殿。
エミュネスタのその角な。
それは角ではない」
「え‥‥‥?」
「それは、我の授けた王の証。
王として、竜族を率い、その力を継承していくための王冠だ」
「どう‥‥‥いう???」
「我とルシール、そしてエミュネスタのいた惑星ではーー
竜族は滅んだ。理由は剣士や英雄たち、つまり竜を滅ぼすものたちに他の王が異文明の道具を与えたからだ」
「だって、それ、何の関係が??」
彼はなにを言いたいのだろう。異文明の道具が僕の妻となんの関係が‥‥‥???
「まあ、聞け。
我とルシール、そしてエミュネスタ。
この三人が同じ異文明の武器で滅びそうになった。
他の惑星の武器英雄に持たせるのは、あの世界ではルール違反。
竜族と英雄の戦争は、種族の数の調整。
惑星が生命を養える制限内で治めるための、ゲームだったのだよ、わかるかい、婿殿」
「ひどい、話、です‥‥‥ね。
生産量調整みたいだ。まるで、牧場みたい」
「まあ、そんな感じだな。
そのルール違反を我は父上に訴えた。父上は少々、そそっかしい方でな。
我らの魂を、異文明の武器ごと一つにまとめてしまったのだ。
根は一つだが、3つに分岐した自我あると思えばいい」
ああ、なるほど。
なんとなく、落ち着いてきたら理解できてきた。
「そこで、我は最後の力で別の惑星に我らの精神体を飛ばした。
そこは、英雄はいるが食糧にされる異常な世界でな。
その世界では英雄はほぼ、不老不死に近いよう設計されていた。
母親の胎内からではなく、果実の実のように生まれてくるのだ。
各種族の長が住む土地の中に英雄の肉体を産み出す樹があってな。
数百年に一度、その樹には実がなる」
「それが、その世界の英雄‥‥‥」
「そうだ。
ルシールは当時、女の英雄だった。
ある王族の果実の樹に、なぜか、男女。二つの実が成ってな。
ルシールはその男の方に、自らを入れた。
女の方は、先に産まれていたのでな。入れなかったのだ」
「じゃあ、その女性の方に、エミュネスタの精神体が?」
「まあ、そうではないが、その子は竜でもあり精神を操ることにも長けていた。
いまは当時よりはるかに大きな力を持っているがな。
まあ、ようは心を操った。そして、各地の英雄を解放し、その戦いが凄まじくてな。
惑星は一度、滅びかけた。仕方なく、その二人はある装置を作ってな。
力を溜めることにしたのだ。数千年の時をかけて、惑星が元に戻った時に元の世界に戻るためにな。
復讐というつまらん、大義を掲げてだ」
「あなたは、何をしていたんですか、フェイブ?」
「我か?
我は力を失い、ほれ。
その王冠の中で眠っていたのよ。
元の能力を取り戻すまで、な」
ああ、なるほど。
だから、その情景を語れるんだ。
「ある時だ。
あと少しで、力が溜まり切る。そんなときに、客人がルシールとエミュネスタの元を訪れた。
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創意の存在が与えた力を持つ娘だ。年齢はそう、婿殿と変わらん。
まあ、産まれるのはもう少し先だが」
「え?
でも、時間軸的におかしくないですか?」
「まあ、聞きなさい。
その時な、我に力が戻っていれば良かったのだが。
虚無の存在を、溜め込んだ力が呼び寄せてしまったのだ。
ルシールもエミュネスタもその時は弱くてな。
手が出せなかった。まあ、虚無の存在というのは、そうだな。
第四位か三位か。その辺りの滅ぼし、喰らう精神生命体のことだ。
はるかな異界へと数万年前においやったのだがな‥‥‥。
あやつら、戻ろうとして来てな。で、その娘が身を挺して守ってくれた我らをな」
「じゃあ、その子はもう、死んだ‥‥‥?」
「ああ、そうだ。
もう少しだけ、聞いてくれるかな?
どうも、我は目覚めはした。力も戻った。しかし、ここは異界。
おまけにルシールめ、時間を分岐させたものだから我も長くは起きてはおれぬようだ。
異界の力を極力排除しようとしおってあの者は‥‥‥」
できるなら、全部聞きたいですよ、フェイブ。
僕はそう叫びたかった。妻たちに何があったのかを、知りたかったからだ。
「ありがとう、由樹。
これから数年先だが、別の異界より創意の存在が未来から過去へと来られる。
正確には、この世界の数百年先の未来にまず降り立たれ、そこから過去へと来られる。
彼はそこで、ある異界を作ろうとなさった。しかし事故が起きてな。
それは12個の欠片に分かたれた。時間も、界も異なる場所にそれらは飛び散り、世界を産んだ。
我はその欠片の一つの世界、こことは別の異界の存在だ。
12個の欠片は2人の人間の男女により集められた。最後の12個目。
それが、エミュネスタとルシールと我がいた惑星にあった。
先程話した、虚無の物だがな。まあ、世界も界も違うが、それぞれの場所で三位から一位の創意の存在。
そういった力あるものたちが、はるかな過去へ。すべてが始まる前の無の世界に封じた戦いがあってな。
我もそこに参加していた。中には虚無でありながら、喰らうものを嫌い、参加したものもいたな。
この惑星にもいまおるようだ。ああ、どこか。
婿殿たちが言う、中央アジアの高山地帯の地下でおられるようだな。
ああ、話が横道に逸れた、すまんな」
「いえ、いいんですけど。その虚無の喰らうものと、欠片がどう繋がるんですか??」
「うむ、そこだ。
欠片はある意味良かったのだ。
多くの異世界、異界に散逸したおかげで、封じたものたちが戻ってくる時期を知ることができた。
まあ、それははるかな未来で知るのだが、こういった高位なものになると時間。
その壁を越えるものも多くてな、で、彼らは用意していた。
虚無の帰還に備えての、新たなる武器」
「武器?
