竜姫からの招待状

星ふくろう

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第四章 平穏な日常とドラゴンプリンセス

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「待った!」
「嫌です!」
「お願いだから、待って!!」
「嫌だったら、嫌です!!」
「だから、もう無理だってば!!」
「旦那様、日本男児でしょう!?
 その程度で音を上げてどうするんですか?
 エミュネスタはまだ満足しておりません!!!」
 満足させなければ適当な竜族のオスと浮気しますよ?
 そう詰め寄られ、僕はもう逃げ場がない……
「だから、せめてあと十五分!」
 十五分?
「‥‥‥遅い。
 それに早いし‥‥‥」
 なんかぐっさりと心に刺さるよその言葉。
 人生初の、妻との初夜でそれを言われるなんて!!???
「エミュネスタ‥‥‥。
 それは、言いすぎだ」
 ええい、こうなったらもうあれしかない。
 こういう時は情に訴えるのだ。
「ねえ、頼むよ。
 僕は産まれて初めてなんだ。
 まあ、それはお前も同じだろうけど。
 食事も抜きでもう三日目だ。
 なあ?
 人間の限界、理解してるかい‥‥‥???」
 優しくだいてキスをしてみる。
 もう、本当は意識を失いそうで、頭の中はふらついているというか‥‥‥
 ああ、だめだ。
「旦那様!!???」
 エミュネスタのその声を耳にしたのが、この時の僕の最後の記憶となった。


「あのねえ、エミュネスタちゃん?
 人間にも精力の限界ってやつがさー‥‥‥」
 誰の声だろう?
 耳馴染みのある、懐かしい声‥‥‥。
 ああ、母さん‥‥‥迎えに来てくれたんだ。
 
 この時。
 不覚にも僕、新竹由樹は自分を赤ん坊の時に棄てて行った母親。
 高遠 茜が迎えにきて抱きしめてくれている。
 そんな錯覚をしていたのだ。
 甘えるように突き出したその手は、不本意にも、育ての母である新竹麻友の胸に触れてしまう。
「旦那様--!!???」
 それを見たエミュネスタ、我が妻の悲痛な叫びとそして、
「あれ、なによあんた?
 高校生にもなってまだおっぱい飲みたいの?」
 なんて声が上から降って来てーー
「わあああーーー!!」
 と、大声で叫び、僕を上から見下ろしていたエミュネスタの額同士を激突させた。
「くううううっ‥‥‥」
 もちろん、竜族の我が妻にはなんの微損も、痛みすらも無い。
 頭蓋骨が割れたか。
 そう心配したのは僕自身である。
 痛みが半分ほどおさまりかけて、僕はようやく自分の現状を認識した。
 上半身。
 なぜか、Tシャツを着ている。
 下半身。
 なぜか、トランクスを履いている。
 問題は‥‥‥
 僕はそっと妻を見た。
 残念です。
 そんなふうにエミュネスタの首は横に振られている。
 次に、僕は母さんを見た。
 ニヤリ、と。
 それはもうニヤニヤしながら、あんたの秘密、見ちゃったわよ?
 そんな顔でニヤついている我が母。
「エミュネスタ‥‥‥」
 絶望感に包まれて僕は妻の名を呼んだ。
「すいません、旦那様。
 わたしではどうしていいかわからず‥‥‥お母様を」
 恥辱だ!
 屈辱だ!!
 穴があったら入りたい‥‥‥
「ま、あんたもまあまあ、成長したんじゃない?」
 母さんは僕の肩をポンポン、と叩くとそっと顔を寄せて僕に言った。
「卒業、お、め、で、と、う。
 旦那様?」
 とーー!!!
 屈辱だああーーー!!!
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