剣とか槍とか???」
「いいや、新たな創意の存在の創造だよ、婿殿」
「新たな、新たな創意の存在‥‥‥???」
「これまで、第一位の創意の存在でも界を作れればそれが限界だった。
では、界を越え、無の向こうから来る存在すらも超える。
そんな存在がいたとしたら、どうする?」
「それは・・・・・・。ゲーム、ああ、つまり。
想像の世界で遊ぶものですけど。
そういった中で言えば、最強でしょう、ね」
「であろ?
それを我らは作ることにした。
数万年かけてな。その者は最初は単なる人だ」
「人間!?」
「まあ、そう驚くな。
たまたまそうなるだけの話だ。
目覚めた後に多くの異界や異世界に我らが残した知識や能力を求めて歩き、その全てを知る。
そういうようにしたのだ。
ただ、なあ……」
なぜか、フェイブは大きくため息をついた。
なんでだろ???
「あの世界。ルシールやエミュネスタがその娘と出会った場所に、その一つがあるとは。
我も調べる力が当時は残ってなかった。
この世にはその全てを記録した本のようなものがあってな。
異界の事も、異世界のこともその全てが記されているものだ。
これはある程度の地位になれば、見れるようになる。
その本の裏に隠されたというよりは、隠した、が正しいか。
虚無の封じ方を記した本を開く鍵があってな。
その娘はその鍵を探しに来ていた。12個目の欠片と鍵。
これは、まったく、誰かがまあ、時の風を操る種族辺りの差し金だろうが」
「あったんですね、その場所に。
同じ時間軸で。同じ世界に。
そしてその子は鍵を、目覚める創造神の下へと持ち帰ろうとしていた?」
「おお、よくわかるな。
なぜ、わかった???」
「ああ、まあ、あのあれです。
そういった、創作を書き連ねた本が、この時代にはたくさんありまして。
僕はそれを多く読んでいるので‥‥‥」
「人の想像とは、なかなか素晴らしいものだな」
「まあ、読む側ですけど、ね‥‥‥」
「書いてみるがいい、今、話した物語を。
ああ、そうだ。また横道に逸れていたな。
その12個目の欠片だがな。戦いで粉々に砕けた」
「ええ!?」
「ただ、鍵を使い、復元する方法を少女は知ったのだ。
瀕死の状態でな、それを戻してくれた。
あの時、本人が回復するまで、欠片の回復は余裕がなくてな。
彼女はルシールとエミュネスタに頼んだのだ。この鍵を、この世界のある時間軸にいる。
ある人物に、渡してくれ、とな」
「だから、二人は界も違うこの世界に来たんですか?
でもあの多くの竜族は…‥???」
「多くは、その子の宿した子だよ、婿殿。
ルシールとの間のな。もっとも、ある時から二人の心は離れてしまった」
「え、なんで?
だってそれだけ長くいたのに???」
「12個目の欠片だがな。
それも、渡す人物は決まっていた。先程、話した人間の男女だ。
彼らと出会った時に、ルシールたちはまだ弱かった。溜め込んだ力を使い、進化を果たしてもなお。
虚無の喰らうものとは対等ではなかった。
ルシールたちに、界を渡り、喰らうものを滅ぼす方法を伝えたのはその二人だ。
12個目の欠片を渡す見返りではないが。
まあ、似たような感じで貰った土産ではあった。
あの時も、喰らうものと戦い、エミュネスタは疲れ果て、竜族か?
それは半数まで減っていた。ルシールは竜族だが、完全ではない。
エミュネスタもまた、竜族ではあるが完全ではない。
互いに子を成す必要があったが、エミュネスタを心配したあやつは‥‥‥」
「別の妻を迎えた、それで、心が離れた。
そんな感じですか?」
フェイブは良い読みだ、そんな感じに僕に笑いかけて来る。
「そうだ。
だから、エミュネスタや。
まだ寝ておるか、まあいい。
その子の心は婿殿。そなたに向いている。
これは本当の事だ」
ひどいなあ。
あなたは。
僕に最後まで面倒を見させる気なんですね。
まったく‥‥‥
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